日本は洋服も春夏・秋冬よりもっと細かく分けた方が楽しい
松はじめです。
洋服のコレクションは、春夏と秋冬に分けられることが多いです。
これは、もともとパリコレなどのコレクションが年2回だから。
例えば今年、パリコレで春夏(スプリングサマー)のコレクションがあったとする。
それが店に並ぶのは、次の春夏になる。
こうやってこれまではメゾンブランドはコレクションで次のシーズンの服を発表するわけです。
実際にモデルが着て、動く。
あぁ、この服は、この素材は着るとこうなるのか!
そういうことがわかって、実際にバイヤーが動く。
服はマネキンにかかった状態では伝わらないというわけです。
それで実際には、コレクションに出てくる服が売れるか?というと必ずしもそうではありません。
それはそうですよね、
どこで着るの?というようなアヴァンギャルドな服だってたくさんあるわけです。
あくまでもブランドコンセプトの発表の場であり、ブランディングでもあるでしょう。
パリコレの服を作って、発表するだけでは1円も産みません。
ところがこうしてブランドとして確立すると、その廉価版を作っても結構売れる。
いや、廉価版の方が売れるでしょう。
パリコレのあのブランドの、もうちょっと日常着られる服。
それも高いけど手が届く価格です。
実際のところ、私の知人でミラノで修行していた美容師がいます。
今は表参道で美容院のオーナー兼技術者をやっている方。
その方がミラノで、とても素敵な帽子をかぶっているマダムに出会った。
あまりにも素敵な帽子だったので、
「素敵な帽子ですね!その帽子、どちらの帽子なんですか?」と聞いてみたそうです。
ちなみにパリやミラノではこういうことはよくあるようで。
見知らぬ人に、素敵!と話しかける。
良い服だったら、素敵、どこに売ってるの?と聞く。
(私は時々日本でそんなことをやるのだが、え!??という顔で見られるのだった)
さて、そのマダムであるが、どこの帽子だったか?
マダムは言った。
「これは、シャネル。うちに着てくれるの。」
シャネルの帽子は日本円で300万円だったそうです。
なんでも、マダムはシャネルのお店には行かないという。
シャネルのデザイナーは自宅に行き、マダムの帽子を作るのです。
つまりオートクチュール。
実際にはメゾンブランドというのは既製品であるが、元をたどればオートクチュール(オーダーメイド)です。
パリコレのように、来年のスタイルを提案!という文化が変化しつつあります。
それはファストファッション。
スペインのザラは、その時流行った服を、必要な量作る。
すぐに世界に届け、売り切る。
まさにトヨタ自動車のかんばん方式で、売れる服を、必要に応じて作って売る。
在庫リスクは少ないから、価格も安いのです。
もちろん縫製コストも落とすが、1年着る!というような服だからそれで問題ないのです。
H&M、ギャップ、そしてユニクロといったファストファッションがあっという間に世界を折檻。
しかも場合によってはパリコレを見て、すぐ真似て服を出すこともできる。
パリコレで発表して1年後に買える服と、すぐ買える服。
もちろんファストファッションにはデザイン性はあっても、そこに込められた意味や文化は薄いでしょう。
とはいえ若い人を中心に、こうしたファストファッションが浸透しているのも事実です。
こうした流れは変えられないと思います。
ですが、そもそもコレクションが年2回である必要はあるのでしょうか?
日本には四季があります。
ファストファッションがすぐに季節に応じた服を提供する、というのは良いことだと思います。
春夏と括らずに、春は春の服を着たい。
夏は、暑さ対策を兼ねて、でも洒落た服がいい。
秋は、冬ほど着込まないけど、春よりは厚さが欲しい、色使いも違います。
冬は、着込んで、脱ぐ楽しみ。コートやストールでラッピングして、脱ぐと素敵なスーツ。
と、それぞれあっても良いのではないでしょうか?
もっといえば、梅雨には梅雨の服があります。
撥水などの機能的なものは、最近は開発が進んでいる。
レインコートや傘というアイテムも楽しいです。
冬から春の、寒いけど春服を着たい!という節目の服があっても面白い。
春夏と秋冬、年2回に縛られず、気候や気分に合わせてたくさんの服を楽しんだらどうでしょう?
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
おすすめ記事
ボットーネでオーダースーツを作った結果!をお客様に率直に聞いてみたW様のご職業は、弁護士なのですよね? W様:はい、弁護士をやっています。 普段は毎日…
人はなぜスーツを着るの?答えは落花生にあった!出石尚三先生に聞く、スーツ本日は銀座ファッションアカデミアという洋服屋の勉強会だが、専門的なお話しではなくて、…
なぜジェームスボンドは007 カジノロワイヤルでタキシードを着るのか? 私の先生 服飾評論家 出石尚三先生は以前、モナコのカジノを見学したことがあるそう…
宅配?保管?上質?タイプ別 おすすめクリーニング店4選早い!便利なクリーニング店 リネット 【リネット】宅配クリーニング 朝のうちにクリー…
冬に着るとおかしなスーツ?スーツ選びは織りに注意スーツを選ぶということは、一緒に素材も選んでいるわけだ。 素材にはウールとか、モヘア…
台湾、男一人旅!ジャケットとボストンと烏龍茶と台北は雨だった 台北の街に降りると、予想通り雨だった。 台北、一人旅。 フライト時間…
トレンチコートの由来は?塹壕?軍用に開発されたコートの歴史トレンチコートの歴史には防水布開発メーカーが関わっていた まず、トレンチコートには防…
NYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草の著者 安積陽子さんのトークショー安積陽子さんのNYとワシントンのアメリカ人がクスリと笑う日本人の洋服と仕草のスペシャ…
初公開!ハードボイルドの本当の語源オーダーサロン ボットーネの松 甫(まつ はじめ)です。 8月に入った。 小雨も手伝…
スーツのSUPER 〇〇’S(スーパー)表記とは?番手とは?オーダーするならスーパーいくつ?スーパーと番手は同じ? スーツの生地に、『スーパー』という表記がある場合があります。…