トレンチコートなどのギャバジンという生地の正体
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
いよいよコートの季節だが、トレンチコートと聞いて、どんなイメージでしょう?
女性のスプリングコートのイメージを持つ方もいるのではないだろうか。男性の冬のロングコートのイメージを連想する方もいるでしょう。
バーバリーやアクアスキュータムといったブランドで買ったことがある方もいるかもしれませんね。
一体どんな機能が備わっているのでしょう?
そしてもともとはブルーは女性の色だったことをご存知でしょうか?
なぜこんな形をしているのか。今日は銀座ファッションアカデミアの講師であられる、服飾評論家 出石尚三 先生の講義から一体なぜバーバリーとアクアスキュータムがトレンチコートを生み出したのか、そしてトレンチコートの機能について追ってみたいのだが、まずはトレンチコートに使われる素材の用語で、ギャバジン。
今日はギャバジンについて追ってみたいと思います。
ゆうならば国際語なっているのでは。
銀座ファッションアカデミアより 講師:服飾評論家 出石尚三 先生
トレンチコートという言葉自体は英語だ。
OED(オックスフォードディストナリー)という辞書があるのだが、これを開いてみると、トレンチコートのページには、1916年8月16日の手紙の中にトレンチコートが出てくる、それが最初であるとなっているようだ。
これは、ウィルフレッドオーエンという軍人が、おそらく家族に書いた手紙の一説だという。この間とても雨が降った。部下は骨の芯まで濡れた、私はトレンチコートを着ていたので濡れなかった、と。どうやら出石先生によれば、もう1年前の1915年、テーラーの専門誌でトレンチコートが登場していたという。
1915年、ウェストエンドガゼットオクトーバー、テーラー専門雑誌なんです。ロンドのソントンという人が。
型紙までついているんです
3Pから4Pにわたって、トレンチコートはこうだとかいてある。
これが英語で使われた最初ではないか。
1915年の10月には使われてた。
ご覧のように、トレンチのところに”が付けられている。つまり、話題の新商品ということだ。それが私たちのようなテーラー向けの専門誌で説明されている。つまり、これからの時代、トレンチコートなるものを仕立ててくれないか。という依頼がくる。その時はこのように作るべし、と解説しているのだ。
ところが、一体いつ誕生したのか?についてはあまりわかっていないのがトレンチコートなのだが、次回はトレンチコートの誕生を追ってみようと思う。
トレンチコートといえばギャバジン、その正体は?
さて、トレンチコートといえばギャバジンという素材ではないだろうか。雨に強いコートというイメージもないだろうか?ギャバジンとは何だろう?
綴りは2つある。
gabardine、こういう風に出ているのではないかと思うんですね。
ギャバディーン、これは実はですね、gaberdine。
1:gabardine
2:gaberdine
1880年頃、トーマスバーバリーは、gabeのeをgabaのようにaに変えた。
これでギャバディーンを商標登録する。
もともとのギャバディーンとは一体何なのだろうか?
中世の16世紀くらいのユダヤ人が巡礼に行く時に着ました。
もっと汚くいうと、着せられた、ユダヤ人であることがわかるように。
フード付きのマントなんですね、ユダヤ人のフード付きの旅行着ですね。
なんと!
ギャバディーンとは、ユダヤ人の巡礼用の服のことだったのだ。
一体なぜバーバリーはそれを生地の名前に?
少年の頃から彼は、生地屋さんに勤めていて、21歳で独立して店を出した。
何とかして、雨に濡れない水に強い生地はないか、と1人で考えたんですね。
その時のヒントになったのは、近所にすんでる羊飼いの人たちだったんです。
雨が降っても草を食べさせなくてはいけない、傘もささずに羊を管理する。
その彼らはスモックフロックというものを着てた、
(素材は)麻です!
麻のマントを着て、今の言葉でいうレインコート代わりに羽織ってた。
そうか!彼らはスモックフロックで(雨を)凌いでいるじゃないか!
それをヒントに防水、一番最初のギャバディーンなる防水布は、麻だった。
強撚(きょうねん)はご存知の方は少ないだろうか?
糸を、たくさん撚る。
撚ることで、どんどん強くなっていくわけだ。
羊飼いたちは、強く撚ったリネン(麻)のマントを羽織っていた。
撚ることで目が詰まっていき、さらにリネンは糸が含んで膨張した。
これでちょっとやそっとの水は通さないわけだ。
ほとんど古語のギャバディーンというのを思い出して。
1902年になってからは、それを登録商標した。
言葉としてはあったけど古語になっていた、結果論から申しますと復活させた。
なんと、ギャバディーンは生地の名前というよりも、とある服の名前だった。
それではバーバリーが水に強い生地を最初に開発したのか?というと、さらに以前に開発した人物がいたのだった。
実はそれよりも前に、1823年にアクアスキュータム、今社名ですけど、アクアスキュータム。
aquascutum、アクアとはラテン語で水、
スキュータムは盾。
水に対する盾ということで、1823年にジョン・エマリーというひとが考案してます。
今でもありますが、リージェントストリート100番地にバックス(Bucks)というテーラーがあります。
バックスは、洒落者という意味で、ボーブラメルはバックブランメルと呼ばれていたんですね、洒落者ブランメル。
バックってのは、オシャレな男という意味もある。
もともとは鹿のことですけど。
1821年、ジョンエマリーがそのテーラーを買うんです。
テーラーはそのまま続けたでしょうけど、ジョンエマリーは、バーバリーよりもさきに防水地を研究した。
1823年にアークアスクータムという防水布を研究開発してる。
1823年にジョンエマリーは、テーラー事業の傍、防水布を開発した。
1902年にトーマスバーバリーは、やはり防水布に出会った。
二人の人物の開発は、少し時代は違えど、バーバリーもエマリーも防水にこだわったのだ。
どうしてかというと、それよりも前はゴム引きだったのだ。
これはどうしてマッキンか?
チャールズマッキントッシュというスコットランドの人ですけど、1822年にインディアン・ラバークロスを発明するんです。
ゴムといっても今のゴムじゃなく、コールタールのようなネバネバしたゴム。
チャールズマッキントッシュは、出石先生の研究と想像では、例えばゴールドのような何か価値のあるものを発明しようと試みていたのだが、なかなかうまくいかなかった。
失敗して、失敗して、ネバネバしたコールタールのようなのが生まれたのではないかと。
じゃあそれを生地の裏につけたら、水を弾くのでは?というようなところから撥水生地が生まれたのではないかとおっしゃっていた。
ところが、現代のゴムとは違ってもの凄く臭い。
雨の多い英国で、濡れないのはとても重要なことだし、便利な素材だ。
ということでとても売れたようなのだが、、とにかく臭いはなんとかならぬものか・・・。
こうして、臭わない撥水生地はないだろうか、とずっと人々は悩んでいたのだ。
前出のエミリーもバーバーリーもそういうニーズは感じていたから、とにかく撥水生地を開発したということだ。
現代では、ギャバジンといえばバーバリーと連想するのだが、実はもともとは羊飼いが着ていた水に強いマントで、それがユダヤ人のギャバディーンという服に似ていた、というのがギャバジンの正体だった。
歴史を辿るとそこにはストーリーがある。
ギャバジン一つとっても、奥深いものが埋葬されていたのだった。
ここから一体どうやってトレンチコートが生まれていくのか?
どうして裏地はチェックなのか?
さらに、ポジションによって変わるトレンチコートの色の秘密とは?
こちらもまたいつか。
ということで、ギャバジンのスーツも誂えておこうか。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年11月19日
ファッションアイテム | オーダーコート
タグ:素材, 服飾史, コート, 講義, ロンドン
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