ネクタイの元 クラバットの進化
松はじめです。
ネクタイのルーツと進化を追う旅、前回はフォーカーレという巻物が、ラフになって、クラバットが誕生したところをお伝えしました。
前回の記事はこちら
いよいよネクタイのようになってくるのでしょうか?
ボウタイ(蝶ネクタイ)はいつ登場するのでしょう?
前回の続きで、1600年台にタイムスリップしてネクタイの原型、クラバットの変化を捉えたいと思います。
今日も銀座ファッションアカデミアの出石尚三先生にお伺いしました。
ネクタイはどうやって生まれたのか?について、前回からお伝えしてきた。
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ネクタイはどうやって生まれたか、、それは実はこうです!と、そんな簡単なものではないのですね。前回ご説明したフォーカーレという首の巻物と、クラバットというネクタイの元を入れますと、実に2000年の歴史があるのがネクタイなんです。
前回から続き、クラバットがどう変化していったか?追ってみましょう。
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日記に残っているクラバット
17世紀中庸、ネクタイの原型といもいうべきこの首に巻いているクラバットは、フランスからイギリスに伝わる。
もともとはフランス語で、cravateという綴り。
ドーバー海峡を渡ってイギリスに渡るうちに、Eが落ちた・・cravat。
イギリスでもクラバットと呼ばれていた証拠は、イギリスの文献、サミュエル・ピープスの日記の1666年1月27日に記載がある。
六時ごろ起床。主日。そしてビロードのコートに、無地のクラヴァットをして、八時ごろわたしのために用意されていた貸し馬車に乗り、書類を全部もって、ブラウンカー卿のところへ。
サミュエル・ピープスの日記より抜粋
これは日記だが、暗号で書かれていた。サミュエル・ピープスは上役の悪口や愛人の話まで書いていて、読まれては困る内容もあるから、全て暗号で書かれていた。20世紀に入るまで解読されていなかったのだが、オックスフォードの学生が偶然読み解いて話題になった。
貸し馬車、というのが渋い。今の時代でいうタクシーのようなもの。それでブラウンカー卿のところに向かうのだ。
8日の日記では、フェラーズ大尉の婦人が、洒落たクラバットを作ってくれたということがわかる。
(八日
今夜フェラーズ大尉婦人が買って、仕立ててくれたカラーが届いていたので、家へもって帰ったーたいへ洒落たものだ。値はおよそ三ポンドーもう一つ買ってもらうために、彼にも三ポンド渡した。
サミュエル・ピープスの日記より抜粋
十二日ー主日。フェラーズ大尉のレースつきのカラーでおめかしをした。わたし自身の新調のスカラップはつけたくない。
サミュエル・ピープスの日記より抜粋
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出石尚三先生曰く、横幅1mくらい、幅30cmくらいの生地で、大尉の奥様が作ってくれたのだと。
それで、仕上がりを見ると、先端の処理の仕方がホタテ貝のような始末(スカラップ)だった。私にはしょっと派手だから、これはつけられないなあ、と書いているのです。
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二十六日ー主日。起床。新しいスカラップをつけ、たいへんおめかしをした。
サミュエル・ピープスの日記より抜粋
少し派手・・と思ってみたものの、2週間くらい経過してみると、あぁこれはこれで良いな!と気が変わったのだろうか。
1680年ごろのイギリスの上流階級の服装。クラバットはこういう風だった。この図はレース。
こちらは彫刻。実際に存在したクラバットがあまりにも見事だったので、掘ったというもの。
フランスはレースはベルギーから輸入していた。
1680年、狩りをする少年。上流階級の12、3歳。少年の服装も、高価なクラバットを締めていた。
クラバットの結び方がシンプルだった理由
イギリス国王 ヨーク公ジェイムズ。
シンプルなクラバットも、布が非常に高価だ。
どうして17世紀に、結び方という話が出てこないのか?ファブリック自体がレースなど非常に高級素材を使っていたということなんですね。一様にどんな上流階級も、王様といえども結び方自体はシンプルでした。それが何百年の間に変わっていくわけだ。
ミシェル・ド・ラバールと演奏家達がこれから演奏をするシーン。みな結んで垂らしてクラバットを下げている。よく見るとフリンジがついている。
トマス・ゲインズバラ作のアンドリュー夫妻。クラバットを巻き、かつらの上に三角帽をかぶっている。
貴婦人もクラバットを巻いている。スタンケルク巻きをしている。
1790年代に入って結び方に変化が
1790年ごろになると、素材がシンプルになってきて、装飾もない。ここから少し結び方に変化が。
前から後ろへ回して、最後は前で結んだ。
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シンプルになって、クラバットの巻き方も高くなったんです。伴ってシャツの土台も高くなります。
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当時はギロチンで、貴族が処刑された。貴族もクラバットを巻いていたし、追う議員たちもクラバットだった。
ルイ16世を処刑したダントンも。
1804年12月2日に皇帝になったナポレオンボナパルトの戴冠式。
異例づくめで、王冠も従来とは違う純金で作らせ、形は従来の丸ではなく、王冠は古代ローマに規範をとりオリーブの葉。ナポレオンは年間4万フランを服飾費に使っていたそうだ。
またコートはアーミン(イタチ科の動物の皮から作られる)で、ドットのように見えるところは、尾っぽ。かなりの高額であることは想像に難くない。
白いクラバットの土台に、純金の糸で、房を作らせた。
少年のころのベートーベンは、ごく普通の庶民の家から生まれた天才音楽少年だった。
ナポレオンのために曲を作っていたが、ナポレオンが即位して、あまりにも大胆な政治をしたため、英雄という名前に曲名を変えたという。シンプルなクラバットを巻いている。
そして大人になってもクラバットを巻いている。当時の感覚としては、ネクタイを緩めているように、少し緩めに巻いている。
出石尚三先生曰く、コーヒーをいれるのにうるさく、女中がいつかなかったという。1杯のコーヒーに、粒を60粒を数えて引く、などというこだわりがあったという。
当時はブリーチーズと呼んだ、初期のパンタローンズ。右はボーブランメルがしていたような服装。
イギリスの当時の紳士。
さて、こうしてクラバットの話をするうえで、欠くことができないのが・・ボーブランメルである。
次回、洋服をシンプルに変えた洒落者 ボーブランメル
シルクの服を、ウールに変えた紳士。完璧なる身だしなみは、シンプルなこと、と鮮やかな服ではなくウールのシンプルな服に美を見出したブランメルについて、次回お伝えしたい。
さて、明日は何着よう?
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ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2018年10月28日
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