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明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術

タキシードのカマーバンドとは?知るだけで着こなしが変わるフォーマル知識

Ginza Fashion Academia
「せっかくというわけではないのですが、メスジャケットを着てまいりました。
本日はまずメスジャケットの話をします。」

とはGinza Fashion Academiaの主任講師を務める出石尚三先生。
本日も銀座での講義(Ginza Fashion Academia フォーマル:第二回)から、メスジャケットについてお伝えしたい。
そもそもメスジャケットという服はなかなか知られていないのだと思う。
これが(出石先生が着用していらした)本物のメスジャケット。

メスジャケットと軍艦の爆発事件?


話は遡り、その昔、メイン号というアメリカ海軍の軍艦が爆発する事故があった。
それはキューバのバハマ港に停泊していたアメリカ海軍のメイン号が何者かによって爆破されてしまったのだ。
この爆破の原因はどうも不明らしいのだが、現在はアメリカ海軍がボイラーの爆発、と結論付けているそうだ。しかし、当時のメディアは違った。

こう放ったのである!《これはスペインの仕業だ!》と。

と、それがメスジャケット、さらにはカマーバンドとどのように関わっているというのだろう?
早速出石先生にお伺いしてみた。メスジャケット 誕生秘話

戦争が始まって、洋服がある変化を・・・

(軍艦の爆発は)当時としてはスペインの謀略だ!ということになりまして、(新聞が)人目を引くためにあることないことを書いたわけであります。ジャーナリズムコードもなくて、好きなことを好きなように書いたのです。

レミントンという戦争の絵も描いていた画家に、戦場の絵を描いてほしいと依頼し、現地に行ったレミントンが、《戦争などやっていません・・・》と電報打ったところ、良いから描くのだ!となったというエピソードがあります。

1898年2月15日、メイン号というアメリカの軍艦事故で286人が亡くなってしまったのです。
それを新聞がスペイン憎し!と、どんどん書いたので、結局、宣戦布告する。

5月でしょうか。
煽りに煽って、戦争が始まる。

アメリカのイエロージャーナリズムが扇動していた時代のできごと。

こうして闘いが始まってしまうのだが、時期としてはとても暑い時期に突入する。しかも、、、

海軍とメスジャケット

暑い夏の軍艦、艦長のある行動!

ところでエアコンがないのですよ。
夏でしょう。軍艦の中といえども、ディナーは燕尾服を着用して食べるのです。
(暑いので)非公式に、その軍艦の艦長が勝手に(燕尾服の)尻尾を切り落としたのです。
よろしい!この暑い時に、長いイブニングでは暑くてかなわない!

 

・・・
オーダースーツ テーラー

なんと、暑い夏の軍艦、それでも燕尾服をきちんと着ていたのだ。艦長の独断の暑さ対策として切り落とした燕尾服、これがメスジャケットなのだそうだ。

燕尾服
こちらが燕尾服。テイルコートともいうが、テイル、まさに燕の尾のように美しい尻尾が特徴の服。
夜会の服として着る服で、ドレスコード:ホワイトタイと指定があった場合に装う服である。
実際にこの服を指定されたパーティーであるならば、畏まった場だといえる。

ドレスコードについてはこちら


https://bottone.jp/bc/blog/bottone-ceo/11836.html

さて、その正装の燕尾服、その尻尾を切った服。
最初は非公式だったそうだが、この後、正式な軍服になる。
メスジャケットのこのメス(MESS)、アメリカのスラングなのだそうで、上品な言葉ではなく、要するにメシという意味なのだそうだ。

・・・
メスジャケット

飯を喰う服!

 直訳すると飯喰う時の服ということになるのです。

これは、盛夏専用。

冬は着ません。

ホワイトメスジャケットという言葉がありまして、白いコットン、リネンなど、デザインはこれとまったく同じで、(燕尾服の)テイルを落としてだけあります。

夏ならばディナージャケットよりもメスジャケットの方が上なのですよ。

ホワイトディナージャケットともいいますけれど、こちらの方が燕尾服から派生しているわけですから、格式からいえば、ややこちらの方が高い。

着こなし方としては、ブラックタイです。ホワイトシャツ、カマーバンド。

 

・・・・
結婚式タキシードのカマーバンド

タキシードのカマーバンドは一体なぜ生まれたか

ということで講義はカマーバンドの誕生ストーリーへ。
現代であればタキシード(ディナージャケット)にはウェストコートでも良いが、カマーバンドでも良いことになっている。

基本には何も巻かないというのはよろしくない。
フロント・ボタンを留めた時に、Vゾーンがシュッと下に降り、足がすらりと見えるカマーバンド。
ブレイシーズ(サスペンダー)の留め具を隠す、カマーバンド。
実は、カマーバンドはひょんなことからインドで生まれたのだ。

・・・・
カマーバンド

カマーバンドも夏用という概念!

カマーバンドというのも、もともとは盛夏、夏用なのです。
今日私は、インチキをしてきました(会場:笑)

簡単なのです、スカーフがあれば良いのです。

こういうスカーフのようなものを、適当におりましてね、こうやって巻けば良いのです。
男の帯と一緒で、前で結んで後ろに回せば良いのです。念のために安全ピンでとめておけば、手作りカマーバンド。

 スマートフォンのシッター音が会場に溢れた。

しかし、この簡易カマーバンド案、実はあるイギリス人の発想だったのだ。

それも、照りつける太陽、灼熱の暑さから。

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暑くとも装う英国人、思いついたのは・・・

もともとのカマーバンドはこうやってできたのですよ。
1880年代のインドはイギリスの領土でしたから、軍人が派遣されていくのですね。
ですが、暑い、インドの夏は。

だけどイギリス文化を世界中に広めた人ですからね、(イギリス人はそのようなインドのような場でもきちんとした服装をしている。)

しかし暑い。

ところでインドの現地人は、カマーって腹帯をしているのです。
これは涼しそうじゃないか!と現地に住んでいるイギリス人が、フォーマルなウエストコートがわりに着たのです。

 ということで、カマーはインド語、バンドは英語なのだ。しかしこれは本国では絶対にタブーだったのだそう。
植民地なら良いですよ、と。

企業に置き換えても、まあ現地法人ならば事情もわからぬではないし、現地のルールもあるだろう。あくまでもうちの企業風土は守れ、でも特例だぞ!と、そんな略式を本部としては暗黙の了解のように受け入れるかもしれない。

でも後に、そんな簡易バージョンを見た時に、なんだかそれはクールだね!と思い真似をする輩はきっといたのだろう。階級のある人間がカマーバンドを巻いていて、それが初めて見るスタイルで、まるでモードファッションのように斬新に映るのだ。例えばハリウッドスターが着たベルベットのジャケットにデニムという不思議なスタイルが以前に流行ったように。

 

さて、このようにカマーバンド自体はインドと英国のミックスで生まれ、今となってはフォーマルショップでは、これが必要ですよ、とカマーバンドを推薦されるわけだが、深く考えて見ればヒダが付いているというのにも意味があるのだ。

・・・・

タキシードのカマーバンド


スカーフがあれば、自分でカマーバンドは作れるのです。
これは乱暴でも何でもない、なぜならば、ヒダをよせているでしょう?
これは巻いたヒダなのです。

(フォーマルを着るということについて)
 僕がなんども言いたいのは、実際になかったことを復元するのはNoですが、実際にあったことを復元するのはOKなのです。

ルールの中で、自由に楽しむのはどうでしょう?

こうでなければならない、ルールにがんじがらめになっていないだろうか?

ルールは大切だ。だけれど、ルールはなぜ生まれたのだろう。ルールの本質を知る、だからどこまで遊んで良いのだろうか、とか、自分のスタイルというものができるのではないだろうか。

 

講義の後半で述べられるけれど、白いメスジャケットは、涼しいのだろうか?

実際に着てみればわかるが、炎天下で着るとそれは涼しい、快適だ、といえるものではない。ある程度しっかりした目付けのその服は、それでも暑い。

では、誰が涼しいのだろうか?

そう、周囲の、装いを見た人が涼しく感じるのだ。つまり、フォーマルも含むファッションとは、一体誰のために装うのだろうか?装うとは敬意であり、贈り物であり、メッセージではないだろうか。

 


インド カマーバンド
さて、今日は私もジャケットとリネンのウエストコートを着ていったのだが、なるほど!こんな暑い日ならばスカーフ代用カマーバンドという手もあったのだ。カマーバンドの誕生には、英国植民地暑さ対策と、見た目は品よくどこまで崩せるか?のちょうど良いところ取りといえないだろうか?

まあ、それにしても、ターバン、カマー、インドというと巻くスタイルをイメージするが、暑い地域でもきちんとした服装を欠かさなかった様子が伝わってくるのだ。


当時植民地限定ではあるものの、腹巻のようにウエストコートを簡略化したスタイルは、なんと現代のタキシードでは当たり前の光景である。

出石先生も仰るが、男の服は全て論理で成り立っており、意味がある。
こうした経緯を遡れば、装うことがもっと楽しくなるのではないだろうか?

それにしても、フォーマルの服装、考え方は深い。繰り返しになるけれど、服は、誰のために着るのだろうか。

格好良く見られるため、それもあるだろう。

除け者にされたくない、かもしれない。制服がそうだ。

ではおめでたい席では?

本講義では、フランスの喪服はどうだったのだろう?

どうしてスポーツウエアは白なのか?といったところを論理的に刻んでいく。
だから私も現代日本の、よくわからないけれど袖が二人あふので着ています、という状況に変革を起こし、
なるほど、だから袖が二人あったのか!ならばこれだ、と間違いないと自信をもって、かつ格好良い服装をお伝えしていきたい。


引き続き、雑誌には載っていない本物の情報 Ginza Fashion Academiaからフォーマルの知識をお届けしていこうと思う。

さて、明日は何着よう?

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2017年7月22日
スーツの着こなし術 | ジェントルマンの知識

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