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明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術

なぜフォーマルの服装は時間によって変わるのか?一度知れば怖くないアフターシックス

結婚式の服装 男性

タキシードまでいかなくとも、普段スーツを着ないライフスタイルの方であっても、友人、上司、部下の結婚式、さあて何を着ようか、確かブラックスーツがクローゼットにあったはずだから大丈夫!と思っていないだろうか?

このままでは娘の結婚式、お父さんは貸衣装室に行ってモーニングの試着をして!と言われるがまま何の疑いも持たずモーニングコートを着てしまうだろう。

何事もルールがあるから面白い、フォーマルだってそうなのだ。
フォーマルというとなんだか堅苦しいイメージはないだろうか?
あまり着る機会はないけれど、どうやらタキシードを着る場に行くためには決まりがあるらしい、なんだか難しそうだ、という印象はないだろうか?

出石尚三 講義 松はじめ

カジノで一発当てるわけではないから、まずはルールさえわかれば大丈夫。
そして、9回裏2アウト満塁、一発逆転の可能性、ピッチャーから繰り出される次の1球を息を飲んで見守る理由は、野球で決まっているルールが、3つのアウトで攻守が変わる、9回で1試合、とルールが定められているからなのだ。
フォーマルも一緒で、実はルールがあるから楽しい。
そしてそのルールは意外なところから生まれていた!

19世紀の平日の服を、21世紀の今、特別な日に装ったら素敵!と映る。
どうやって楽しんだら良いのだろう?

ということで、本日は銀座ファッションアカデミア 出石尚三講師の語る、フォーマルは一体なぜ時間によって服装が変わるのか?をお届けしたい。

・・フォーマルのルーツ

出石尚三先生の講義より

何事もルールがあるから面白いのです。
例えばゴルフ。
スコットランドで、羊飼いが石ころを穴に入れて遊んでいたのがはじまりというけれど、実はその後ゴルフ禁止令が何度もでています。
そのくらい面白かったということなのですね。

何故禁止令が出たのかというと、当時、ゴルフが面白いから弓矢の練習をさぼる。
弓矢の練習をしなさいということなんですけれど、ゴルフは何故面白いかというと、ルールができたから。ルールがあるから面白い!というところにたどり着かないと、フォーマルウエアは面白くないのです。

 

■一番のポイントは、時代を超えるってこと。

フォーマルの掟

一番のポイントは、時代を超えるということなのです。

トランスベスティズム(transvestism)という用語があります。 衣服を超える主義、これは心理学者がつかう用語でした。
女性が男性の服を着る、男性が女性の服を着る、ということについて、性を飛び越える病だと、衣装を取り違えることを昔の心理学者が言ったのです。

ジョルジュ・サンド(フランスの女流作家、ショパンとの交際でも有名な男前な女性である)が有名で、女性だけれど、着るもの上から下まで男の服でパリの街を闊歩していました。

さて、これをフォーマルウエアにも応用できるのではないか?と思うのです。
フォーマルウエアとは、時代を超えるための服である!

何が一番大事かというと、今の時代の服を着ているのではないよ、ということ。
これからルールを色々お話しします。
でもそのなかでも一番のポイントは、時代を取り違えることなのです。

 

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タキシードのカフリンクス

なんと、フォーマルの服装で大切なこと、一番重要なこと、それが、時代を取り違えてその当時の服装をするという形で、時を超えることなのだ。

考えてみたならば19世紀ヨーロッパという、映画や小説に登場する世界があったわけであり、その当時の貴族は今私たちがフォーマルだ!と考えている服を着て普段過ごしていたのだ。
お屋敷には200人以上の召使いがいて、大きなボウルルームでは夜な夜なパーティーが開催される。

そのような夜会には当然みな燕尾服を着て集まり、ダンスの曲目の書かれたカードが配られる。曲の横には空欄があり記入していく仕組みで、誰と、どの曲を踊ったのか?がわかるのだそうだ。

16歳になった年には嬢王様に謁見という一大イベントがある、美しいパラソルが必須であった時代の、その当時の服を装いを考えていくと、ウェストコートの色は変えるべきかな?今日は昼間の結婚記念パーティーだから、日中の自然光に生える小物は何かな?と次々と回答が得られるということなのだ。

・・・・・
結婚式の服装 フォーマルとは

たとえば結婚式に参加しますよね、フロックコートを着るとします。

それは、いつもの私ではありませんよ。
あらたまっていますよ。そういう気持ちを服に例えて表現しているわけです。
人間の文化生活において、あらたまるということが必要なのです。
その一番わかりやすいことが着ることで、フォーマルウエアなのではないか、と思います。

ルールは一回覚えてしまうと、知れば知るほど楽しみになります。
まずは、時を超える服、時代を超える服、ということが一番大切です。


時を超える服、例えばその時代の映画を観る、すると服装も細かく描写されている。
時代を超え、服は存在している、それを装うのだ。
さて、話は本題であるなぜフォーマルの服装は時間によって変わるのか?に入っていく。

ここでは、アフターシックスという言葉が重要だ。
ちなみにこれからご紹介するアフターシックスは当然ながらディズニーランドに18時以降リーズナブルに入場できるチケットではないのであしからず。
・・

タキシード

もう一つ、朝、昼、晩の(服の)違いがあります。
モーニングってありますね、それからイブニング。
どうして違うのでしょうか?

実際にアフターシックスという言葉があります。
(アメリカにアフターシックスというタキシード屋がありましたが)

これは6時以降ということではないのです。
19世紀の上流階級の人は、朝、昼、晩、服を着替えました。その、19世紀の真似をしていますよ、ということなのです。

今はそんなことないけれど、当時はモーニングルームというのがあり、朝起きてお茶を飲むための服がありました。それが終わると、スポーツに行きますので、馬に乗ります。だから乗馬服に着替えます。

今度は、昼ごはん、さらには夜ごはんですよ、となると、家のなかですべて着替えて、ごはんを食べました。
19世紀の貴族階級の真似をどこかでしないといけない。しかしこれは理にかなっているのです。

非常にわかりやすい話をしますと、ネクタイピン。

そういえばネクタイピンを知らないセレクトショップ店員さんがいますね。
ネクタイピンとはタイタック、タイクリップとタイバーも違います、それらは2ピーススーツ専用なのです。

スリーピースを着た時にするのは、ネクタイピンなのです。
どうしてかというと、ウエストコートを着ないとネクタイが留まらないでしょう。
だからウエストコートの替わりにタイピンをするということはありません。
フォーマルウエアで絶対必要なのは、角度直角の15センチくらい。

 

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白蝶貝のカフリンクス

パールが昼のものです。
サファイアやルビーが夜です。

夜間照明に映えるのか、自然照明に映えるのかなのです。

スパンコールも夜の服ですが、ピカピカ光る服は夜のものなのです。
このように、アフターシックスは、見方によっては非常に理にかなっているのです。
光の加減を考えて昼・夜があるんだなと。

 

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表参道

ちょうどこの原稿をランチタイムにカフェで書いていたところ、目の前をパテントレザー(エナメル)の外羽根の靴を履いたミニスカートの女性が横切った。オープンテラスから自然光がいっぱいに差し込む昼下がりのカフェに、エナメルの光沢感は似つかわしくないな、とふと思った。

 

昼には昼の自然光で美しく見えるアイテムを装い、夜会には夜の照明で美しく見えるアイテムに変えるのだ。こうした、考えてみるととても自然で合理的な考えのもと、フォーマルをはじめとするファッションが成り立っているのだ。

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パテントレザーのオペラパンプス

エナメルレザー(パテントレザー)も必ずアフターシックスです。
タキシードを着る場合も、この靴は単なる光る靴ではなくて、イブニングドレスの裾を汚さないため。
(靴墨をつけないタイプだから)

このように、着替えれば着替えるほどフォーマルであります。

出石尚三 松はじめ
(銀座ファッションアカデミア主催の内田さんと出石先生とお写真を撮らせていただいた)

洋服を着る文化はすっかり当たり前になった日本。
しかし何事も基礎を知り学ぶことは重要だ。
フォーマルを考える上で、まずは時代を超えた服を着るということを軸に、ルールを学んでいくと普段の服装ですらもっと面白くなるに違いない。

なぜフォーマルの服は時間によって変わるのか。
それは、19世紀の服であり、当時は何度も着替えたから。
そして自然光、夜間照明、それぞれに美しい装いをしていた。
それは自分のためだったのだろうか。
生まれた家柄によって、そうすべきであったし、そうすることが求められたこともあるかもしれないが、何よりもその日に会う方のことを考え、その場を考え、相応しい服装を心掛けたはず。

出石先生はこの講義の最後に、フレンチを美味しく食する方法というものを教えてくださった。
《シェフのために、良い服を着ていく。》
そうすれば一流のシェフは、私のためにこのような装いで来てくれたのか、とふるまう料理にも力が入る。
だからフランスで食するフレンチは美味しい、と。

私たちは洋服を、誰のために装うのだろう。

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2017年7月10日
TPO | フォーマルシーン

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