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今さら聞けない!ボーラー ハット(山高帽)の由来と語源

オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。

今日は、銀座ファッションアカデミアという講義に参加している私が、帽子についてまとめてみました。
帽子といってもいろいろな種類があるが、今回はボーラー。
丸い、ボーラー。

男性も、女性もかぶったボーラー。
一体どんな歴史が隠れているのでしょう?

この記事の目次

ボーラーって国によって呼ばれ方が違う

ボーラーって、どんな帽子だろう。

まず、丸い。
そして、固い帽子。
帽子には、ハードハットと、ソフトハットの種類があり、ボーラーはハードハットの1種になる。

イギリス英語では、ボーラー。
アメリカでは、ダービーと呼ぶ。
さらに、フランスではメロンに似ているからメロンというのだ。
ドイツも同じ理由でメローネ。
そしてイタリアは、小さな爆弾という意味の、ボンベッタという。

こんなに国によって違う呼ばれ方の帽子もなかなかないだろう。
ちなみに日本は?
山高帽(やまたかぼう)という。

山高帽と名付けた人は福沢諭吉

クラウン(山)の形一つによって帽子はかなり印象が違ってくる。

日本では、明治の頃はボーラーとは言わず、山高帽という言葉が使われていた。
そもそも日本に初めてボーラーを紹介したのは、福沢諭吉である。

慶応4年、西洋衣食住という本を自分の弟子の名前を使って書いた。
そこに、高帽子 丸帽子 平帽子と書かれている。
1887年、初めて日本に帽子のことを伝えたのだ。

西洋のハット、知識がまったくない時代、シンプルに考えて3つの帽子がある!と書いたわけだ。
高帽子は、今のトップハット、丸帽子が、ボーラーのこと。
平帽子はキャスケットやハンチングになる。

ボーラーのかぶり方のポイント

イタリアの2人の音楽家。
右:ボーラーは、こんな風にちょっとななめにかぶるのが粋だ。

そもそも帽子をかぶる時に、誰にもわからない程度でも良いので、少しだけ斜めにすると良い。

人間の顔は左右対称ではない、鏡に顔の半分だけを写すと、なんだか不思議な顔になるものだ。

そこで、帽子も斜めにしてバランスをとる。

特に、ボーラーは丸いから、形づくることも難しい。
帽子のなかでも難しい帽子と言われているが、気持ち斜めにかぶる。

どうしてボーラーっていうの?

ウィリアムボーラーというハットメーカーがあって、ウィリアムボーラーで作られたので、ボーラーとなった。

ボーラーの名前の由来は、そのまんまメーカーの名前だったのだ。

だけど、ここからが深い。

メーカーのウィリアムポーラーに作らせたのはロックという帽子店で、ロック帽子店に依頼したのはトーマスウィリアムコークという人。

トーマスウィリアムコークは、ノーフォークの貴族。
彼は、1854年に、ロック帽子店に行って頑丈な帽子を作ってくれないか!と依頼したそうだ。

それでロック帽子店は、ハットメーカーのウィリアムボーラーに依頼して、頑丈な帽子を作った。

この、トーマスウィリアムコーク氏から、 今でもコークという呼び名もある。

ちょっとくだけた言い方をすると、イギリス人はビリーコーク(Billy-cock)というのだそうだ。
イギリス人がいうに、ウィリアムというのは、愛称がビリーになるので、ビリーなのだって。
イギリス人同士ではよく使う言葉なのだそう。

実はそれ以前に、ボーラーはあった

ところが、ウィリアムボーラーが作られる前にも、ボーラーみたいな帽子があった。
それがわかるのがこの1821年の図。
さきほど1854年にボーラーを作らせたはずだが、名前こそ違えどボーラーは存在したのだ。

実は、トーマルウィリアムコークのお父さんも、空気抵抗の少ない帽子を作って欲しい!とロック帽子店に行っていた。

お金持ちで何エーカーもの土地を持っていて、使用人もいます。大型農家というんでしょうか。お父さんは、同じ土地にいろいろな作物を植えた方が土地は痩せにくい、というようなノーフォーク農業法の本を出しています。

当時のことですから、使用人もトップハットのような帽子をかぶっています。
でも、見回りをするときに落としてしまいます。

使用人に買って与えたものです。落としたり無くしたりするから、これはかなわん!ということで、なるべく空気抵抗が少ない丸い帽子を作ってほしい、と作ったことがありました。

息子は小さな歳だったでしょうが、その帽子を覚えていたんですね。
息子は28歳くらいで、そういえば、父は丸い帽子を作っていたなあ。と思い出します。

馬に蹴られても大丈夫な頑丈な帽子。
もしかしたら、中にスティールが入っているヘルメットのようなものだったかもしれません。

1850年に、1ダース、2ダースと作りました。
ウィリアムコークが求めていたのは、固い帽子でした。

銀座ファッションアカデミア 専任講師 服飾評論家 出石尚三先生

ウィリアムコークのお父さんは、すでにボーラーのような帽子を作らせていた。
それは、使用人が使う、落としても大丈夫な帽子。

1:それは空気抵抗が少ないスタイルである

2:そして固い(ヘルメット式)

こうしてヘルメットみたいな帽子ができたのだった。

イギリス人のボウル

器みたいなのを、ボウルというけど、イギリス人も勘違いして、ボウルにERがついているのか、と思っている人がいるらしい。

本当はメーカーの名前なのだが、そのくらい見た目もボウルっぽい。
そんなわけで名前も受け入れられやすかったようだ。

 

ボーラーの歴史を追ってみる

割と初期のボーラー。Rオブサフォークの兄弟。
右が弟、地主で、1855年ごろの写真。

まさにボーラーをかぶっているのがわかる。
でも、普通は貴族はボーラーをかぶらなかったのだって。

1855年ごろに、貴族がボーラーをかぶるという習慣はありませんでした。
これは例外中の例外だと考えてください。
ボーラーはもともと使用人のための帽子なのです。貴族はトップハット。

銀座ファッションアカデミア 専任講師 服飾評論家 出石尚三先生

・ボーラー=一般市民帽だった

・ボーラー=貴族はかぶらない(現代も)

貴族がかぶらない帽子を皇太子がかぶった!

1863年

なんと、現代でも貴族はかぶらないボーラーを、英国皇太子(エドワード7世)がボーラーをかぶったところの写真がこちら。

母であるビクトリア女王はいつも、うちの息子はどうしてこんなに服ばかり好きなのか・・・と悲しんでいたという。
そんな服に目がないエドワード7世がかぶった、当時の最先端のファッションハット、ボーラー。

そもそもフロックコートを着るようなお立場の方が、お気楽なトレンド服、ラウンジスーツを着ている時点で、英国皇太子がするスタイルではないのだけれど。

スポーツのときはボーラー

1863年

二人とも、クリケットの選手。

ボーラーという風に呼ばず、ビリーコークと呼ぶのはクリケットと関係があるらしい!

どうしてビリーコークっていうような言葉がよく使われるかというと、イギリス英語でボーラーっていうと、クリケットのボーラー(投手)のことなんです。
野球でいうピッチャーが、ボーラーというんですね。
紛らわしいので、ビリーコークと言うのです。

図が、まさしくクリケットのバッターです。特別なクリケット用のユニフォームで、この図は同じチームの選手ですね。

球技の選手がかぶって、スポーツハットになったのではないでしょうか。

銀座ファッションアカデミア 専任講師 服飾評論家 出石尚三先生

 

クロッケーというスポーツでも。

鉄のゲートをくぐらせると、また一打打てるという上流階級の遊び。
左の人がボーラーをかぶっている。

 

1866年

シューティングパーティ。

貴族はよくこういうことをやるのだそうだ。
どうしてかというと、自宅の敷地が広くて、手に負えないほど害獣が増えてしまう。
そこで、友人を屋敷に招いて、獲物を打ってシャンパンを抜く。

ボーラー生みの親のコーク氏も、人を招いて度々シューティングパーティーを開催した。
その時のお付きの人たちは、みんなボーラーを被った。
この写真も、その真似をした様子だ。

ジェントルマンが街でかぶったのは70年代からである。

それ以前はカントリーウエア。身分的にも下の人がかぶっていたのがボーラー。

おすすめのボーラーハット

世の中で売られているボーラーだが、中折れハットのように種類豊富に販売されているわけでもない。

また品質としては、ラビットを使ったボーラーがおすすめだ。

ここではおすすめのボーラーハットをご紹介してみたい。

ボンベッタグローボ

1879年創業のイタリアの老舗ブランド、パニッツァが出しているボーラー。

ボンベッタグローボといい、ラビットファーフェルト100%で見た目にもきめ細やかさが伝わってくる、手触りも抜群。また色もグレーというところが洒落ている。

ブリム(つば)の縁には、リボンと同色の布をあてて縫いこんでいる。

非常に質の良いボーラーだ。

ダービー

出典:https://www.tokiyado.com

1799年創業、200年を超える歴史とを持ち、ファーフェルトハットを中心に世界50ヵ国以上に輸出されているトナックが出しているボーラー。

ダービーというシリーズで、ラビットファーフェルト100%。ベロアよりも短く刈った毛足を起毛処理している、ファインスエード仕様。独特の光沢感がたまらない。

上質素材を使った、本格ボーラーのブラックは1つ持っておきたい。

おすすめ帽子店

男性の帽子はボーラーをはじめ、種類もそうだが、品質も様々だ。

帽子を購入する場合は、やはり信頼できるお店で選びたい。

編集長の私がおすすめする、特徴の違う2店をご紹介してみたい。

時谷堂百貨

 

時谷堂百貨はヨーロッパやエクアドルで100年以上続く日本未発売の帽子ブランドなどを開拓し、直接仕入れを行って、オンラインショップで販売している。そのため価格が店頭で有名ブランドを購入するよりも品質の割にリーズナブル。

かぶってサイズが合わなければ送料無料で何度も試せる、無料試着サービスが人気だ。

編集長の私も時谷堂の帽子はいくつも持っていて、とても気に入っている帽子店だ。

時谷堂百貨のウェブサイト

トラヤ帽子店

もう1つおすすめしたいのが、銀座トラヤ帽子店。

大正六年創業という歴史ある帽子店。

ソフトハットやパナマハットなどで数々の取り扱いのある帽子屋である。

トラヤ帽子店は銀座の他、浅草店がある。ヨーロッパ、アメリカから日本人に向けのセレクションをしていて、アパレル業界の私の先輩方も愛用しているお店だ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろう?

トラヤ帽子店(銀座店)

住所:東京都中央区銀座2-6-5

営業時間 :10:30~19:30

定休:日曜

トラヤ帽子店のウェブサイト

ボーラー まとめ

1900年代は、英国のビジネスマンがかぶる帽子といえばボーラーだった。

そんなボーラー、もともと貴族が、お付きの人たち用に頑丈な帽子を開発させた。
それを作ったメーカーが、ウィリアムボーラー社だからボーラーとなった。

メルメットのように耐久性が高く、頭を守る役割があったのだろう。
それがいつしかストリートファッションとして流行って、英国皇太子までかぶった。

紳士がスリーピーススーツに合わせるようにまでなるが、あくまでも本来は貴族はかぶらない帽子だった。

かぶり方のポイントは、ちょっとずらしてかぶること。

ということで、ボーラーをスーツに合わせてみようか?

さて、明日は何着よう?

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2018年2月4日
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