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オーダースーツの生地

夏スーツはモヘア

7月に入り、東京・表参道も一段とムシムシしてきました。

いよいよ、夏本番がやってきますね。

これからの暑い季節にスーツを着るのは強い意志が必要ですが、ボットーネでは毎年多くの方に夏用のスーツをお仕立てしてきました。

 

初めての夏スーツの場合、平織り・トロピカルをキーワードに、薄くてサラサラした生地を最初にご提案させていただき、次いで玄人好みの2つをご紹介しています。

ひとつは、先日のブログでもご紹介したフレスコという生地。

分厚いけれど通気性に優れ、シワにも強い非常にタフなスーツに仕上がります。

もうひとつは、今回のブログでご紹介する【モヘア混】のスーツ生地です。

昔から夏用スーツ生地の定番として親しまれており、独特の光沢感はよく「シャリ感」と表現されますね。

ウールとは異なる特性を持つ『モヘア』。

あまり聞き馴染みがないかと思いますが、一体どんな素材なのかというと・・・

モヘアってどんな素材?

まず、モヘアとはアンゴラ山羊の1種。

このアンゴラ山羊の毛をモヘアと呼びます。

ウール(羊)に対して、モヘア(ヤギ)、似ているようで全く違う動物ですね。

「もともとアンゴラ山羊はトルコが原産だが、現在はトルコ、南アフリカ、アメリカが三大産出国になっており、
中でもアメリカ(テキサス州:テキサスモヘアとして有名)は最も多くのモヘアを産出している。」

 メンズウエア素材の基礎知識 大西基之氏著より引用


出典:thermohair socks

皆さんも見たことがあるとは思いますが、これが羊です(可愛い)。

この羊の毛は、だいたい1年に2回刈ります。

(余談ですが、羊の毛は衣服になり、肉は食べることができ、羊の油はラノリンといって、口紅にすることができるという、何ともエコな動物であります。)

そして実はモヘア、ヤギの仲間なのです。

同じくヤギの仲間には、冬のコートなどに用いられる高級素材であるカシミアが挙げられます。

ちょっとマニアックな内容になりますが、繊維の分類から細分化した場合このようになります。

動物繊維>獣毛繊維>山羊毛>モヘア 

地域、気候によってもその特徴は様々です。

米国と南アで年2度毛を刈るので、長さは100~150mm、トルコでは200~250mmとなる。

 メンズウエア素材の基礎知識 大西基之氏著より引用

Kid キッドモヘアって?

スーツやジャケット地のモヘア素材には、「Kid キッドモヘア」と書かれたものがあります。

英国マーチャントであるハリソンズ・オブ・エジンバラの「CAPE KID」というコレクションから実際のバンチブックを見てみましょう。

40%のウールに、60%のキッドモヘアが混紡と表記されていますね。

Kid Mohair(キッドモヘア)について大西先生は著書の中でこう記されています。

「アンゴラ山羊は2歳を過ぎる頃から毛が太くなることもあって、
生後6か月までの子山羊の毛であるキッド・モヘアは特に珍重される。」

 メンズウエア素材の基礎知識 大西基之著より引用

若いというのはそれだけで貴重な存在になり得るのです。

例えば冬素材にアルパカがありますが、ベビーアルパカと呼ばれる幼毛は通常のアルパカに比べると非常に触り心地も良く、高級感が漂います。

キッドモヘアもそれと同じですね。

スケールって何?

せっかくなのでちょっと踏み込んでコアな話をしますと、ウールとの大きな違いのひとつとして「スケール」というのがあります。

こちらはウールの拡大図。

このウロコのような部分が「スケール」と呼ばれ、このスケールによって糸が絡まりやすくなります。

生地は経緯の糸が織り合わさっていますが、経(タテ)と緯(ヨコ)がうまく絡まらないと、スルスルっと抜けていってしまいます。(ピアノ線で生地は織れないことは想像できますよね。)

モヘアの繊維は、ウールと比べてこのスケールが少なく、滑らかである為絡まりにくいのです。

そのため、経(タテ)糸に使われることは殆どありません。

(抜けてしまうと強度的に問題がありますからね)

実は人の髪の毛にもスケールがあります。

髪の毛を1本つまんでみて、滑りの良い向きと悪い向きがあると思います(わずかだと思いますが、、、)

これはスケールがあるからで、動物の毛にも同じようになっているのです。

モヘア100%だとしても経(タテ)糸はウール

モヘアは張り腰のある糸ですから、
緯(タテ)糸にモヘアが打たれていれば、張りが横にある為、パンツのセンターラインや縫い目が、かなりのアイロン操作をしなければ、反発して浮き気味になってしまいます。

つまり、モヘア100%という場合でも、緯(ヨコ)糸がモヘア100%なのであって、経(タテ)糸にはウールが使われているのです。
ですから正確には、モヘア100という場合でも、ウール50、モヘア50となるわけです。

ということで、モヘアの特性上、緯糸に使用され、そもそも制作段階で難易度が高いということです。

天然素材ですから、こうした浮き気味というところも味、というわけですね。
それがいかにもモヘアっぽいわけですが、それを良さと見れないと、モヘアはあまり仕立て映えする素材とはいえないかもしれません。

当然アメフラシ袖付けなどは、イセコミにくいから難しいですね。 

大西基之先生より

ということで、シワになりにくく、ウールとは違った独特の素材感が魅力のモヘア。

加えて、ウールとは色の染まり方、そして光沢感がまったく違っていて、ツウな方は目で見てすぐ分かるほどの雰囲気があります。

それゆえ夏素材であることも明確。

秋冬に着用していると、「冬にモヘアか・・・」と思う方もいるかもしません。

気を付けてくださいね!

モヘア混の生地でお仕立てしたスーツ

常連のお客様。

初めての夏スーツとなりますが、せっかくなら夏に特化した生地が良いということで、思い切って最初からモヘア混の生地をご選択いただきました。

イタリアの最大手:カノニコ者のモヘア混生地は、ウールが約70%、モヘアが約30%とビジネス使いも含めて非常に丁度良いバランスで織られています。

クリースというセンターの折り目も、モヘア混らしく非常にパリッとしていますね。

(実はお客様は足に左右差がありましたので、左足は股下を0.5cmカットします)

スラックスだけをみても、ウールと全然違うことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

ネイビー・ブルー・ブラックと複数の糸で構成されている為、プレーンな色の生地と比べても実に表情豊かになります。

そしてのこのブルーがなんともモヘアっぽい!!

分かる人ならおそらく一発で「モヘアだな」となるであろう、綺麗な発色も魅力のひとつとなります。

最近はダブルブレストのオーダーも増えてきましたが、もちろんシンプルにシングルスーツ、スリーピース・スーツとしてお仕立ていただくのもOK!

ウールに比べると伸縮性は乏しいので、既製品などでモヘア混のスーツを買うことは実はとてもシビアです。

太ももやヒップはジャストサイズでなければなりませんし、細身のシルエットも少しばかり余裕がなければとても快適とは言えない残念な着心地になってしまいます。

シンプルながら、ブルーで統一されたお手本のようなコーディネート。

ネクタイの結びも美しく、普段からきちんとスーツを着られているのだと一目で分かりますね。

これ見よがしなアイテムは一つもなくとも、これだけ差別化できるのは経験値もあってこそ。

いかがでしたでしょうか?

知らなければ出会うこともないような生地も、その存在を知ると、さらに奥深い紳士服の世界の虜になっていきます。

夏はリネン、トロピカル、フレスコ、そしてモヘアとそれぞれ大きな違いがありますので、皆さんのスタイルに合うような生地をご提案させていただきます。

夏スーツ、日本はもはや10月まで夏ですので、これからもバンバン出番があることでしょう。

気になる方はご相談だけでも、お気軽にお申し付けください。

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ライター:その他クルー

2024年7月5日
オーダースーツ | オーダースーツの生地

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