《紳士の配慮》タキシードに合わせる靴はパテントレザーである理由
タキシードのエナメル靴。
エナメルというと、ピカピカ光ったレザーで、最近では靴ばかりではなく鞄や小物でもエナメルのものを見かける。これは革の表面にエナメルをのせてコーディング加工することで完成するレザーで、パテントレザーとも呼ぶ。
そもそもなぜパテントレザーと呼ぶのかというと、パテント=特許ということで、簡単にいえば特許取得した革なのだ。なんと1819年にアメリカで製造が開始されており、ニュージャージー州の発明家、セス・ボイデンの発明といわれる。しかしなんとボイデンは特許をとっていないのだった。というのもボイデンは1年前の1818年に、地元の貨車製造業者からドイツ製パテントレザーを受け取り、それを元に改良したのだった。
パテントレザーという用語自体は1793年の英国の記事、The BeeやLiterary Weekly Intelligencerに記載されているというから、随分古くからあったのだ。だがこうして彼はヨーロッパのパテントレザーを、亜麻仁油などでコーティングして、非常に光沢があって水に強いパテントレザーを完成させたのだ。
耐水性にも優れていて、雨なんかも弾いてくれる優れもの、なによりもドレッシーだ。このエナメル、男性はエナメルの靴を履くシーンがある。タキシードと燕尾服を装うときだ。
耐久性の面から履くのではなく、見た目の美しさも、夜間照明に映える点からもピッタリだ。だが実はそれだけではない。
一番のところは、レディーのドレスの裾に靴墨をつけないための配慮なのだ。
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エナメルレザー、パテントレザー、必ずアフターシックス。
タキシードでも良い。
そういう風な場合に。
これは単なる光るのではなくて、イブニングドレスの裾を汚さないため。
女性とダンスをして、フルレングスのドレスを汚さない。
銀座ファッションアカデミアより 講師:出石尚三
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なんだか女性物?と思った方もいると思うのだが歴とした紳士の靴。
この他にもフォーマルにおいては色々な靴が存在していた。
靴墨使わなきゃいいでしょう?
ベルベットでボウルシューズ(ダンス用の靴)作ったことがあるけど、ソウル薄いでしょう?
部屋で履く室内履き、薄くて良いのです。
そう考えれば、いろんなアイデアが出てきます。
もっというならば、クラシックはみんなブーツ。
19世紀は、ブーツがシューズになった時代です。昔はフォーマルでもドレスアップでも、エナメルのブーツがありました。
シューズというのは、19世紀の人からすればハイカラ。ブーツがクラシックなのです。
銀座ファッションアカデミアより 講師:出石尚三
考えてみたならばフォーマルの服は乗馬とともに進化してきている。
乗馬服が訪問着になり、いつしか公式な服になる。
乗馬といえばブーツなのだ。
ということで、時にはパテントレザーのブーツでレストランに行ってみようか。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年9月26日
フォーマル | オーダータキシードの歴史
タグ:フォーマル, 服飾史, タキシード, レザー, 靴
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