質問!ピークドラペルのスーツってどう思う?コンクールで着ても良いスーツ
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
本日はこんなご質問をいただいたので回答してみよう。
オペラをやっています。
コンクールや発表会、試験があって、タキシードまでは着なくて良いのですが、
個人的に好きなピークドラペルのシングルスーツを着る、というのはおかしくありませんか?

おかしくはありません。
スーツの衿には、ノッチドラペルとピークドラペルがあります。
もちろん他にもあるのですが、今回のシーンにはピークは良いと思います。
一体なぜでしょう?
いろいろな観点から解説してみたいと思います。
ノッチドラペル。
このタイプが一般的で、ビジネススーツやチェスターフィールドコートに採用されている衿。
普段ビジネスをして人に会っていると、気にしてみているとこの衿の人がほとんどだろう。
ショップで売られているスーツも、ほとんどがこのノッチという衿。
上衿と下衿の切れ目(ゴージライン)から下衿はまっすぐに先端に向かっている。
ピークドラペルがこちら。
衿の先が尖っているタイプで、ダブルのスーツはたいていがピークドラペル。
上衿と下衿の切れ目(ゴージライン)からは、尖っている。
では、シングルのピークのスーツとは?
フォーマルのタキシードというと、ピークとショールの2種類がある。
そこで、シングルのピークは、このタキシードのような雰囲気をもっている。
ということもあってスーツで採用すると少し華やかな印象になる。
以前、生地の商社、ハリソンズを束ねるジェームスダンスフォード社長とお会いした時、ジェームスが着用していたのがピークドラペルのシングルスーツ。
一緒に写真を撮っていただいた。
このスーツは、ロンドンのクリスカー(CHRIS KERR)で仕立てたスーツなのだそうだ。
クリスカーの顧客には、007のダニエルクレイグやジョニーディップもいるという。
基本はテーラーにデザインはお任せしているという。
ダンスフォード社長のスーツの生地はもちろんハリソンズ。
次に、よくバイオリン奏者が燕尾服を着ているのを見たことがあるだろう。
ドレスコード、ホワイトタイとなっていたら着ないといけない一式の服で、ツバメの尻尾のように後ろだけ長い服に、白いボウタイも必須になる。
実際、この服を着るととても暑い。
ウエストコート(ベスト)も着なければいけないし、素材も重厚。
演奏がしやすいか?といえばジャージー素材のように伸び縮みしないので、もちろんそんなことはない。
じゃあどうしてわざわざそんな服装をするのだろう?
オーケストラとは、もともとCDがなかった時代の生演奏。
貴族が、自分たちが踊るために演奏する人たちをパーティーに呼ぶのだ。
その時、演奏する人たちは何を着よう?
ドレスアップした錚々たる貴族の前で、どんな服を着るべきか?
聴いてくださる方に対して、どんな気持ちを服で表すべきだろう?
答えは、正装だ。
夜の場なら、燕尾服を着て今日の場に対しての敬意を表わそう、演奏家として。
こう考えていくと、服は誰のために装うものか?という答えが見えてくる。
次に、服飾の歴史を辿るとどうなっているのか?
ピークドラペルもノッチドラペルもスーツが進化する過程ではいろいろと変化した。
つまり、どちらのデザインもその時々いろいろあったので、どちらが絶対、ということはないのだが、実際にいろいろ変化している様子を見てみよう。
こちらはフロックコート。
ウエストコート(ベスト)にも衿がついていて、ボウタイを巻いている。
こちらもフロックコート。
だが衿はピークドラペルになっている。
シェイプのきいたなかなか洒落たコートだ。
もともとは前ボタンがたくさんあった。
ラペルにはフラワーホールという穴が開いているけれど、もともとこれは、ここまで全部ボタンがあってとめていた、という名残り。
つまり、ある時に折って曲げて衿にした、ということだ。
その衿の先をノッチドラペル、ピークドラペルなどいろいろなデザインにしていた。
ライディングスーツとある。
スーツの原型を辿っていくと、乗馬服だったことがわかる。
日中、フロックコートを着ていたのだが、馬に乗りやすいように、と裾を丸くカットしたのだ。
これが進化してモーニングコートになる。
オペラをやっていて、タキシードまでは着なくても良いシーン。
シングルの、個人的な好みのピークドラペル。
周囲はノッチドラペルが多いなか、私は良いと思う。
なによりもタキシードのような華やかさを兼ね備えている。
ビジネスで、きちんと見せる立ち目的が今回ではないのだ。
また、ピークドラペルは体のラインをシャープに見せる。
先鋭で直線的、だから見ている側もシュッと見える。
ただし、発表会となれば、あくまでも聴いてくださる方、聴衆のための服である必要がある。
あまり華美ではいけないが、ピークドラペルのスーツは良いと思う。
ただ、煎じ詰めると、
ピークドラペルのスーツが好きだから着る、のではなくて、
聴いてくださる方のために、という気持ちで着る(選ぶ)のがベストだ。
ということで、時にはピークドラペルスーツに冒険してみようか。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2018年1月18日
スーツの着こなし術 | TPO
タグ:服飾史, ディテール, デザイン
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