【貴重】スーツ生地の原毛 メリノウールやコットンを見てみよう
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
松はじめです。
大西基之先生をお招きして、メンズウエア素材の基礎知識という講座。
今日は実際に服の原料が登場します。
普段着ているスーツやジャケット、ニットやパンツは何らかの原料でできているんです。
そんなことは言われなくてもわかりますよね、でも、原料を見る機会ってなかなかありません。
さて一体どんな講義になるのでしょうか?
素材って服の出発点
スーツもジャケットも、まずは素材が大事。
今日は改めて素材にについて考えてみたい。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3742.jpg” name=”大西 基之 先生” ]何でも素材でできているのです。 [/speech_bubble]
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]大西先生、考えてみたらそうですよね! [/speech_bubble]
例えばパソコンにも何か素材が使われている。
でも、もしパソコンを買おうと比較検討したら、中に入ってるOSとか性能、もしくは軽さとかデザインとか、人それぞれ重視するポイントがあると思う。
車も同じようなところがあって、素材というよりも性能の方が重要に思えないだろうか?
どこ製の鉄板が使われているからトヨタ車が好きなんだよね、という方は少ないだろう。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]服は素材が大事。その素材は、服を選ぶ基準にも直結しているわけです。[/speech_bubble]
素材といえばウール
今、スーツやジャケットの原料といえば、ウールが思い浮かぶ。
あなたのスーツもほとんどがウールのスーツではないだろうか?
耐久性を増すために、化学繊維を入れている場合もあるかもしれないし、季節感を出すためにリネンやカシミアを混ぜたり、色や光沢で特徴を出すためにシルクを混ぜているかもしれない。
けれど、シルク100%のスーツなんてなかなか売っていないはず。
そのウールは、ご存知の通り羊の毛だ。
上の写真に、2つの羊毛がある。
奥のは、少し黒ずんでいる。
手前のは、白くて美しい。
ウールといえばメリノ種
羊にもいろいろな種類があるのだが、今、世界各地に分布していて、良質なウールといえばメリノという種類だ。
もともとはスペイン・メリノ羊毛がルーツになっている。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3742.jpg” name=”大西基之先生” ]スペインメリノは小さい羊でした。
それをオーストラリアに持っていき、繁殖させます。
それまではスペインの中から出しませんでした。 [/speech_bubble]
羊毛は、白いことが大事だ。
当時、真っ白な羊の原料がなかなかなかったために、スペインはメリノウールを独占していた。そうやって貿易したことによって豊かになっていったのがスペインだ。
スペインメリノを温暖なオーストラリアに持って行き、200年近くかけて改良を重ねていった。
今ではメリノウールといえばオーストラリアと言われるほどになった。
他にも、サキソニーメリノ、ニュージーランドメリノ、タスマニアメリノ、ウイントンメリノなどオーストラリアメリノ以外にもいろいろなメリノ羊毛がある。
メリノ種にもランクがある
臭いを嗅いでみる。
すると、犬のような臭いがする!
こんな風に、同じメリノウールの原毛でも、まるでビフォアアフターのように色が違う。
育てられ方でここまで変わるのだ。
大切に大切に服を着せて育てる、広い牧草地に少しの羊。
家族経営で、大切に大切に。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]何事も一緒で、手間暇をかけるかどうか。
一方は白くて綺麗。
一方は、臭いも強烈です。犬みたいな臭い![/speech_bubble]
オーストラリアメリノは、繊度の太さによって3段階のグループに分けられる。
・23〜25ミクロン
ストロングメリノ
毛布にも用いられる。繊維の長さ、100mm。
・20〜22ミクロン
ミドルメリノ
スーツや高級毛布に用いられる。繊維の長さ90mm。
・18〜19ミクロン
ファインメリノ
細い糸の高級スーツや、ニットにも用いられる。繊維の長さ70mm〜75mm。
メリノ種は、飼育する地域の影響が強い。
ただオーストラリアメリノ羊を日本に連れてきて飼育しても、同じ毛を得ることはできない。
同じウールでも随分違う、英国のウール
これもウール。
出てきたのは、先ほどのウールとは似て非なる原毛だった。
これは英国羊毛、ブルーフェイス・レスターの原毛だ。
長毛種で、ニット製品、毛織物製品に用いられる。
男性の服に使われる羊毛で、メリノという種類以外は?といえば英国羊毛。
英国羊毛だけで60種類以上の品種がいる。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]60種類をグループ分けするとこんな感じになります。 [/speech_bubble]
英国羊毛のグループ
・ファイン
・ミディアム
・クロス
・ラスター
・ヒル
・マウンテン
・ナチュラル・カラード
グループごとの代表的な羊種
・ファイン
∟クラン・フォレスト
∟オックスフォード・ダウン
∟ライランド
∟サフォーク
・ミディアム
∟ボーダー・レスター
∟ロムニー
・クロス
∟スコティッシュ・グレイフェース
・ラスター
∟ティースウォーター
∟ウェンズリーデイル
∟ホライト・フェイス・ダートムーア
・ヒル
∟チェヴィオット
∟シェットランド
・マウンテン
∟ブラック・フェイス
∟ラフ・フェル
∟ウエルシュ・マウンテン
ナチュラリー・カラード
∟ブラック・ウエルシュ・マウンテン
まず、英国は寒い。
メリノウールがオーストラリアやニュージーランドなどの暖かい地域で飼われているのに対し、寒冷な地で飼われているのが英国の羊。
英国羊毛はさきほどのメリノ羊毛と違って、あまり白くない。
英国羊毛は強度と弾力性が特徴だ。
触れてみると、とっても荒い。
繊度の太い英国羊毛は太い
こちらも英国羊毛で、シロップシャーという種類。
英国羊毛の繊度はメリノより太い。
繊度の太さを表す単位に、SUPER・・’という表記がある。
今、日本で売られている一般的なビジネススーツといえばSUPER80’sとか、SUPER100’sくらいだと思う。
数字が増えるに連れて、繊度が細くなる。
SUPER120s’とか、SUPER130’sといえば、繊細で休ませながら大切に着たいスーツで、
SUPER200’sなんていう細い原毛もある時代だ。
そんなSUPER表記でいえば、英国羊毛はSUPER40’sくらいだ。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]SUPER表記の数値が高ければ高いほど良いものだ!と思う方もいますよね。
でも、一概にそんなこともないのです。 [/speech_bubble]
英国羊毛でなくてはできない服
例えば英国羊毛でなきゃできない服もある。のだ。
メリノ羊毛は、時代とともにどんどん細くされていく。
エアコンが発達して厚い生地がいらなくなったことも原因だ。
だから原毛の繊度も細くして、軽くした。
今は、1年を通して同じくらいの厚さのスーツを着る、オールシーズンスーツを着るビジネスマンも少なくない。
(厳密にはそういうスーツはないのだが)
だが英国羊毛は寒い地域で生まれた。
ロンドンのテーラー街サビルロウでは、 英国羊毛で仕立服を作っていたわけである。
サビルロウで作る服は、基本的にアイロン操作が要だ。
アイロンで平面の生地を立体的にしていく。
[speech_bubble type=”std” subtype=”a” icon=”7Q6A3743_result-860×573.jpg” name=”松はじめ” ]サヴィルロウの服作りはアイロン操作が要だから、英国羊毛のような繊度の高い素材の方が向いているわけですね。 [/speech_bubble]
これがコットン
手裏剣のような形をした物体は、ボワっとモコモコっとした綿を吐き出すようにくっつけている。
これは、コットン。
写真の綿花は自分の種を守ろうとして、綿を出す。
人間ってやつは、それを剥ぎ取って衣類にしてしまったわけだ。
さて、コットンは綿ともいうが、綿花から採れる綿である。
コットンの歴史は古い。
今から5000年以上前のこと、なんと、もう綿織物は作られていた。
古代インドで、その製法は門外不出だった。
後になって隣のペルシャ、そしてエジプトに伝わって、ヨーロッパに広がっていく。
メキシコのマヤ人の遺跡を発掘したところ精巧な綿織物があったのだそうだ。
ヨーロッパは麻織物(リネン)と毛織物(ウール)が中心だったが、産業革命がきっかけで綿産業が発達したのだ。
チノパン、トレンチコート、至るところにコットンが
今では、コットンといえばシャツやパンツに使用されている。
あなたの履いているチノパンや、トレンチコートもコットンの服がないだろうか?
春から夏にかけてはコットンのセットアップスーツも良い。
コットンは現代、服にとって欠かせない素材になっているわけだ。
日本でもなんと縄文時代の遺跡からリネンが栽培されていたことが明らかになっている。それは布に織られていた。徳川時代にはコットンも栽培されて、鎖国が終わって明治維新以降に海外との貿易が始まるまで栽培は続いていたのだった。
コットンにも種類がある
コットンにも色々な種類がある。
そもそもコットンは世界各地で栽培されている。
そしてそれぞれ産出国の名前がついていて、エジプト綿、アメリカ綿、ペルー綿などがそうだ。
なかでも高級なコットンといえば、ペルーが起源といわれる3~5mの長い繊維長を持っている綿花だ。
エジプト綿(ギザ45、メヌフィ)
スーダン綿(サケル、バラカット)
ペルー綿)(ピマ)
カリフォルニア綿(スーピマ綿)
西インド諸島(海島綿、シーアイランド綿)
シルクの製法は長年謎に包まれていた
シルクは、ご存知のとおり蚕のマユが原料になっている。
シルクといえば、中国のシルクロードがある。
このシルクロードを通り、各国に流通していたと思いがちなのだが、実はシルクの織物のみが流通していた。
どうやってこんなに美しい織物ができるのか?
ヨーロッパの貴族たちを虜にしたシルクは、中国の門外不出の技術だった。
ずっと謎に包まれていたのだった。
今のようにSNSで作り方が一瞬でシェアされてしまう時代ではないので、そうやって貿易をしたのだ。
しかしまさかね、蚕のマユが原料だなんて・・・。
振ってみるとカタカタと音がした。
蚕の死骸が入っているからだ。
春夏のスーツ素材 モヘアの中でも貴重なのは?
なめらかで白い、美しい光沢の繊維、モヘアは、春や夏のスーツやジャケットの素材に適している。
100%で使うのではなくて、ウールなどと一緒に織ることがほとんど。
モヘアはアンゴラ山羊の毛。
獣毛繊維で、もともとトルコ原産だったアンゴラ山羊は、今ではトルコ、南アフリカ、アメリカがほとんどの産出国になっている。そのなかでもアメリカ、テキサス州のテキサスモヘアがもっとも多くのモヘアを産出している。
そんなモヘア、特に重宝されるのはキッドモヘアだ。
キッドモヘアは子供の山羊。
年に2度、生後6ヶ月以内の繊度24〜27ミクロンの毛を刈る。
アンゴラ山羊は生後2年を経過すると、繊度が40ミクロンくらいに太くなる。子供のモヘアは、さらに細くて輝きがあり、高級だということになるのだ。
ラクダの産毛 キャメル
キャメルという服の原料がある。
その名の通りラクダ。キャメルの原毛は、ラクダそのままの色、ラクダカラーだ。
だからそのままの色を生かして服にするわけだ。
例えばポロコート。
ポロコートといえばキャメル素材だ。
そのキャメル色というのは、ラクダそのままの色というわけだ。
ラクダの全部の毛を使うことはできない。
喉のあたりしか使えないのだ。
背中だってコブがあってごりごりっとしてるし。
つまり、産毛を集める、だから希少なのだ。
服と人間と素材と
コットンのパンツが欲しいな、とかデニム素材のシャツを着たいとか。冬ならカシミアのコートを持っているとか、夏ならリネンのジャケットを着て食事に行こうか、と。必ず頭に素材名がくっついていると思わないだろうか?
「つまり素材そのものが服の価値の半分くらいを占めているわけです。」
素材には色々なものがある。
馴染みがあるのはウールかもしれない。スーツといえばウール。
そんなウールはご存知羊の毛。
羊毛は獣の毛と書いて獣毛繊維に属している。その他、植物繊維にはコットンもあれば、リネンやコーヒー豆の袋に使われるようなものまで色々とある。
ある日、人間は植物の繊維を糸にした
私たちが繊維とお付き合いを始めたのは、体毛を失った日から。
最初は繊維じゃなくて、草木の葉っぱとか動物の皮そのものを身につけていた。
ある日、植物や動物の繊維から糸を作った。
葉っぱのある部分をすっと剥く。
すると、1本の繊維が取れた。
これを撚っていく。
すると糸になった。
糸は織物になって、服になった。よく発見したものだ!と思いませんか?
織物として、最初はコットンが利用されていたのだが、蚕を飼ってシルクにすることに発展していったのだ。
株式会社ボットーネでは、講師に大西基之先生をお招きして、こんな素材の講義を開催している。
百貨店やセレクトショップで働く方や、スタイリスト、イメージコンサルタントの方が個人で参加している少人数講義。
6月4日(火)10:00開催となる生の勉強会。
大西先生にお会いできる貴重な機会でもあります。
場所
株式会社ボットーネ サロン
渋谷区神宮前4−19−8−121
参加方法
まずは以下のメールフォームにてお申し込みください。
大西基之先生の著書 アパレル業界で働く人の教科書です。
まずは持っておきたい1冊。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2018年5月5日
オーダースーツ | オーダースーツの生地
タグ:素材, 講義, 大西基之先生, 生地
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