初公開!ハードボイルドの本当の語源
オーダーサロン ボットーネの松 甫(まつ はじめ)です。
8月に入った。
小雨も手伝ってなんだか夏を感じるには少し涼しく、ジャケットを着て歩く私には過ごしやすい日が続いているけれど。8月もすでにたくさんのご予約をいただいているのだが、それらのオーダーの納品の時には少しは秋を感じているのだろうか、と思うと頭の中は秋である。
さて、今日はファッションの話、ある言葉について。
みなさまはハードボイルドという言葉は、もともとファッションに関係しているのをご存知だろうか?
そもそもハードボイルドの語源とは何か?とウェブで調べると、固茹で卵が語源だ、とあるのだけれど、著書 スーツの百科事典でもおなじみ出石尚三先生の解説はこうだ。
(シャツの)ハードスターチ(固い糊)をどうやって洗濯するのか?
洗っても落ちない糊です。
そこで、釜茹でにしました。
そうやって糊を落としたのです。
ですから、ハードボイルドは洗濯の方法。
19世紀、男のシャツの襟は固く、固ければ固い方が良いとされていた。
もちろん一緒に袖も固い。
それはもうプラスチックのように固い。
だから現代でいうダブルカフスのように袖を折り返す必要もなく、シングルカフにカフリンクスをつけていたわけだけれど。
その、バリバリに固いシャツの糊は洗濯しても落ちないため、ハードボイルド、釜茹にしたそうだ。
それで、どうして現代のハードボイルドが意味するところになったのかというと、襟が柔らかい時代になったのに、そんなガチガチに固いシャツを未だに着用してるの!?頑固な親父だ!というような意味でハードボイルド、という俗語があるのだそうだ。
タキシードを着る際のシャツの胸に、スタッズボタンというボタンがある。
これはシャツに縫い付けられたボタンではなくて、シャツ側には内側まで通せるボタンホールを開けておいて、わざわざ別のボタンを留める。ちょうどカフリンクスを袖に付けるように。
どうしてそんなことをするのか?というと、シャツは下着。
その下着のボタンを見せるなど、恥ずかしいということなのだ。
つまり羞恥から始まって、ボタンという装飾が進化するわけだけれど、現代だとタキシードのシャツの胸には、黒のオニキスのスタッズボタンを付けるというのが常識となっている。
もともとはオニキスだったわけではなくて、サファイアやルビーなどの宝石をつけた方もいらした。
わざわざスタッズボタンとカフリンクスを宝石入り特注にてカルティエにオーダーした貴族の履歴も残っているようだ。
このスタッズボタン、スタッズは複数形で、スタッドが単数形なのだけれど、3つが正しいというわけではない。
固い糊でバリッと決まったシャツを着ていた時代は、スタッズボタン1個で充分留まる。
そのくらい固い方が良いとされていたし、スタッズボタンは3つが絶対ではなかったということがわかる。
そんな時代の洗濯方法が、ハードボイルドの語源、釜茹だったというから驚きである。
釜茹でといえば、ちょうど釜茹でのうどんのお店に行ったのは水曜日。
東京麺通団は、新宿にあるうどん屋さん。
現在表参道にあるボットーネはもともとは新宿で創業したのだけれど、その頃に友人に教えて貰い通っていたのが東京麺通団だ。
当時の鉄板メニューといえば釜玉うどんで、香川の香りを味わいながら昼のみならず夜も通っていた。
そんな新宿、東京麺通団にふと立ち寄る機会が生まれた。
それも何と家族と過ごす休日に。
ちょうど昼時に移動して、ちょうどこの辺りを訪れた、ちょうど麺を食そうか、という雰囲気であったし、ちょうど良い感じであったので、私としては懐かしい東京麺通団に入ったのであった、ちょうど。
当時はあまりオーダーしなかったチーズを乗せた、チー玉うどんをオーダー。
通っていた当時と変わらないコシのある麺は懐かしく、しっかり釜で茹で上げられた麺はチーズのトロミと好相性だ。
さすがに茹でなくては落とせない糊付きシャツは少々厄介だけれど、この秋は少し固めの襟のシャツを仕立ててみようかな。
さて、明日は何着よう?
東京麺通団
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年8月4日
明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術 | 背広紳士の知識
タグ:服飾史, タキシード, シャツ
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