良いスーツって何だろう?オーダースーツ仕立屋の先輩から教わった話
松はじめです。
良い服を簡単に見分ける方法があるのをご存知でしょうか?
良い服は、ハンガーにかけた時に格好悪い。
ハンガーにかけたとき、格好良いとしたら・・?
昔、仕立屋さんではこんな風に言いました。
「ハンガーにかけて綺麗なのは、既成服。
逆に、ハンガーっつらが格好悪い!のが仕立て服や。」(なぜか関西弁・・)
どういうことか、解説してみたいと思います。
結論 目的が違う
これはどういうことを言いたいのか、解説します。
仕立屋職人が言いたかったのは、
ハンガーに吊るした時にもっとも綺麗に見せるのか(既製服)
人が着た時にもっとも綺麗に見せるのか(注文服)
そういうことを言いたかったはずです。
現代では、正直、オーダースーツでも平面的な服はあります。
反対に、高級既製服は立体的です。
(例えば、ブリオーニクラスであれば。)
ただ、人の体にフィットさせるべく誂えたオーダースーツというのは、ハンガーに吊るすとどこか不自然なシワがでます。
それを人が着れば、美しいのです。
良いスーツとは?
良いスーツとはどんな服でしょう?
いろいろな要素がありますが、
・見て美しく
・着てきやすい
これが大きいですね。
・裏地が汚い
・着ると軽い
など、少しご説明してみたいと思います。
トルソー(マネキン)で撮影して思うこと
実際に、私もトルソーにかけて撮影することがあります。
例えば自分の服。
これをトルソーに着せる。
トルソーは、悔しいですが理想的なボディ。
反対に、私は首がひょろっと曲がっている。
だから既成のスーツだと衿が片方だけ抜けてしまうのです。
それを、オーダースーツではうまくわからないようにしているわけですね。
不完全な体を、うまくかっこいい鎧が隠してくださる。
これについては、服飾評論家の出石尚三先生もおっしゃっていました。
さて、美しいトルソー氏に、私のスーツを着せます。
いざ撮影!
すると、なんだか歪なシワが・・・。
なるほど、私は右肩の傾斜がどうも強い。
だからそれを計算してスーツの右肩を下げているのです。
だから、トルソーのような左右均等なボディでは、前ボタンを留めた時にシワがでるのです。
つまり、あなたの体に合わせつつ、あなたをより良く見せるスーツ(オーダースーツ)と、大衆に向け作られたスーツとは、シワの出方が違うのは当然というわけです。
良いスーツのシワ
では、良いスーツは、どんなものでしょう?
良いスーツは、丸みがあります。
特に肩は前へ前へと作り込みます。
ですから、特に立体的ではないハンガーにかけると、肩周辺にシワが出やすいのです。前へ前へ行こうとしていますから。
良いスーツは裏地が汚い
また、良いスーツは、汚いといいます、裏地が。
これも最初は仕立て業界の大先輩に教わった話ですが。
スーツ生地、表の生地というのは動きます。
例えば湿度。
夏と、冬とでは違うわけです。
スーツに、ステッチを入れていらっしゃる方もいらっしゃると思います。
着込んでいると、ステッチのあたりがやけに目立つな?ということはありませんか?
これは、生地が動いた証拠。
ステッチ(糸)はそうそう動きません。
反対に、生地はちょっとした湿度の変化で動きます。
そんなわけで、
「裏地は表生地にハリを出すために、余裕を持たせている、これが良い服や!」と。
「売りとうて、キレイな裏地、ハンガー吊るして綺麗なスーツの方が多なった。」とおっしゃっていましたね。
(それはおっしゃる通り)
良いスーツは軽い
良いスーツは、軽いです。
持ったときの軽さではなくて、着たときの軽さ。
スーツというのは、結構重いです。
生地は、春夏物スーツで1mあたり230gくらい。
秋物スーツで、1m260gくらいの重さがあります。
冬物など、300gを超えるものもあります。
重さは、目付けといいます。
例えば、1m250gの目付けだったとします。
私、176センチ(少し水増ししたかも・・)のやや細身の人間で、仕立て服には3mは使います。
これはパターンによっても変化しますが、だいたいそのくらい。
大柄な弊社Hくんは、3.5mくらい。
つまり、私の場合はスーツでざっくり750gの重さの生地重量を使用するわけです。
(もちろん、カットしますからそんなにはありませんが・・)
ここに、芯など副資材と呼ばれるものを加えていきます。
バストのボリュームが美しいのは、胸増芯という芯のおかげです。
この芯が結構重い。
こうしてズシッと重いスーツに袖を通します。
この時に、スーツは肩を中心に首周辺で、スーツの重量がきちんと分散できると軽く感じます。
スーツケースなどでスーツを持つと、それなりに重いなと感じませんか?
それを一日着ているのですから、この重量の分散がポイントで、肩を支点に安定させるのです。
お神輿も、あんなにも重いものを肩に乗せて担ぎますよね。
まとめ
良いスーツは、見て美しい。
それは、ハンガーにかけて鑑賞する時に綺麗だな。という風になるのではなくて、
着て、立体的で、体にフィットした服のことです。
また、着てきやすい。
長時間着て、疲れるよりも、着心地の良い服が良いなと思います。
かくなる私も、自分自身がオーダースーツの仕事をはじめて、ことジャケットに関しては既製服には戻れなくなりました。
また仕立てにもいろいろなグレードがあると思いますが、
アイロンワークが多く施された仕立て服を体験すると戻れなくなりました。
靴も、似たところがありますよね。
さて、明日は何着よう?
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ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2019年5月19日
ファッションアイテム | オーダースーツ
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