必読!SHIPS顧問の鈴木晴生氏 こだわる男のスタイリングメソッド
ふと周囲を見渡すと、黒いスーツに黒いVネックニットを合わせたビジネスマン同士がランチをとっていました。
確かにこの季節は寒いのです。
寒さが本格化してくると、コートだけでなくスーツのインナーをプラスしている方も少なくないと思うのですが、スーツとかニットというベーシックなアイテムも、ただただ着て合わせると失敗します。
失礼ながら、田舎のお役所の職員さん?というようなスタイルに見えてしまうわけです。
ベーシックなアイテムを、どうやって自分流に合わせたら良いのでしょう?
そのヒントになる本があります。今日は、私も大好きなSHIPS顧問の鈴木晴生さんの本をご紹介したいと思います。
背表紙にはそのように書いてある。
無難にしようと思えばどれだけでも無難にできるのがファッションの世界。
特にビジネスではそうで、浮かないように、ある程度洒落ている雰囲気であれば良い、というように無難になりがち。
もちろん、ベーシックな服装が悪いということではなくて、ただただ王道を本に書いてある通りに着ても、あなたらしさが出ないのだ。
スーツはメッセージを発信するツール
スーツはメッセージを発信するツール、だからまずは意志なき習慣に疑問を持つべき!と、スーツスタイル編ははじまる。
まずは秋冬スーツスタイルから始まる本書。
やはり冒頭はネイビーのスーツからなのだけど、特に2着目以降でおすすめと紹介されているチョークストライプのスーツがエレガントだ。
注目したいのが、実際に鈴木晴生さんが着用されているネイビーのフランネルのチョークストライプスーツ。
どれも実際に鈴木さんが着用しているスーツとコーディネートというところに共感
これを、モダンにネイビードットのタイで合わせたり、ボタンダウンに無地のタイで合わせたりと、事例が紹介されている。どれも実際の着用シーンの写真ばかり。
実は、ここがとても共感できるところなのだ。
どうしてもこういったコーディネート本というと、モデルに綺麗な服を着用してもらって着こなしを紹介する、というのが王道パターンだ。
でも、こだわる男のスタイリングメソッドではそういう類の写真や事例はない。
鈴木さんが何年も着用して自分のものにした、そういう服装が掲載されている。
着込んでいないと、面白くない
その証拠に、本書の中にもこう説明されている。
こだわる男のスタイリングメソッド 鈴木晴生 著より引用
脱・没個性。グレーのスーツは素材で遊ぶ
ネイビーかグレーか、ビジネスでスーツを揃えていこうと思うと当然まずはその2択になる。
だけど、グレーは無表情になりがちで、ビジネスにおいてアグレッシブな姿勢を表現するには物足りない、と書かれている。そこで本書では、素材感にこだわってみては?という提案が加えられている。
中でも鈴木さんが着用している素材が、グレーのツイード素材。
ツイード素材というとハリスツイードを代表するような、ゴツゴツとしたジャケットを連想する方もいると思うのだが、本書ではセットアップ(上下)でシレッとグレー・ツイードスーツを着て、オフィスへ出勤する様子が描かれている。これが、なんと洗練されたモダンなスタイルに映ることか。足元はチャーチのフルブローグの濃茶の短靴で合わせているのも秀逸だ。
フォーマル編の見出しに注目したい
続いてフォーマル。
ここでは、日本でフォーマルといっても正装する機会は少ない。
多くがインフォーマルやセミフォーマルである。
しかも、肩の力が抜けた着こなしが主役になっている。
とはいえダークスーツに華やかなタイでOKというのもつまらないでしょ?
という問題提起から始まっている。
こだわる男のスタイリングメソッド 鈴木晴生 著より引用
と、鈴木さんはここでネイビーブルーに黒の拝絹(はいけん)のタキシードのジャケットを使って、コーディネートを2パターン展開しています。タキシードを着る機会がなかなかない日本では、じゃあ実際にタキシードを着るって、どう着るの?と考え込んでしまいます。
考え込んだあげく、結局は全て正統派のタキシードの着こなしをしてしまう。
かマーバンドにオペラパンプス、と全てタキシードの正統な装いにしてしまうと場によっては浮いてしまいます。かといってパーティスーツのような崩し方も違います。
本書ではタキシードのジャケットを活用して、スタッドボタン(シャツの胸に、ボタンの代わりに付けるボタン)やバタフライ・ボウタイを身につけながら、パンツやソックスでうまく外した事例が登場。
パッと見て真似できるものではないが、この部分くらいなら外してもオシャレなのかな?と時代の感覚をつかむことができると思う。
ただし、この章はあまりにもレベルが高いと思う。
フォーマルは特にそうだが、きちんとした装いができるからこそ外しができる。最近雑誌によく登場する、抜け感という言葉も、まず基本のコーディネートができてから抜いていく、リラックスさせていくからオシャレに見える。突然リラックスしたカジュアルな服を着ても、それはゆるい感じしかしないのだ。この抜け感はかなり奥深いと思う。
ハッキングジャケットの着こなしも登場
ハッキングジャケットという、いわゆる乗馬服を現代的に着こなした事例は服好きなら注目したいページだ。
ところで、スーツの腰ポケットで斜めになっているデザインはご存知だろうか?
スタントポケットという名前なのだが、実はこのスラントポケットは乗馬が関係して生まれているのだ。
スラントポケットについて過去の記事
ジャケット&パンツスタイルは色やディテールに遊びの要素を取り入れる
本書の中盤からはスプリングサマーの着こなしについて。
日本ではクールビズが定着して、スーツは5月を過ぎたら着ない、というビジネスマンの方も少なくないだろう。
ジャケットスタイルといってもネクタイをせず、ネイビーのジャケットを着ればよいか。と思いがちだが、鈴木さんは冒頭でこう述べている。
だからこそ、涼やかに、颯爽と盛夏のジャケットスタイルを着ていただきたいのです。
そこで着こなしに差がつきます。
こだわる男のスタイリングメソッド 鈴木晴生 著より引用
やはり春、そして夏のスーツやジャケットは、素材感や色を楽しむべきではないだろうか?
せっかく日本には四季がある。
もちろんイギリスなどヨーロッパ諸国に比べたら夏は暑いし湿度も高い。
でも、そんな日本でも素材や色の工夫次第でいくらでも楽しめる。
ただ脱げばいい、というのはファッションでもなんでも無いのだ。
素材の伸縮も考える
本書で、スーツについては、外気温や湿度の変化による、素材の伸縮に気を遣わなければならない、と語られている。簡単にまとめると、細い糸、シルク混などドレープ感が美しい生地はイタリア生地に多いけど、実用に向いているのは英国生地。たくさん撚った(よった)強撚糸(きょうねんし)など、シワになりにくく実用向きな素材はどうか、とある。
また、ウール以外にもシャリ感のあるモヘア混の素材は、熱と湿気を逃がしやすく、シワになりにくいので盛夏の素材として最適と語られている。
まさにその通りで、春夏はいかに型崩れしにくく、しっかり感を出しつつ涼しさを確保できるか?というのがスーツを着る上でのポイントといえる。着こなしのメソッドとはいえ、素材のアドバイスについても細かく触れられているあたり、ちょうどこれからの季節のスーツやジャケット選びをする前に読んでおきたい一冊といえる。
アメリカの東海岸を象徴するアイビースタイルを意識したコーディネート
と、ここでぜひ注目しておきたいのが、ネイビーコットンスーツという、新たな選択の提案である。
著者である鈴木さんは着込んだネイビーのコットン・セットアップスーツに、ニットタイ。そして足元はオールデンのコードバンというスタイルで登場する。これが渋い!みなこんなスタイルで5月を過ごしていたら、日本の一人あたりのGDPは上がるに違いない!
オシャレ=気分がいい=見ている側も気持ちが高揚する=短時間で仕事が捗り、打ち合わせもスムーズに=1人あたりGDPも上昇 どうでしょう?
この他、夏の定番シアサッカーのスリーピーススタイルもぜひチェックしておきたい。
ホワイトバックスのウイングチップシューズで合わせているところも秀逸だ。
後半はシャツジャケ、サファリジャケットなどカジュアルアイテムの合わせ方も
そして後半はカーディガン、ポロシャツといった春&夏のオフスタイルまで公開されている本書。
こだわる男のスタイリングメソッド 鈴木晴生 著より引用
本書では、ただ着るだけではなくて、帽子、バッグなどの小物で個性をどう表現するか?にまで迫っている。シップス顧問である鈴木さんの著書ではあるものの、この本にはほとんどブランド名などが出てこない。
カジュアル編ではユニクロのポロとパンツにハットを合わせた事例など、ファストファッションですら着こなせばこうなる!ということがひしひしと伝わってくる。
あえて明かしておりません。
それは私が「シップス」の人間であるからではなく、
ブランドの名前に、私のスタイルの本質はないからです。
私の着こなしがベストであるとは申しません。
あなたには、あなた自身のスタイルがあるからです。
こだわる男のスタイリングメソッド 鈴木晴生 著より引用
まとめ
ベーシックを自分流に着こなす こだわる男のスタイリングメソッド。
秋冬、春夏、それぞれのスーツの着こなし、素材の選び方、コーディネート。
カジュアルの着こなしのポイント、小物。
1つ1つの説明を、鈴木さん本人が登場し、鈴木さん自身が着ている服で解説された本。
それは昨日買って着た服ではなく、何年も、あるいは何十年も着込んで自分のものになった服。
磨かれ、厳選され、そこに集まった小物たち。
そういう服装を見ていると、それはまさに鈴木晴生さんの人間模様、生き方、人生を見ているようだ。
本書の冒頭に、服装はその人自身を発信する、雄弁なツール、とある。
まさにそれが写真とメッセージで我々に語られているわけだ。たかが服、と思ってはいけない。服こそあなたを表現する場であり、モチベーションの源であり、あなたである。
この本を手にとって、スーツについて、ファッションについて何か感じるものがあるかもしれない。ぜひ読んでいただきたいおすすめの一冊だ。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2018年2月23日
スーツの着こなし術 | おすすめファッション書籍
タグ:書籍
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