リネンで過ごす夏|シワが気になる?本当の魅力は?
皆さんはリネンのジャケットをお持ちでしょうか?

リネンはシワになる?
それが良いんです。
「リネンはシワになるからちょっと・・・」と言う人がいる一方で、
「リネンのこのシワがいいんだよ!」と誇らしげに語る人がいます。
どちらが正解か?というと、どちらも正解で、何かが間違っている訳ではないから難しい。

そもそもリネンには、ウールのような伸縮性はありません。
ウール=羊の姿を想像してみてください。
モコモコっとしたウールの毛は、まっすぐ伸ばしても、すぐにくるんっと元に戻ろうとします。
人間のクセッ毛と同じですね。
だから、シワになっても、元に戻ろうとする力が働く。
この元に戻ろうとする力が「復元力」と言われるもので、同じウールでも高い生地とそうでない生地があるのはこういった部分に違いがあったりします。
良い生地のスーツは、霧吹きをかけて少しの間放っておけば、シワはスッと消えて元通りになるのです。
化学繊維ではなく、天然繊維であるウールにもともとこんな力が備わっています。

対して、リネンは、、、もうお分かりですね、伸縮性は全くありません。
リネン=麻、ではなくリネンは麻の中の一種なのですが、麻ですから植物系です。
植物の繊維ですから、茎が折れたら元には戻らないように、リネンにはそういう力がないんです。
近年はそれを嫌う人が多いのか、リネンにウールや風合いを台無しにするような化学繊維を混ぜてまでシワを目立たないようにしている生地が多く出回っています。
リネンには天然素材特有ののネップがありますが、見た目として涼し気で、生地自体にニュアンスがある為、この見た目の部分はどうしても捨てがたいのでしょうか。
SNSのショート動画でたまたま見かけたスーツ屋さんが、「今年はリネンがくる!」と言いながら、実際にはフェイクリネンの生地がおすすめだと言っていました。
スーツ屋がこれでは、世も末です笑
数年前に比べると化学繊維のクオリティも著しく向上しており、天然繊維との差も狭くなってきていると思います。
ですのでフェイクリネンそのものは全く否定しませんが、ステージが違うことは発信者側が理解していないといけませんね。

「シワは嫌、だけどリネンは着たい、雰囲気もいい!」
ということで、「シワにならないリネン」という別に便利でもなんでもない変な生地が生まれてしまったのだと思います。
化学繊維には化学繊維の良さが、天然素材には天然素材の良さがありますが、それを混ぜてもオリジナル以上に魅力をもった生地がそう簡単には生まるはずがないのです。

リネンは大きく分けて2種類テイストの生地があります。
一つ目は、ご存知アイリッシュリネンに代表される、ヘビーウエイトの生地です。
ヘビーウエイト=目付が重い生地のことを指しますが、大体春夏の生地の目付目安は220~260g程度。
ところが、夏素材のリネンなのに、400gに迫るような重さの生地が実はたくさんございます。

現実的に言うのなら、初夏、そして夏の終わり~秋にかけてが最も心地よく着用できるシーズンになりますが、このようなリネン生地で仕立てたスーツは、大きく刻み込むような深いシワが入ります。
リネン=涼しいは一部正しいですが、一部間違ってもいます。
ヘビーウェイトのリネンに涼しさは一切ありません。
見ている人は涼し気に感じてもらえると思いますが、着ている本人は汗だくになっているかもしれません笑。
でも、リネンが好きな人にとって、リネンを愛する人にとっては、これが実に趣があっていいんです。
ちなみにヘビーウェイトのリネンは、最初はバリッと硬い生地の為そのような大きな皺が入るのですが、着用していくごとに生地はどんどんソフトになっていき、それと共にシワの入りも柔らかい雰囲気に変わっていきます。
バリバリのジーンズを育てていくのに近い感覚ですね。

こうなるまで着込んでこそ、アイリッシュリネンで仕立てる意味のあるスーツです。
以前オーダーいただいたO様はこの生地の大ファンでいらっしゃり、1着目はオフホワイトのスリーピースをお仕立て。
今期はそれぞれ独立して着用することもふまえて、ネイビーにてお仕立てさせていただきました。
ネイビーのジャケットにオフホワイトのトラウザーズ、逆の組み合わせも良いですし、ベストもさまざまなコーディネートのアクセントになることでしょう。

一方で、夏らしく薄くて軽いライトウエイトの生地は、リネンシャツのように細やかな皺が入ります。
見た目にもソフトな雰囲気が伝わりますし、Tシャツ上にラフに羽織るのにも相性がいい。
よりカジュアルな印象になりますが、芯地を極力省いた軽量な仕立てをより際立たせてくれます。
夏に羽織るカーディガンとでも言いましょうか、気軽に羽織る、そんなジャケットになるでしょう。


薄手のリネンはイタリア産の生地に特に多いのですが、イギリスのクラシックな印象とは違い、色鮮やかでおしゃれな雰囲気が生地からも漂っています。
同じリネンでもこんなにラインナップが違うのかと、お国柄を感じずにはいられません。

爽やかなジャケットになりますので、リゾートウエディングやパーティ向けにお仕立てさせていただくことも多くございます。
履いたその瞬間からシワが入るような生地ですが、その頼りないところも可愛がっていただけますでしょうか。
令和の時代に適したややゆとりあるシルエットとも相性抜群です。

東京は梅雨なのかどうか良く分からない天気が続いていますが、梅雨が明けたら夏本番です。
リネンは夏の紳士の三種の神器のひとつ。
ビジネス向けというよりは、昔から寛ぎ服として愛されてきたリネンです。
心だけでもリゾートで優雅にバカンス、この窮屈な世の中に装いから寛ぎを求めてみませんか?
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。5年勤務ののち、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2024年7月12日
オーダースーツ | オーダースーツの生地
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