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アルスターコートとは実は大人気のコートだった

アルスターコート コーディネート

オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。

松はじめです。

アルスターコートとは聞いたことはあるだろうか?
コートという言葉を省略して、アルスターと呼ぶこともある。

トレンチコートやピーコート、チェスターフィールドコートやダッフルコートは何となく聞いたことがある方でもアルスターコートというのは意外と知られていない。

実は今日でも数々の映画に登場し、コートとしても空前の大ヒット作であったのがアルスター。

歴史を重ねながらも知られざるアルスターコートは、実はあなたが持っているコートもアルスターコート(アルスター)かもしれない、そのくらいにポピュラーで定番コートがアルスターコートだ。

どのようなものがアルスターコートなのか、お伝えしてみたい。

この記事には動画バージョンもあります。

この記事の目次

 

ざっくりいうと、アルスターコートはこんなコート

■特徴

・長い丈、ダブル

・アルスターカラー

・ベルト付き、フード付き、チケットポケット付き、いろいろあった

・貴族の旅行用コートだったから

■いろいろなコートの父

・トレンチコートのベースになっている

・ポロコートのベースになっている

・タイロッケンのベースになっている

■アルスターとは?

・アルスターから輸出された

・生地はフリース

・生地を販売するために企画されたコートが大ヒット

アルスターコートはダブルからスタート

アルスターコートは、トレンチコートの原型である。

トレンチコートはタイロッケンというコートの進化系で、そのタイロッケンの元がアルスターコートになる。

アルスターはもともとはダブルブレスト。

アルスターコート
1890年のアルスターコート。
非常にロング丈、上衿は大きくダブルブレスト。

実は、時代を追うとシングルもある。

1912年のアルスターコート。だが、最初はダブルであった。

アルスターコートの特徴はアルスターカラー

アルスターコートの特徴はアルスターカラーという衿。

なんといってもここがポイント。

下衿よりも大きな上衿、浅いVゾーン。さらにかなり長いの着丈も本来のアルスターの特徴なのだ。

アルスターコートは旅行用コート

アルスターコート

服飾評論家 出石尚三先生によれば、アルスターコートはロンドンで、1869年に見られるようになったと言われているという。

もともと旅行用のコートで、ダブル。

デタッチャブル(取り外し可能)のフードがついていた。画像は1895年のアルスターコートで、フードとバックベルト付きになっている。

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]フード付きのコートというとダッフルコートを思い浮かべますが、チェスターフィールドコートにフードが付いている絵はなかなか浮かばないが、アルスターにもフードがあったんです。

なぜフードがあったのか?というと、これはもともとは旅行用のコートだったから、実用的、防寒面も考えられているんです。

そして、アルスターを着るということは、そもそも旅行をする(できる)身分・階級である。というような主張でもあったわけです。 [/speech_bubble]

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]

アルスターは旅行用コートでした。19世紀中ごろの旅行は過酷なんです。

今なら新幹線で冷暖房がありますが、昔は馬車です。冷暖房がありません。ましてや北の方でありますから。

[/speech_bubble]
 

アルスターコートの着丈は長くベルトで締める


コート アルスター

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]寒冷な地方、打ち付ける雨、旅といっても現代の旅とはわけが違うわけです。そして長い着丈は暖かい。 [/speech_bubble]

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]

非常に丈が長いコートでありました。

それからベルト付きです。これは日本語で共ベルト、英語でセルフベルトといいます。

トレンチコートもベルトしていますよね。

セルフベルトというものは1869年に現れたアルスターコートの大きな特徴でした。

[/speech_bubble]

ロングコートは脱いだ時のコントラストをさらに色濃くする。

また、アルスターコートには現代でも着こなしのポイントになり得るベルト付きコートが登場。

ベルトというとまさにトレンチコートなどもベルトで締めるタイプ。

ややゆったりしたシルエットのコートをきゅっとベルトで締めると、密着してとても暖かい。着込んでもそれに合わせて調節できるのもベルトのあるコートの特徴だ。

今でも背中だけにベルトのあるタイプを見かけないだろうか?

これはこの後の時代に、シルエットがタイトになったので背中だけで調節できる背ベルトとなったのだ。

アルスターコートのケープ付きもあった

アルスター ロングコート

1876年のアルスターコートには、インバネスコートのようなケープ付きもあった。

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]インバネスについてここで解説を初めてしまうと文章量がおよそ2倍に膨れ上がってしまうため、ここではあまり触れませんが、簡単にいうとケープのついたコートです。

イギリスで登場したインバネスはすぐさま日本に入ってきて、福沢諭吉が中心となって広がっていくんです。

日本名は《とんび》といいまして、着丈の長いタイプは《二重回し》といいます。インバネスは和服の上からも羽織れるのです。福沢諭吉は1866年の西洋衣食住の中でインバネスについて紹介しています。 [/speech_bubble]

アルスターコートの生地にはフリーズが使われていた 

 

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]アルスターコートにはフリーズ(friese)が使われていました。今の毛布のような生地です。
[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]現代であればコート素材はウール、カシミア、キャメル、アルパカなど、またその混紡もあります。
ですが、もともとのアルスターコートはフリーズという、かなり防寒性が高い紡毛の素材だったのです。 [/speech_bubble]
これも旅行用コートということが関連している。
そして、意外な使い方が!
実はこの記事を書いている私も、同じコートの使用方法は実体験として経験がある。
これはこの記事の最後でご紹介したい。

アルスターコートのアルスターの由来は? 

ドニゴール

アルスターコートのアルスターとはなんだろうか?

アルスターの意味は、北アイルランドの地名です、という記述をよく見かけるのだが、アルスターで作られたわけではない!

どういうことかご説明しよう。

まず、事の発端は1866年に遡る。

ジョンマクジーというアイルランド人が、ドニゴールで生地屋をはじめた。

ドニコールツイードという言葉はご存知の方も多いと思うが、ドニゴールというのは地名である。

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]これがドニゴールという州名であります。

アルスターというのは、日本でいうならば関東。

ドニゴールってのは州、アルスターのなかのドニゴール州。

[/speech_bubble]

日本>関東>東京都
アイルランド>アスルター>ドニゴール 

旅行 馬車 コート

マクジーはフリーズという生地が売れていることに気づいた。

そこで、1867年、さらに販売するにはどうしたら良いだろうか?と旅行用コートを発表したのだ。

フリーズという毛布のような生地は、当時の馬車移動の旅行用に良いのではないかと。

つまり、どちらかといえば生地を売りたくて作ったコートなのだ。

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]当時の環境にあわせ、旅行に適した外套を考える、それがアルスター。
1868年から輸出をします。
ジョンマジクーは1868年にベルファーストから輸出したと記述があるんです。

[/speech_bubble]
 

アルスターから輸出されたコート

フリーズという生地自体はさほど新しいものではなく、昔からあった。

それをコートとして世に送り出したのがジョンマクジー。

英国を経由してフランスに渡り、瞬く間にヒットしたというわけだ。

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]つまり、アルスター地方で生まれたコートというよりは、フリーズ素材を使って新しいコートを考えた。

それがアルスター地方のベルファストから運ばれた、ということでネーミングされたのでしょうね。 [/speech_bubble]

アルスターはグリーンだったかもしれない 

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]フリーズという生地は、1418年ごろからイングランドで使われています。

それ以前にも、13世紀12世紀ごろから、アイルランドでは何か別の名前があったのでしょうけれど。

それを輸出して、イングランドに伝え、英語でフリーズという言葉になったんではないでしょうか。

アイルランドでは毛布のような生地が折られていたということは間違いないでしょう。だいたいロンドンデリーのあたりでフリーズという生地が織られていたんであろうと思います。

英国の文献1418年に、EEウィズという作家の本に、グリーンフリーズのガウンという言葉がでてくるんですね。アイルランドではもっと先に使われていたんでしょうね。

[/speech_bubble]

 また、1765年の本にも、この時代の馬車の内装にグリーンのフリーズが使われていた、という表記があるようだ。

ということで、どうもグリーンのフリーズが文献で出てくるようだ。なぜグリーンだったか、これには2つの理由が存在するのだという。

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]一つはアイルランドの色。

グリーンはアイルランドを象徴する色という想いがあったのでしょう。

ロンドンデリーというエリアには、コケとか、木の根とか、緑色に染まりやすい原料があったんではないかな。
13世紀ですから草木染めですね。

[/speech_bubble]

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]日本にも大島紬など、天然の原料で染める方法がありますが、アイルランドも例えばタータンなども、もともと草木染めです。だから鮮やかな色が出て、経年の変化も美しいんですね。 [/speech_bubble]

タータンについてもなかなか面白い、その記事はこちら。

 

アルスターコートはレディースも発表されていた

アルスター レディース

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]婦人用アルスターも登場しています、1871年に、テーラーアンドカッター(仕立て屋用の雑誌・専門誌)の記事。
今ロンドンで最も着丈が長いコートは、アルスターコートであろうと記事が出ています。

[/speech_bubble]

レディースのアルスターもなかなか雰囲気がある。

レディース アルスターコート
タキシードや燕尾服に用いられる拝絹、それからウイングカラーで。

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]1889年になりまして、レディースなんですけど、5段ケープというデザインも生まれています。
珍しいわけではなく、馬車に乗る人が、5段ケープのマント着ておりました。

19世紀終わりになりまして、レディースアルスターが流行るのですけれど、
5段ケープは、英語でファイブケープス。
ファイブケープスインバネスとかね。

[/speech_bubble]
 
1871年、アルスターという活字が登場したと思えば、翌年の1872年にはもうイギリスからフランスに伝わったアルスター。
フランス読みではアルスターは、イルステール(ulster)となる。フランス人に聞くとイルステールと言うようで、辞典でも、イルステールとなっている。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]あくまでも、おフランスの方々はイギリス英語読みはしたくないのですね。 [/speech_bubble]
 

アルスターコートの意外な使用方法

 実にアルスターコートがロンドンに現れて、その3年後にフランスに伝搬したという、当時としてはスピーディーな伝わり方だ。つまり、そのくらいに流行ったし、重宝したということなのだ。

どうして重宝したのだろうか?
毛布のような素材、長い丈、ということで、出石尚三先生はこう仮説を立てていらした。

 [speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”izuishi.jpg” name=”出石 尚三 先生” ]19世紀の半ば冷暖房がない状況で、宿もフカフカのベッドもあるかかわからない、毛布もあったり、なかったり。昼間は外套(コート)として使っているアルスターを、毛布代わりに使ったのではないでしょうか。

[/speech_bubble]

[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A8822_result3.jpg” name=”松はじめ” ]確かに、どうしてここまで長い丈が特徴となっていたかというと、万が一寒さに震える日は、毛布代わりになります!という優れものだったならばどうでしょう。
これだけ丈が長かったと考えるのはとても自然なことですね。 [/speech_bubble]

かくなる私も、過去新しい紳士服店の設計に携わったことがある。

内装やら何やらとやっていたらとても時間が足りない。オープンの日程は決まっていたので、腹を決めてそのまま開店前の店舗で寝ることにした。

開店前の店舗は白い床が貼られていて、鏡とカーテンレールと洋服をかけるレールが壁に設置され、照明はテスト用に少しだけ設置されていた。

もちろん布団はない。冬ではなかったが肌寒い、どうしようかと思ってふと壁のレールを見ると、既にサンプルとして持ってきた服と一緒に長さを見るために自分のチェスターフィールドコートが数着掛かっていた。短いチェスターコートと、ヒザよりもさらに長いそのカシミアのコートを見て、これだ!と思って、

コートの上にコートを着て、毛布代わりにしたのである。

実は、コートの上にコートを羽織るということは珍しいことではない。

そもそも言ってしまえば、私たちがベストとか、ジレと呼ぶアイテムも、英国ではウエストコートと呼ぶのだ。昔はその上にフロックコートを羽織って、さらにコートを着込む。

ということで、コートは毛布の代わりになる!と声を大にしてお伝えしてこの記事はそろそろ締めくくろうと思う。

アルスターコートの最終形態がこちら! 

あれもアルスター?これもアルスター?見渡してみると、結構多くの人がアルスターコートを着ているのだ。本人はきっと知らないが。

こうして時代が進みゆくなか、様々な変化をしていくアルスターコートだが、最後にぜひこの図を見て欲しい。
何か気づかないだろうか?
ついにこのようなアルスターが登場するのだ。

アルスターコートとトレンチコート

Ulsterと資料右下には記載があるので、確かにアルスターとして紹介されている。
が、、トレンチコートのように見える!

このアルスターカラーをベースに、いよいよトレンチが開発されていく。

戦争はそれまでの肉弾戦から、銃撃戦になる。

銃撃戦になるから、突撃していっても打たれてしまうのだ、そこで溝を掘って、隠れ流れ打つ。

この溝、大変な欠点があった。

そこでいよいよトレンチコートの開発が!
この話はこちらの記事で。

アルスターコート まとめ 

 アルスターコートの特徴

・ダブルブレステッド
・デタッチャブルのフード(雨よけのフード)
・セルフベルト(共生地)
・長い着丈 
・フリーズ(frieze) 毛布のような素材

アルスターの歴史

・1866年 ジョンマクジーがドニゴールで生地屋を開く
・1867年 厚手の毛布のような生地(フリーズ)を販売するために、 旅行用コートを作成。旅行が一般的でなかった時代にアルスターを持っていることは ステイタス。
・1868年 フリーズで作成したコートがアルスターコートになる。
・1870年 女性用のアルスター・コートも現れる。

ということで、ストーリーのある紳士コート、アルスターコートも一着揃えておこうか。

さて、明日は何着よう?

 

 

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2019年2月10日
オーダーコート | コートの歴史
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