ビルゲイツの考え方は、問題は分割して考えること
先日は英国からハリソンズ・オブ・エジンバラでおなじみ、リア・ブラウン&ダンスフォード社のCEO、ジェームスダンスフォード氏がサロンに来てくださり、大変勉強になった濃い時間を過ごさせていただき、誕生日にはたくさんのメッセージをいただいた。
家族に、友人に、クルーに、クライアントに、本当に皆さまに日々感謝感謝である。
さて、私が問題だな、と思った時に基礎にしている考え方がある。
うちの会社でも大切にしていて、困った時に使えるので書いてみようと思う。
困難は分割する、というデカルトの考え方で、元マイクロソフト社長のビル・ゲイツ氏の前でプレゼンした日本人、マイクロソフト本社でWindows95を開発した方でもある、中島聡氏も著書 なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である の中で、ビルゲイツのエピソードとともに語っている。
たとえば、こんな例で考えてみましょう。
ある日、ビル・ゲイツがカレーライスを作ろうとしたとき、なんとカレールーとニンジンがありませんでした。これではいつものカレーライスが作れません。
しかしよく考えてみてください。
ルーがないと絶対にカレーライスは作れないでしょうか?
ニンジンがないとカレーライスは作れないでしょうか?
そんなことはありません。
ルーは市販のカレー粉で代用できるし、ニンジンはなくても一応カレーライスにはなります。
つまり、ルーがないという問題と、ニンジンがないという問題は独立しています。
だからここは慌てず、「ルーをどうするか」「ニンジンをどうするか」という分割された課題に、別々に当たればいいわけです。
ビル・ゲイツはその後、カレー粉とじゃがいもを使ってカレーライスを作っておいしくいただきました。
やや抽象的な話だったので、現実にあった事件を例に挙げます。
マイクロソフトがパソコンメーカーにソフトを依頼されたとき、ある技術的な問題により、パソコンメーカーから苦情が来たことがありました。
クライアントがたいそう怒っているということで、社内は混乱していました。
とにかく、原因の技術的問題を解消しなければこの問題は収まらない。
マイクロソフトの社員はみんなそう思い込んでいました。
そんなとき、ビル・ゲイツは困難を分割しました。
技術的問題はクライアントの怒りからは独立した問題だと。
どうやらクライアントが怒っているのは技術的問題よりも、担当者との性格の不一致に原因があったようです。
そうして担当者は替えられ、クライアントをとにかくなだめる任務に就くことになりました。
他方で技術的問題はエンジニアたちが全力で解決に向かってまい進していました。
こうしてクライアントとマイクロソフトの関係は、なんとか立ち直ったのです。
技術問題と外務問題を切り分けることで、この事件は終息を迎えました。
ビル・ゲイツが「その問題とこの問題は独立している」とよく言っていたことを覚えています。
こうした課題の分割は、複雑な問題を効率的に解決するうえで重要なことだと思っています。
出展:なぜ、あなたの仕事は終わらないのか 中島聡
結構多くのことは、ごちゃごちゃに絡み合っている場合があり、
分解して見ると結構シンプルだ。
前出のエピソードも、技術的トラブルと、クライアントの感情的な怒りは別問題と切り分けて、それぞれ的確に対応して問題が収束したということだ。
例えば、最近私たちの会社で起きた問題として、マンパワーが不足した、という事態が発生した。
経緯は、クルーの嶋田君を、修行に行く!と行ってある企業に、研修として連れて行った、私が。
本当にご好意で学ぶ機会をいただいたのだ。
その後彼は、ひたむきでまじめな姿勢もあって、休日を使って自費でプレス研修に来なさい、と声を掛けていただき、毎週頑張って通うようになる。
次第に本当にやりたかったことや求めていたことに出会ったと気づき、自分の見つけた道に進みたい、と彼はある朝言った。その後、彼から聞いたわけではないのだが、晴れてその企業へ入社した、という件がある。
経営者として、マネジャーとしては人は宝、そして育てた人財が抜けるのはハッピーラッキーな出来事ではないだろう。
これは、その過程で、その企業の代表に相談した。
しかし、この時も言われたのだが、考えてみればこれは、私たちと嶋田君との話であり、その会社は関係がないのだ。
現に気持ち良く彼を見送って、あとは彼の道である、それに対して私も頑張れ!とエールを送っている。
こうして、彼が研修として通わせていただいていた会社に入社することになって、その会社とも痼りを残さず、どのような収束パターンがあるか?と考えたときにお世話になっている企業と、うちに在籍したクルーという、関係値を分割したことで得られた答えだし、そもそもマンパワーが減ったからといってどうなる?困る・・困った、どうしよう。
また、次に、現実的に、お客様が気持ち良く服を仕立て、受け取れるよう、その点での気配りは忘れずに、マンパワーが足りない部分を何とかしなくてはいけない。
ここでも、気持ち良く仕立ての打ち合わせができる空間を作ることと、滞りなく商品を受け取れること、そこにサービスや気配りがある、というのはそれぞれ別問題なのだ。
だから例えば、滞りなく商品を受け取れること、という点でいえば人がいなくともできる仕組みを作ることだ。
元に私たちの企業には、大手セレクトショップにもない、オーダー管理システムがある。
結構な金額がかかったし、意見をぶつけながら作り、仕舞いには私もシステムを作るようになり、さらにその後入社した中之丸は前職の経験をもとにさらにシステムを設計できる。
簡単にいえば、
《そろそろ完成ですよ、この案件はお客様にご連絡を。それから、こちらの方は素材が揃ったのでそろそろ工房と段取りを組んでください》と自動でお知らせしてくれる、我々にとって秘書のようなシステムなのだ。
これを強化することで、マンパワーを補うことができる。
人でしかできないきめ細やかなおもてなし、
もっと良い服になるように、スタイル、シルエットの提案、
お客様のために、そういう人でしかできない部分をもっと追求したい、
だからこそ自動化して、効率化できたら、あとはもっと知恵を絞って考える。
人が足りない、気配りが行き届かない、どうしよう、ではなくて、
人が少なくても暖かい、楽しめる場を考えて、気配りをする。
男性と女性が一緒に来店されたとき、
女性の方が退屈そうだ。
お話ししたい、でも、人員は足りない。
そこで、次の方へのメッセージを綴るノートを設置した。
結構楽しんで書いてくださる。
またブライダルでご来店された男女には、
結婚準備、挙式まであと◯日!というボードを書いていただき、写真を撮る。
結構みなさん書いてくださり、スマートフォンを触る時間が楽しい思い出の時間に変わった。
これは、人が少なくても知恵を絞ればおもてなしのアイデアは出る、ということであり、
的確な商品を受け取れるようにする、ということとは別軸なのだと思う。
2006年の著書で、ダニエルピンクのハイコンセプトのなかで、現代を見通したような6つの、これから求められるセンスが載っている。
これから求められる「6つの感性(センス)」
- 機能だけではなく「デザイン」
- 議論よりは「物語」
- 個別よりも「全体の調和」
- 論理ではなく「共感」
- まじめだけではなく「遊び心」
- モノよりも「生きがい」
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 ダニエル・ピンク (著), 大前 研一 (翻訳) より引用
一つ一つ、人にしかできない物、文化、おもてなしを大切にして、
高い共感力や提案をする、
人口知能にはできないことをやろう。
心の時代を生きていこう。
偶然ご近所であったO様からの写真とメールが届く。
ハワイで最高の結婚式を挙げる事ができました。
タキシード本当に好評でした!
プロのカメラマンに撮って頂いた写真は2週間くらいデータ貰えな
アイフォンの写真をお送りします。
残り5日ほどハワイを満喫します。
今度はスーツをお願いします。
結婚式のタキシードの場合はお写真をいただくことが少なくない。
(ビジネススーツオーダーではなかなかお写真はいただかないわけだが)
こうして着用したシーンが見られると、ホッとするし、あったかくなる。
改めて楽しい仕事だと思う。
明日もまっすぐ真北へ向かおう。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
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