【完全解説】チェスターフィールドコート!洒落者の伯爵が着たコートの歴史
紳士の着るコートは、単なる防寒着ではなく、冬の装いにおいて最も重要な役割を担います。
そして、メンズのビジネス・ウエアのなかで、唯一デザインの巾が大きいアイテムです。
チェスターフィールドコートをはじめ、ポロコートやトレンチコートなどはパッと思い浮かびますが、
それらのデザインは、それぞれに生まれてきた歴史的背景があります。
ですが、現在多くの日本のビジネスマンは残念なことに、このようなクラシックでストーリー性を持った
コートを着なくなってしまいました。
それでも、一部の「服について真剣に考えている」人は、仕立ての良いコートに身を包む選択をされます。
この「差」は、これからもどんどん大きくなっていくのではないでしょうか。
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
本日はコートの中でも最もポピュラーな、チェスターフィールドコートについて。
チェスター、チェスターフィールド、コートの名前は知っている方も多いと思います。
ビジネスで着ることはもちろん、カジュアルのコートとしても着ることができますし、
それから、チェスターフィールドはなんとフォーマルのシーンにも対応可能な、なんとも守備範囲が広いコート。
つまり、チェスターフィールドコートは1着あれば大変重宝するコートといえます。
スーツの上から羽織るコートとして持っている方も多いのでは?
そんなチェスターフィールドコートはどうやって誕生したのだろうか?
もともとの特徴は?
冬のコートの中でも、定番のチェスターフィールドコート。
なんとなく、チェスターフィールド伯爵が着たコート、と知っている方もいらっしゃると思います。
でも、最初はどんなコートだったんでしょう?
どうしてチェスターフィールド伯爵はこのコートを着たんでしょう?
前ボタンは見えない比翼仕様が正式!とか、上衿にはベルベットがあるものが正しい!という説もありますが、本家本元の歴史を追えば答えがわかってくるかもしれません。
今日は、私が服飾評論家の出石尚三 先生から、銀座ファッションアカデミアという講義でお伺いしてきた、チェスターフィールドが最初に出来た時について書いてみます。
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そもそも、チェスターフィールドコートはいつ登場したのか?というと、
それは、今私たちが着ているスーツの前の「ラウンジジャケット」の時代です。
時代でいうと、1840年あたり。
今、街で売られている服は、ブランドの名前がデザイナーの名前になっていることがありますよね?
例えばシャネルは、ココ・シャネルというデザイナーがいたからシャネルという名前になっています。
こういうことは昔も珍しいことではありませんでした。
このチェスターフィールドコートも人の名前からきていて、チェスターフィールド伯爵が着ていたコートなのです。
服飾辞典には、第4代チェスターフィールド伯爵にちなむ、と書いてあることがありますが、本当は第6代チェスターフィールド伯爵が着ていたコートです(少しマニアックな話ですが)。
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ところで、チェスターフィールドコートが出来るちょっと前には、どんなコートが流行っていたのでしょうか?
まずは、チェスターフィールドコート登場の前(Before)
<Before>
1829年、チェスターフィールドコートが出る前の、とても着丈の長いコート。
まだチェスターフィールドコートの原型は誕生していません。
この図では、コートの内側にもコートを着ているではないか!
こういうことはよくありました。
特別寒い日には、コートの上にコートを着る、今みたいに暖房はありませんからね。
コートの上から着るコートは大きくて長くないといけません、当然コートから下のコートがはみ出しているのはおかしいですから。
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そして、9年後、チェスターフィールドコートになる直前にコドリントンというコートが登場します。
それがコドリントン。コドリントンというのも人の名前 サー・エドワード・コドリントンという軍人。
銀座ファッションアカデミア専任講師:服飾評論家 出石尚三氏の講演より
1838年にあった、コドリントンというコート。
コドリントンコートも、コドリントン氏の名前をとったコート。
コドリントンは、1770年の生まれ。
イギリスのベテラン艦長で、ギリシャの海戦で勝利を収めたことで有名な人なんです。
エドワード・コドリントン
コドリントンコートの流行りはすぐ終わってしまいました。
だから、辞書にすら載っていないのです。
でも実はコドリントンコートは上記のコートをオシャレにしたコートでした。
どうオシャレにしたのかというと、、、
簡単にいうと短く、そしてウエストを細くしました。
なぜ?
防寒目的じゃなくて、オシャレコートだったから。
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今、日本でも春の少しの期間だけ、オシャレな人はスプリングコートを羽織ります。
1月中旬の寒い日のコートではなくて、素敵な色で、薄くて、洒落たコート。
このコドリントンコートに注目したのがそう、チェスターフィールド伯爵。
コドリントンコートをもっと軽快にして、フィットさせて、素敵なコートを仕立ててみた。
お洒落な方がお洒落なコートを着ていたら、それはたちまちブームになります。
現代でも有名人が着た服が、たちまちブームになる、ということはよくありますよね。
それでは、最初のチェスターフィールドコートはどんな風だったのか?
図版があります、見ていきましょう。
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<After>チェスターフィールドが誕生
<After>
1842年のチェスターフィールドコートの資料です。
丈が短くなって、前も留めていない、お洒落用コート。
チェスターフィールドコートは、最初は短いコートだったのです。
<Next>
左の人が着ているコート、チェスターフィールドコートと説明されています。1859年のチェスター。
チェスターフィールドコートは比翼といって、前ボタンが見えないようになっているという文章もあるのですが、実は最初から比翼だったわけでもないのです。
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もう少しだけ、チェスターフィールドについて追ってみます。
またもマニアックな話ですが、第4世のチェスターフィールドが着ていた、と説明されている場合があります。
冒頭でも述べた通り、実は反れば間違い。
本当はその孫にあたる、第6世チェスターフィールドが着ていたコートなのです。
服飾評論家の出石先生に聞いてみました。
1733年にお亡くなりになってて、1840年にチェスターフィールドコートがデビューする、というのはおかしい話ですね。 ただ、そういう風に服飾辞典が間違えるのは無理もない話です。
第四代は有名な人で、(第四代チェスターフィールドのことは)百科事典でも多くの説明が出ています。
チェスターフィールド4世が亡くなった後、随分と時間が経ってからチェスターフィールドコートが誕生しています。
ところが、4世はとても有名だったし影響力があったので、4世が作ったと思われているのです。
チェスターフィールド4世は、本も出している。
(本当は本ではなくて、息子への手紙の抜粋。知識は、懐中時計と同じように隠しておきなさい。と書かれているのは、息子よ、謙虚に生きなさい!という親のメッセージ。)
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子供の5世も政治家、大使も務めた人物。
そのまた子の6世、あまり有名にはならなかったので、6世は辞書にも載らなかった、ということでした。
しかし第6代というのは人名辞典に出ていません。
お父さん(第5代)は政治家としてなかなか偉かった、第6代は政治家としてはほとんど業績がありません、政治家も短い期間で辞めています。
しかしその一方で非常に洒落者でした。
6世、なかなかの洒落者、それでいて大の遊び好き。
なんと、自分の持っている馬を大きなレースに出して、1843年に優勝させています(とてもお金のかかるお遊びです)。
こういう人は、どんどん素敵な洋服を作ります。
1805年5月23日に、5世の長男として生まれた6世。
残っているのは、英国のグランドショナルという競馬の大きなレースで、バンガードという持ち馬で優勝していることくらいです。
チェスターフィール伯爵の勝負服は、赤いジョッキーキャップ、ブルーのスリーブ、派手ですよね。
想像するに、人物のプロフィールが出てこないんですが、道楽者というかお金持ちだったんでしょう。
グランドナショナルで優勝するのは、馬を持っていれば良いとうわけではないし、何頭か持っていなくちゃいけないし、調教師も必要です。かなりの遊び人だったんではないかと思います。
この服が大好きなチェスターフィールド6世がトレンドのコドリントンコートをさらにお洒落に仕立てました。
軽く羽織れるコート。防寒目的ではなく、お洒落コートを!と。
こうしてチェスターフィールドコートがはじまります。
ちょっと羽織る短い丈、シェイプの効いた細さ、これがチェスターの最初です。
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チェスターフィールドは人の名前。
それもオシャレなチェスターフィールド伯爵の6代目。
長いコートじゃなくて、洒落た短いコートを仕立てた。
オシャレな人が着た、オシャレなコート、それは話題を呼んで広がっていく。
ここ数年はカジュアル・ファッションでもチェスターフィールドコート+スニーカーを合わせたスタイルが一般化しています。
まさか海を超えた日本という島国で、男女ともに着られてトレンドになっているとは、チェスターフィールド伯爵も驚きでしょう笑。
冒頭でも書いたように、チェスターフィールドコートの守備範囲は広いです。
ビジネススーツに合わせるコートとしてまっさきに思い浮かびますし、タキシードを装うようなフォーマルの場にも着ていけるコートでもあります。
ということで、この冬は洒落たチェスターフィールドコートを仕立てておきましょうか。
さて、明日は何着よう?
・・・・・・・
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ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2024年9月27日
オーダーコート | コートの歴史
タグ:服飾史, コート
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