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葬式の服装 男性のスーツは黒ではなかった?喪服のマナーと心(男性編)

松はじめです。

冠婚葬祭の中で、どうしても避けては通れないのが、葬式。

葬式の時の服装といえば、礼服だなあと思いますよね。

悩む必要もなく、黒スーツ+白シャツ+黒ネクタイ、そう思っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか?

実は、世界的には黒スーツではなかったのです。

もちろんここは日本だ!というご意見もあると思うのですが、知らなかった・・と手遅れの状況になる前に、念のために知っておくと良い葬儀の服装についてご説明します。

 

この記事の目次

結論 世界的な葬儀スーツは濃紺やチャコールグレー

まず結論を申し上げます。

世界的な葬儀スーツというと、濃紺、もしくはチャコールグレーです。

例えば、服飾評論家 故 落合正勝氏の著書の中にこうあります。

それは、1999年、ヨルダン前国王の葬儀。

各国代表者の服装についてのこんな内容。

黒いスーツに白いシャツ、黒いタイを締めていたのはアメリカのブッシュ元大統領と、日本の小渕元首相くらいのものだ。

では、各国の首相、大統領はどんな礼服だったのでしょう?

カーター、フォード元大統領

濃紺のスーツに同系色のタイ

・クリントン元大統領

黒っぽいスーツに白シャツ、紺地に小紋のタイ

・エリツィン前大統領

スーツ、タイともに紺

・チャールズ皇太子

ブルーグレイのスーツに白シャツ、胸ポケットに喪章として黒のポケットチーフ

落合正勝氏によれば、英国のダイアナ元妃の葬送の際の、王室一族の服装も、ネイビー・ブルーが多かったそうです。

なぜ濃紺やチャコールグレーなのか?

なぜ葬式で、黒スーツ、黒ネクタイ、

いわゆる礼服、喪服が黒という概念が海外にはないのでしょう?

それにはまず、葬式に限らず日本での礼服と呼ばれるものについての誤解があると思います。

例えば私たちのような仕立服を扱うお店というと、

「礼服を作って欲しいのだが。」

こんなご注文は珍しくありません。

その度に、今この記事で書いている内容をご説明していては、注文側もうんざりしてしまうことでしょう。。

礼服で通用するので、礼服と呼ばれている服(黒いスーツ)を仕立てるわけです。

おそらく多くのショップの方は、同じか、またはご存知なく黒スーツを提案しているのではないでしょうか?

礼服は黒スーツのことではない

本来、礼服というのは、シングルやダブルの黒スーツの上下だけを指していません。

例えば、パーティーであれば、ドレスコードがある場合があります。

正礼装、準礼装、略礼装というものです。

面倒に思われるかもしれませんが、これらには日中バージョンと、夜間バージョンがあります。

夜、準礼装、というとタキシード!という風に、(一応)定められています。

朝、正礼装、というとモーニングコートと、コールパンツ、グレーのベスト。さらにネクタイもモーニングタイというものがあります。

すると、モーニングコートの場合はもはやコートです。

スーツではないわけです。

スーツ、はスートの複数形。

どうして複数形なのか?上下で揃っているからです。

つまり、上下揃っていないモーニングコート・コールパンツは礼服ということになります。

燕尾服も、ダークスーツも。

礼服=黒スーツではないということはこれでおわかりいただけたと思います。

黒スーツは量販店が販売員向けに考えたシステム

これは私の考察です。

黒スーツは、販売員向けに考えられたのではないでしょうか?

かつての日本には既製品はありませんでした。

みな、テーラーで作るしかなかった。

それこそ、カジュアルの服だって作る。

既製品という概念すらありません。

戦後は、アメリカから既製服の文化がなだれ込んできます。

その後大量生産が始まって、生産拠点は中国などの当時人件費が安い国へと流れます。

こうして、スーツはどんどん安くなっていきます。

登場したのはロードサイドの量販店。

この頃、

【冠婚葬祭、黒スーツ1着あれば、まず安心!】というようなキャッチコピーがあったのではないでしょうか?

安いですから、作業着としてスーツを必要としている人もこぞって量販店で書いました。

中には結婚式や、葬式に着る服を求めてスーツ量販店に行く方もいたでしょう。

「礼服が欲しいのだが」

この時、42歳 女性 派遣社員(中田由紀子さん・仮名)が答えるべき模範解答はこうです。

「お客さま、今回ご使用いただくのは、おめでたい席でしょうか?喪のシーンでしょうか?

2つのシーンでは着用する服が異なります。

また、午前の式典であれば、モーニングも良いのですが、夜間であれば燕尾服になります。」

・・・中田由紀子さんは、実際にはこう話していたはずです。

「お客さま、それなら黒スーツですよ!」

状況を考えて装う文化

そもそも、礼装というのは、礼服を装う(よそおう)と書くのです。

だから、服は装って、服装となるのですよね。

ジャケットと、パンツ、ネクタイが10セットある。

それを、パズルのように組み合わせて、服装になる。

そこに、おめでたい時ならこの組み合わせ。

喪のシーンならこの組み合わせ。

友人との食事ならこの組み合わせ。

暑い所に行くから。

長期間の旅行だから。

こんな風に、TPOといいますがシーンや立場、気候などを考えて着るのが本来なのです。

どちらかというと西洋では、とりあえず、黒スーツと決まっているから黒!

というよりも、

この方への追悼の意味を込めて、この服をこうやって着よう。と考える文化があります。

礼服といっても黒の上下を着れば良い、というわけではないのです。

色には心がある

服飾評論家 出石尚三先生から実際にお伺いしたお話です。

フランスの方に、喪服は何を着るか?と尋ねてみたそうで。

すると、

「チャコールグレー」とおっしゃった。

出石先生は、

なんでも黒で済まそうという発想が良くないのだろうな、と思いました。

「色にも心があるんですよ。
白い喪服だって、いっぱいあった。
それはアミニズム、色に命がこもってるんだ。
物には心があるんだ。というところまでいくんです。」と、出石先生はおっしゃいました。
 

私は濃紺スーツを着ます

葬式に限らず服を装うということは、ルールもありますが、そのルールがなぜ存在しているか?を考える必要があると思うのです。

服装というのはその場の雰囲気を大きく変えますし、例えば結婚式に呼ばれた場合、その主役をお祝いするの心を伝えるツール、それが服装かもしれません。

自己表現のツールでもありますが、この場合は主役を引き立てる服装、も大切ですよね。

こうした心なのではないでしょうか、服装は。

ですから、どのような気持を服で表すのか?

これが喪服においても重要だと思うのです。

私も葬式に参加する時の服装は、濃紺スーツに濃紺タイ(ネイビー)

やはり落合正勝氏の著書でも以下のように述べられています。
ネイビー・ブルーやロイヤル・ブルーは、「正義、忠誠、高貴、希望、敬愛」を表す。前者は、英国海軍のユニフォームの色でもある。

ですから、敬愛を表す色であるネイビー(濃紺)を葬式に着用している例は、冒頭に述べた1999年のヨルダン前国王の葬儀の服装を見ても多く見受けられたのでしょう。

世界の要人たちの葬儀の服装は、僕たちのよき手本になり得る。大切なのは、服の外見ではなく、めいめいが心のなかで弔意を捧げられる、礼節を失わない服かどうかということである。

と、度々落合氏も述べているように、黒スーツ=葬式というのは、今一度考えるテーブルに上げても良いかもしれませんね。

さて、明日は何着よう?

ボットーネでは創業以来、ただスーツを仕立てるだけでなく、立場や時間、与えたい印象、好み、お持ちのアイテム、似合う色と柄、今と未来のスタイルをトータルで考えた、あなたに最適な戦略的スーツのお仕立てと着こなしをご提案いたしますので、まずはメールで日程をご予約ください。

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2019年5月11日
スーツの着こなし術 | ジェントルマンの知識

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