スーツの勉強は本だけではわからない!スーツの着こなしと所作 ネクタイについても深い
僕が20代の時、この人がいろいろなことを教えてくれた。
イギリス式の服とか、服装だけでなくて動き。
洋服着たならばどういう動きをしなくては、というようなこと。 しかも英文科を出ている方るだから、若い時代、戦争が終わってからすぐに世界を周った方。
この人の本がバイブルのようなものでした。 今はピッティウウオモ(イタリアの展示会・インスタグラムなどでどのようなファッションがトレンドか?どのような着こなしが格好良いか?が注目される)で何が流行ってる?というような報道ばかりだけれど・・・。
と始まった、私たち服屋の勉強会。
2ヶ月に1回私たちが大西基之先生を講師としてお招きし、開催している勉強会、メンズウエア素材の基礎知識&セビロの哲学講座の冒頭であった。
講義のタイトルにもなっているセビロの哲学というのは、講師を務めて下さっている大西先生のさらに師匠にあたる方が書いた本のタイトルだ。
大西基之先生の師匠とは、服飾評論家でありデザイナー、星野醍醐郎という方である。
セビロの哲学の著者、星野醍醐郎氏は1924年生まれ、慶応大学英文科卒。
1968年に490円で出版されたのが、セビロの哲学である。
その本の内容は現代になって読んでみると、まったく古さを感じさせないどころか、今日の日本の風景を物語っているようなので驚くばかりだ。
大西基之先生は前述の星野先生から服装・所作について指摘を受けたことがあるのだという。
《ドズンと座ったなら、こう言われました。
良いですか、座る時はセンタークリースを軽く握って(持ち上げて)静かに座るものです、これがジェントルマンですよ。と。》
もう一つはこうだ。
《君の靴は片方が減っている。歩くという行為をいい加減に考えているからだ。》
すみません、私もおそらくもっといい加減に考えていた、歩く行為を・・・。
イラストレーターの穂積和夫氏が半世紀ほど前に著した本のタイトルに「着るか着られるか」というのがあった。
私の少年期のバイブルでもあった服の案内書なのだが、まずはタイトルについてである。
酒は呑むべし飲まれるべからずなどという言葉もあるが、まさに、呑むか飲まれてしまうか、着るか着られるあということには大きな隔たりがある。
すべからく多くの物事には年季あるいはキャリアという積み重ねた経験を必要とすることがあり、装うという行為も例外ではない。
まずはそのことに興味がない場合はなにも始まらないが、興味を持ってはじめたことは、まず真似をする、あるいは教わる、自己流でやってみるなどの初動がある。
たいていのお稽古事は教わる場所があるので自己流でやってみるよりも上達は早く動きも正確で美しくなるものである。
さらに上達していく過程で自分の個性が加わりいわゆる「板についてくる」という状態に到達していくのであろう。
セビロの消えた日 大西基之著より引用
穂積和夫さんといえばこのイラスト!
流行がどうかとか、コーディネートがどうかとか?
そうではなくて、服って自分で買って失敗するに尽きると思う。
繰り返しているうちに、磨いていく、板につく。
板につくというのは能の言葉なのです。
何回もやって失敗をして、繰り返して、ようやく板につくのだよね。
セビロの哲学講義より大西基之先生
色分けしてマーカーを引き、びっしりと書き込まれた、テーラーHさんの書籍。
本を読んだだけではわからないことが明快に理解できる。
そして本には出てこない知識も飛び出す。
メンズウエア素材の基礎知識の部 第2期に新型模型!
こちら、大西先生自身が作ったという、綾織りの見本。
なぜ真新しいデニムをロールアップすると、裏側が白いのだろう?
サンイチ(3本とんで、1本くぐる上記見本の綾織り)になると、、、
表と裏で色が違う。
ジーンズはサンイチ。
すると(表側に)経糸の色が出てきます。
緯糸が白、経糸が紺なのです。
綾目の角度、これも結構重要なの。
バーバリートレンチコートのコットンギャバは元々(角度が)強かった。
雨が流れやすかったのです。
ネクタイの話。
ネクタイは朱子織りという織り方なのだが、実は経糸の色は黒か白。
なぜ?
星野先生は「男の服装339の作戦」中、155頁.ネクタイは自分で選ぶものの頁の中では『セビロにマッチしないネクタイにもふた通りあり、ひとつは「第一ネクタイとしてよくない」「ネクタイとしてはいいが、服との調和がよくない」をあげることができる。とあります。
(奥さん、彼女が)ネクタイを相手にプレゼントすることは迷惑をかける可能性があります。
ネクタイだけ買ってきても、相手の服を知らないのに。
ネクタイは本当に難しい。
服との相性もあるし、似合うかどうか、それにネクタイ自体が良いタイかどうか。
締め心地はブランドによって変わる。シルク、芯地。
贈り物となれば、さらに難しい。
講義後編:セビロの哲学より
ネクタイは本当に難しい。
色や柄が服と合うか?
そもそも似合うかどうか?
行く場と喧嘩せず調和するか?
自分らしさは出ているか?
そうして、太さもある。
締め心地もある。
大西先生もおっしゃっていたが、海外に行けばネクタイを買う。
それでもなかなか納得できる1本には出会えないという。
非常に共感してしまった。私など、まだ納得ゆく1本に出会えてすらいない。
もちろん妻は絶対に私のネクタイを買ってはこない・・。
ネクタイの結び方はシングルノット、セミウインザーノット、ウインザーノット、その他色々ありますが、シャツの襟の開き角度によって変えます。
ところで、結び方がきちんとしている人は背広もきちんととしています。
今回から新たにアパレル販売に携わる方の参加された方も加わった。
私を含めて13名という、質問しつつ、脱線しながらの小規模の講義だ。
それから、ネクタイの解き方。
ギュギュッっと引っ張って抜いてしまう人がいました。
そうではなく、結んだ時と逆に緩め、まるめて置いておく。
放置した後にネクタイかけにかける。
僕ね、納得したシャツってあまりないんだよね。
服って中ほど難しい。
服ってのは人間の身体に近いほど難しい。
だからワイシャツって非常に難しい。
(日本のショップでは)試着させない。
ジャケットだったら絶対に試着させるのに。
イタリーなんか、客側も着させてとなる。
それから、胸ポケット。
ここのところ胸ポケットがないシャツが多い。
例えばここに来ている皆さんは、胸ポケットについてだって考えてみてはどうだろう?
大西基之先生と。
今日もあっという間の3時間。
大西先生はプレーンノットを基本とし、ボタンダウンシャツにやや緩くタイを結ぶ、大西先生だからこそできる着こなしであられる。
最近は何事もお手軽だ、書籍なども多くがハウツー物で、「プロが教える、オシャレに見せる服の法則」のような本が並ぶし、事実、そういった本が売れる。
そのようなこともあり、大西先生が書いたセビロの消えた日という幻の書籍は「これじゃあ売れない・・」というような観点からも出版に至ることはなかったのだそうだ。
だが、これが服の仕事に携わる人だけでなくとも、服を着る上で色々なヒントが得られる。
ということで、本講義では私たちアパレル業界の人間が素材を知り、学び、さらには本当に着こなす、装うとはどういうことか。幻となった書籍、セビロの消えた日を元に学び、大西先生の師匠である星野先生が大西先生に伝えたエッセンスを学べる、大変貴重な機会だ。
学んだことはしっかり生かす、
だからといって、もちろんネクタイを締めていない友人に、「今すぐネクタイくらい締めなよ!」と言うつもりはない。
そういう時代なのだから、現代的に咀嚼する必要もあると思う。
だが、せめてその友人がヨーロッパに行く、というのならば少しくらい役に立つことを伝えられるかもしれない。
そんな風に、これからも苦味のあるアイス・コーヒーに程よくガム・シロップを足し、正しく楽しくクライアントの方々にもお伝えしていきたいなと思う。
(私はブラック派だけれど。いや、コーヒーに関しては、、)
・・・・・・・・・・・・・・・・・ こちらは先生の書籍。
ぜひともアパレル、ファッション関係に携わっている方に読んでいただきたい一冊。
販売の方なら正しい商品知識がついてお客様からの信頼が上がるし、
企画、バイヤーなどの方も復習・再確認という意味でも読んでおけば一目置かれるはず。
もちろんテーラー、スタイリスト業の方は、ダイレクトにその知識を生かして成果に結びつけられるだろう。
大西基之先生の師匠の幻の著書がこちら
セビロの哲学―男性のおしゃれ (1968年)
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年8月1日
イベント | ファッションイベント
タグ:ネクタイ, 講義, シャツ, 大西基之先生, 講座, 着こなし
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