ブラックウォッチと正社員と
それならば、ブラック・ウォッチです。
白シャツやTシャツにも合わせられ、
オフィス・シーンに着用するが、
おじさんぽくない、以前のグレー無地とはテイストの違うパンツ、という課題に、
ブラックウォッチという解決策だ。
個人的にも大好きな柄で、
アイビーといえばブラックウォッチだ。
(今回アイビーというわけではないが)
「最近、変なことが起こっているんです」
小寺は私にそう言った。
個人的に書いているフェイス・ブックの投稿に、感銘を受けた遠い友人がメールをくれるのだそうだ。
「そうだよね!お客さんのために、だよね!」と。
長文が来たそうで、以前はさほど面識のなかった友人で、
熱い人なのだそうだ。
それで、服のことはまったくわからないけど、すごく会社に興味があるらしく、
この私のブログまで見たそうだ。
うちは、内部が、明らかに、変わった。
エネルギーが違う。
「嶋田さん、すごいですね」
入社した中之丸くんは私と小寺にそう言った。
セレクトショップにいた嶋田くんは、服のこと、お客様との距離、コーディネートなど、
これまでの経験があるから、スッと溶け込めるのだ。
しかし私は、
「中之丸さん、すごいですね」
と、嶋田くんから聞いた、中之丸くん入社2日目の時だ。
彼はメモを取らずとも脳内で整理でき、次の瞬間にアウトプットしている。
確実で、吸収力が良い。
社内が、まるで生まれ変わったようだ。
1カ月前とも違うし、3カ月前とも、そして1年前と比べて激変した。
純粋に、働いていて気持ちがいい。
クルーみなで、お客さんのために、サロンを良くしよう!
そんな空気が充満している。
カウンセリングシートは、こうしたらもっと良くなるのでは?と、改善のアイデアが飛び交い、
次の服を着せようと思ったら、もうアシスト・クルーが次の服を予測して持っている。
みな察しが良く、入社5日目のクルーは、もう30日目くらいの動きをしている。
かといってピリピリしているわけではなく、
ピリッとミリ単位の計測をする時もあれば、時にはささいな話をして、笑い声が絶えない。
それは、クライアントが来ていても、いなくても、いつも、いつも通り。
そう、隠すものも何もないし、
全員が素なのだ。
あまりに素すぎて、
「か、カッコいい組み合わせ・・」と嶋田くんはまたポロッと納品の着せつけ中に声が漏れてしまったらしい。
もちろん、そのコーディネートは私が考えたのさ、ふふっと思ったのだが。
無理に押そう、売ろうとも思っていないし、
(もともとそういう店ではない)
良いな、と思う提案をしようと、新人同士が切磋琢磨しているのだ。
10月1日、
アルバイト入社した嶋田くんは、正社員クルーとなった。
スーツコンシェルジュの道は険しい。
謙虚で、いつも感謝の心を忘れず、まっすぐ進めば大丈夫だ。
「本当に・・毎日が新鮮で、あれ?もう9時だ、という感じで。
面白いです、どんどんできることが増えて。」とキラキラした目で話してくれた。
まったく裏表がない。
何よりも彼は、服が好きだ。
昨日届いたイタリア・チェルッティの生地・サンプルを私が開くと、
「うぉぉっ」と、横から嶋田くんが現れた。
「こ、これは・・・うわぁ、これも良いですね」と止まらなくなり、
定休日に一人で出社してじっくり見ても良いですか?という問いに、
もちろん、と答える。
どんな会社で働くか、どこへ行くか、何をするか、
そんなことは二の次で、
誰・と働くか?
それが何よりも大事、出発点だよ、
とは私の師匠の言葉だが、まったくその通りだ、と痛感することになった。
今日もまっすぐ進もう。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2016年10月2日
明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術 | Other
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