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明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術

ディレクターズスーツは礼服なのか?スリーピーススーツも手抜きだった!

ディレクターズスーツのオーダー

本日も出石尚三先生の講義、銀座ファッションアカデミア(GINZA FASHON ACADEMIA)の内容から、ディレクターズスーツについて考えてみたい。

 
ディレクターズスーツというのは黒いショート丈ジャケット、グレーのウェストコート、ストライプのトラウザーズというスタイルで、日本フォーマル協会の定めるところでは午前・日中の準礼装となっている。
 
簡単に考えたならば、モーニングコートの丈を切って短くしたようなスタイルだ。
そもそもが正礼装、準礼装、略礼装という3つの枠組みがあるのが日本フォーマル協会の定義なのだが、西洋にはこのような考えはない。さて、一体このディレクターズスーツとは何者なのだろう?
 
出石先生にお伺いしてみた。
 

イギリス 服装

 
ディレクターズスーツというのはどんなものだろう。
これは申し上げにくいのですが、和製英語なのです。
英語にはありません。
じゃあ、イギリスにないの?というとあるのです。
ブラックジャケットアンドストライプスラウザーズというのがありますが、それでは英国人は何とこれを呼ぶのでしょう?
ベストノアール、とフランス語で言うのです。

イギリス人がイギリス国内でどうしてフランス語?と思うのだけれど、日常の一般会話のなかでは、フランス語で黒い服を意味する、ベストノワールというのです。

イギリス 服装
???
ディレクターズスーツという用語自体が和製英語、
これは理解できる。
イギリスでの名称はブラックジャケットアンドストライプトラウザーズ、黒い上着と縞ズボンというそのままではあるがそれは理解できる。
ところがフランス語の黒い服、という名称が日常会話では出てくる。
これは一体?
ロンドン 服装
ちょっと一段下に見ているのでしょうね。
会社で考えますと、19世紀後半のシティの通勤のシーンで、社長はフロックコートやモーニングコートを着て出社します。ベストノアール(ディレクターズスーツ)は着ません。
そして社員は通勤着、ごく普段の通勤着。
現代でいえばダークスーツを着て出勤するように、ベストノアール(黒いスーツ)の格好をして出社しました。
エドワード7世が皇太子でありました1990年頃に、エドワード7世の知り合いの友人が、俺は今度、ロンドンの画廊のオープニングパーティに行くのだけど、何を着て行ったら良いかな?と聞きました。
それならば、黒のジャケットに、ストライプのトラウザーズは?

こうしてその服装でパーティに行き、これも良いね、と流行った。

ですから、略式の昼間の服なのです。
(ディレクターズスーツは)貴族そのものは着ません。
使用人がそういう人を着ました。
イギリス 服装
ディレクターズスーツ、そもそもがそれは和製英語というわけだが、英国ではベストノアールと会話の中に出てくるという。
そしてそれは、要するにあぁ、あの黒い服でしょう・・というような見方なのだ。
服が好きな人が、クールビズねぇ、というようなトーンに近いのかもしれない。
良いですか、もともとシングル3つボタンが原型です。
ノッチもあれば、ピークもあったのでしょうけれど、ウエストコートを変えます。
共地のウエストコートというのはは略式なのですね。
といいますのも、1848年頃、ラウンジジャケットというものができました。
1860年頃からは、面倒だから同じ生地で仕立てようと・・・

ネイビーのオーダースーツ

生地を揃える(スリーピーススーツのようなスタイル)というのは手抜きなのです。
 
 
それから(ディレクターズスーツは)1つボタン!と決めなくとも良いではないですか。
ボタンの数が多いということはクラシック。
ボタンの数が少ないということはモダン。
 
タキシードだって、もともとは2つボタンでした。
なぜ省略したのかというと、部屋着だったからなのです。
部屋着だから省略していったのです。
 
 
そもそもディレクターズスーツってのは、スーツじゃない、言葉も矛盾している。
純然たる和製英語です。
もしイギリス人を気取りたいのなら、日常的な会話ではありますけれど、ベストノワールだと呼びましょう(笑)。
 
 

ディレクターズスーツ

 
確かに、ディレクターズスーツ、スーツと名前が付いているけれど、スーツとはスートの複数形である。
スイートルームがあるホテルというのは珍しくはないけれど、スイートルームのスイートとは、ベッドルームとダイニングがあり、くっついて一揃いという意味だそうだ。
 
だから靴もシューの複数形がシューズであるように、上下で一揃いの服ということでスートの複数形がスーツ。
そのように学んだのがそもそも出石先生の著書 スーツの百科事典である。
 
だけれども確かにディレクターズスーツといえど、どこも揃っていない。
ジャケットとトラウザーズだけでも別々の生地で誂えるので、スーツとはいえないということを考えると、なるほど!と思う。
 
3つボタンのスーツより、1つボタンのタキシードの方がエレガントでパーティーに向いている、だからボタンは少ない方がフォーマルなのでしょう!と、そんなことはないのだ。
ボタンが多い方がエレガントであり、以前ご紹介した軽乗馬服のようなハッキングジャケットも4つボタンである。

そして着丈が短いトレンドのような風潮もあるが、歴史を辿ると長い着丈の方が格が上であったということも窺える。

ということで、フォーマルの服、世界はなかなか奥深い。
これからも素材の知識と並んで、フォーマルの知識も共有していきたいと思う。

早速、もし周囲の方で結婚式の列席などでディレクターズスーツを着用してる方を見かけたら、フランス語の発音で囁いてみよう、ベストノワールと。

 
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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2017年7月15日
フォーマル | オーダータキシードの歴史

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