新パターンで仕立てるフォーマルスーツ|タリアデルフィーノ
今日は久しぶりに、私自身がオーダーしたスーツをご紹介してみたいと思います。
新パターンで仕立てたスーツ
ボットーネはいくつのかのパターンを取り扱っており、普段はお客様のご要望に合わせて適切なパターンからスーツをお仕立てさせていただいております。
今回は久しぶりに新開発のパターンで自分のスーツを仕立ててみました。
まずは見た目から分かる、デザイン的な特徴を見ていきましょう。
まずはスーツの顔ともいえる襟周りの表情ですが、写真のように傾斜のついたゴージラインになっています。
ゴージラインは着心地に直結する部分ではありませんが、時代感やこだわりが現れるポイントでもあります。
1980年代のソフトスーツ?といいましょうか、アルマーニなどのブランドのスーツを現代のカジュアル服のようなオーバーなサイズ感で着用していた時代のスーツのゴージラインは、傾斜が急で、ゴージ位置もかなり下にありました。
サイズが大きく、全体的に重心も低めのバランスですね。
私はその時代を生きていませんのでテレビや写真でしか見たことがありませんが、チャゲ&アスカを思い浮かべながら書いています笑。
そこからクラシコ・イタリアの一大ブームを経て、2000年代後半からは非常にタイトなシルエットのスーツが当たり前になりました。
いまでもその時の感覚で、細めのスーツがお好きな方も多いかと思います。
細身のスーツであれば、ゴージ位置も高めに設計されており、襟幅も細いものが多いはずです。
そして2010年代後半からのクラシック回帰により、今現在は極端なデザインからは距離を置いたスタンダードなスーツが支持を得ています。
そんな今の時代感を表現した、かといって決して何か極端な特徴がある訳ではないこのゴージラインがしっくりきます。
こうして写真でみるともう少し襟幅は太くても良かったかな?と思いますが、誰が着てもしっくりくるような表情ではないでしょうか?
そしてこだわりはもちろん見た目だけではありません。
スーツの本場英国で修業を積まれたビスポークテーラーの方が開発をされ、『多くの補正を入れなくとも』きれいに見えるようにこだわって設計されています。
良いオーダースーツ=たくさんの補正が入っている、と思っている方もいるかと思いますが、もともとのパターンを活かし、少ない補正できれいに仕立てることもひとつの良さです。
何でもかんでも補正を入れてしまうと、意図しないゆがみから思わぬ誤差を生んでしまうこともあります。
これには色々と考え方があると思いますが、全てアプローチの違いであり、最終的にはお客様が『目で見て美しく、着て着やすい』と感じる服になるようにお仕立てすることが重要。
このパターンは日本人の為に作られたものですので、羽織ってみるとその完成度の高さに驚かされます。
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生地はスーパー160’Sの極細毛
生地はイタリア:タリアデルフィーノの上質な生地を用いました。
普段はもう少し耐久性のある英国産の生地で仕立てることが多いのですが、今回はフォーマルスーツとして仕立てましたので、艶があり着心地も滑らかなこちらの生地を選んでいます。
スーパーとは、糸になる前の『羊の原毛』の細さのことで、数字が大きくなるにつれ細くなっていき、一般的にはスーパー100’S〜130’Sくらい、150’S・160’Sとなると非常に細い部類に入ります。
150’S 以上となると、見るからに光沢感があり、きめも細かく触り心地もシルクのようなとても良い質感になりますが、その反面耐久性はあまりなく、デイリーユースのスーツとしてはあまりに心細い。
今回のようなフォーマルスーツであったり、タキシードであったり、もしくは素手に多くのスーツをお持ちでローテーションが豊富な方におすすめしたい生地です。
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大人なら持っておきたいフォーマルスーツ
ところで皆さんはフォーマル用のスーツはお持ちでしょうか?
よく礼服と混同されてしまいますが、フォーマル=礼服ではありません。
慶事の時に着るスーツをイメージしていただければと思います。
日本では冠婚葬祭とひとくくりにされてしまいますが、本来はシーンによって分けた方が良いことは既に多くの方がご存知かと思います。
普通に考えて、お葬式の時と結婚式に参列するときの服が同じであって良いはずがありません。
女性の服で考えれば当たり前のことですね。
ということで、慶事用のフォーマルスーツを持っておくべきだというのが洋服屋としての考えです。
こちらのスーツはダークネイビー、ミッドナイトブルーとも呼べるトーンですが、このようなネイビー系のスーツを一着慶事の用に持っておくことで、お祝いの場に相応しい装いができると思います。
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フォーマルスーツのお仕立て事例
ここからはフォーマルスーツのお客様事例をご紹介します。
こちらはイタリア:ゼニアの生地でお仕立てしたブラックスーツとネイビースーツ。
ひと目見てわかる通り、きめ細かく美しい光沢があり、フォーマルスーツにはうってつけの素材です。
ゼニアの中にも様々な種類の生地がある中で、『エレクタ』というコレクションからお選びいただきました。
やはりイタリア生地というと柔らかく繊細なモノが多いですが、このエレクタは程よく生地の厚みと弾力があり、耐久面でも非常に優秀。
見た目にはイタリア生地らしい美しい光沢を放ちながらも、実際に着ていてシワになりくく、デイリーユースできる攻守に優れた万能な生地です。
こちらはフランス:ドーメルの生地でお仕立てしたネイビースーツ。
こういったやや明るめのネイビーは華やかな印象になり、慶事に着るスーツとしもふさわしいです。
ベスト付きでお仕立てさせていただいており、ご着用のシーンに合わせて2ピース、3ピースとそれぞれのスタイルで着こなしを楽しむことができます。
ドーメルはフランスのマーチャントですが、服地づくりの本部はイギリスにあります。
イギリス生地の特徴でもあるしっかりとした打ち込みによる丈夫さを備えつつも、その表情は他の英国産の生地とはまったくの別物。
鮮やかなカラー、絶妙な光沢感があり、しかし無骨な英国生地のそれとは一線を画す、まるで『エレガント』な魅力に引き込まれてしまいます。
“イギリスらしく、イギリスらしからず”
モノづくりの基本は伝統的な英国、しかしそこにフランスのエッセンスを取り入れているのがドーメルの魅力です。
ということで、今回は新パターンで仕立てた私のフォーマルスーツとお客様事例をご紹介させていただきました。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2024年9月20日
オーダースーツ ボットーネのブログ | 明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術
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