スーツの起源はどこの国のどんな服?ラウンジスーツ・ラウンジコートの歴史を追う
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
松はじめです。
私たちが着ているスーツ、一体いつ、どうやって生まれたのでしょう?
もともとは何の服だったかご存知ですか?
■1864年の英国皇太子の装い
アレクサンドラ姫に長男が生まれました、その弟は後のジョージ5世です。
これが、スーツの原型といわれる、初期のラウンジスーツ。
ジャケット・パンツ・ベストも揃った生地で仕立てられています。
(皇太子が流行のラウンジスーツを着ていることも異例なことだが、とにかく服好きな方でした)
スーツの起源の服はどうして生まれた?
イギリス発祥と言われますスーツ、この起源とは一体何だったのでしょう?
スーツの起源は、ラウンジジャケットという服です。
1848年、ラウンジジャケットが生まれました。
もともとイギリスの貴族階級というのは、1日4回以上着替えをしていました。
なんと贅沢な、いやはやお暇なのか。
古代ローマ時代、たくさんの奴隷に働かせて、上流階級はあまりにも暇だったから何かを研究したと言われていますが、とにかく着替えが日常です。
イギリスのこの時代、貴族というのは大きな土地を持っています。
広大な領地を持っていて、何代にも渡って維持してきたわけです。
基本的にはお屋敷には働いてくれる人たちがたくさんいますし、仮に働きたくても働けない身分だったわけです。
ここについて、服飾評論家の出石尚三先生もこのようにおっしゃっておられました。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]
朝起きる。貴族はすることがない!
だから、散歩をするんです。それで、散歩するのなら、散歩の服に着替えましょうか、となった。
それから何をするか?馬に乗ったんです。[/speech_bubble]
こうしてお茶の時はお茶の服と、何度も目的に合わせて着替えます。
一番大事なのが夕食の時の服でした。
イギリスの服装!夕食の後に着る服にある変化が!
夕食をする時に服を着替えるというのは絶対でした。
お屋敷にはディナーベルというのがあり、執事がベルを鳴らします。
すると、夕食の準備ができたのだな、とわかってお屋敷の男性、女性は下の階に降りていきます。
この時、男性は必ず燕尾服、女性はイブニングドレスを着なければならなかったのです。
さて、食事といっても現代の仲間でのディナーとは少し雰囲気が違うわけです。
映画で観る貴族の食事のシーンを見るとわかりますが、静かに始まって、常に堅苦しい雰囲気が漂います。
常にエレガントで、もちろん下品な話などしてはいけません。
英国紳士ですから、当然?
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]
出石尚三先生によれば、男性は女性がいるところで、おヘソから下のことは一切話してはいけないとされていたそうです。
それに、女性がいる場合はワイン以外の強いお酒もだめ、タバコも禁止。
下手なことは言えない、ビジネス上の会食ですら耐えられない私には想像もできない世界です・・。[/speech_bubble]
イギリスでは食後に男性同士でくつろいだ
堅苦しい食事はようやく終了いたしました!
早く過ぎて欲しい・・と思う時間はとても長く感じるものですね。
男性と女性はディナー後には別々の部屋へと分かれて入っていきます。
女性はロウイングルームに向かい、男性はスモーキングルームに引っ込みます。
ずっと堅苦しい雰囲気が続いていたが、ほっと一息。
いやーようやく男同士ですな!
本音で話せる!というわけです。
あいつが可愛い、どう思う?というような話で盛り上がった?
ここでしか話せない話も許される場です。
スモーキングルームでは、男性は葉巻(当時は嗅ぎタバコ・スナッフ)を楽しんで、強いお酒を飲んで、語り合う。
こうしてそれぞれ積もる話を楽しみました。
ラウンジだけで着る簡単なジャケット(ラウンジジャケット)登場
ところで、このスモーキングルームは別名ラウンジルームとも呼ばれています。
ラウンジというとホテルのラウンジなどを思い浮かべるが、寛ぐという意味です。
ようやく男性同士くつろごう、という時です。
ところが先ほどまで食事をする時に着ていた尾っぽのついた燕尾服は、どうも座るのにも邪魔だし堅苦しい。
こうして、一時的にこのスモーキングルーム(ラウンジルーム)だけは、着丈の短い簡単なジャケットにしようじゃないか。となったのです。
現代でいえば、ちゃんとスーツを着ていても、海外に向かう飛行機の中ではジャケットを脱いで、簡単にカーディガンでも羽織ろうか。というような感じでしょうか。
こうして、いつしかそのジャケットのことはラウンジジャケットと呼んだのです。
ラウンジジャケットの正体
そもそも、窮屈な燕尾服とは対照的に、ゆったりした服、ラウンジジャケット。
くつろぐにはゆったりしていた方が良い。
もともとは何の服だったのか?というと、ディサイドジャケット(またはトゥイルサイドジャケット)というスコットランドのワーキングウエア(労働着)だったのです。
作りも荒くて雑で、ラウンジジャケットの最初のころは労働服の名残りを残していました。
ラウンジジャケットがラウンジ以外でも着られるようになる(1860年)
1860年ごろになると、このラウンジジャケット、着てみるとなかなか良いな、と広がっていきます。
座りにくい尾っぽがなくて、着やすい。
こんなに扱いやすい服なのだから、ラウンジルームだけではなく、少し外出するのにも使ってもいいんじゃないか?
少しずつラウンジルーム以外でもラウンジジャケットは着られるようになったわけです。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]
現代で考えてみたなら、しっかりとした仕立てのスリーピーススーツに、ネクタイを締めて緊張した会食から解放された。
今夜は部下を連れて自宅に帰ってきた。
さて、リビングでシングルモルトで飲みなおそうか。
ネクタイを緩めて、上着を脱ごうか。そんな感じでしょうか。
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お堅い燕尾服のジャケットだけを短いジャケットに変えたスタイル。
ラウンジジャケットはパンツとベストも同じ生地(ラウンジスーツ)になっていく
こんなリラックスできる服で、外で着ることも良いなんて、良い服があったものだ。
でも、それならいっそのこと上着、パンツ、ベストも一緒の生地にしてしまっては?
いちいちジャケットはジャケットの生地で、パンツはパンツ、ベストはベストの生地で別々に仕立てるほどでもないんじゃないか?
この時代に、スリーピースで一緒の生地で全部揃えて作ろう!という発想すらなかったのです。
(モーニングスーツ)
今だって、冬のコートの生地と同じパンツが欲しい!と思う人は少ないのではないでしょうか。
昔も同じ考えで、パンツの生地でジャケットを作ろう、なんてとんでもないことだったのです。
1890年のラウンジスーツ
さて、時代は進化して、1890年のラウンジスーツです。
この時のジャケットも、ベストもパンツも全て同じ生地で仕立てられています。
そして、シャツがウイングカラーという立ち襟から、いわゆる今の襟、レギュラーカラーになりました。
ホンブルグハットをかぶって、4つボタンで4つともボタンを留めています。
前のボタンの留め方も、いろいろあったことがこの資料から読み取れます。
ちなみに現代では、スーツの前ボタンは、前のボタンは一番下のボタンは外すのがルールとすら言われていますから、いつの時代もルールや常識は変わってしまうということです。
スーツの原型は小説の挿絵から読み解ける
シャーロックホームズという小説は、ストランドマガジンという英国市民の読む雑誌に掲載されていた人気小説でした。
シャーロックホームズシリーズの、ボヘミアの囚人という物語の挿絵には服装が描かれています。
作者はアーサーコナンドイルという方で、
挿し絵を描いたのは、シドニーパジェット。
この挿し絵も評判になったとのことです。そしてここに描かれている服装は、その当時の読者も納得できる設定でなければいけませんよね。当時、実際にどんな服装をしていたのか?がわかる貴重な資料なのです。
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・左の人:ボヘミア国王
・真ん中:ワトソン
・右の人:ホームズ
・場所:ホームズ自宅
・設定: ホームズは自宅にいる
・服装:フロックコートを着ている。
・設定: 変装して事件を探るべく街へ
・服装 ラウンジジャケット
シャーロックホームズ 赤髪連盟の服装
・左の人:質屋の店員
・右の2人:ホームズとワトソン
・設定:ホームズとワトソンは質屋の店員を怪しんでいる
・服装 質屋の店員はラウンジジャケット、ホームズたちはフロックコート。
シングルスーツ>>ダブルスーツ
■1908年のシアーズローバックのカタログ
中の仕立てがどうなっているか?がわかる。
アメリカの服だが肩もしっかりしている。
スーツの原型といわれるラウンジスーツですが、もともとはシングル・ブレストでした。
1890年にはシングルがほとんどでしたが、1920年あたりからダブル・ブレストが流行になります。
実はシングルの方が原型というのは、個人的に納得感がありました。
スーツの起源 ラウンジスーツ まとめ
流行の服になったラウンジスーツ。
これがスーツの原型で、正体でした。
本来、服に限らずトレンドは生まれては、消えるもの。
ラウンジでくつろぐための、ある意味トレンドのような服だったわけです。
もっといえば、それはスコットランドの労働着で、動きやすく作られていたからくつろぎ服に採用されたのでしょう。
トレンドだったラウンジスーツ(スーツ)は消えずに今もこうして国際的に着ています。
そもそもはとある島国で流行った、貴族のくつろぎの服が、いつしか紳士が着るスタンダードな服になりました。
日本だってついこの間まで、着物を着ていましたね。
国民服を超えて、会社や特別な場面といえばスーツでしょう、というわけだから面白いものです。
ではスーツはなぜ世界の服になったのか?についても、またご紹介まいります。
さて、明日は何着よう?
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ラウンジコートや洋服の歴史については、服飾評論家 出石尚三先生の著書でも説明されている、内容の濃い一冊。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2023年8月21日
オーダースーツ | オーダースーツの歴史
タグ:スーツ, 服飾史, 歴史
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