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オーダースーツの生地

メンズウエア素材の基礎知識 講座 桝見本

スーツ生地
スーツを作ったことがある方はバンチをご存知だと思う。
バンチ、バンチブック、そのように呼ばれるのが生地の見本帳だ。
見本はバンチの他にカードに貼られたカードサンプル、スワッチ、
予め3.2m程度カットした状態で生地がサンプルになっている、着分(ちゃくぶん)というのもある。

バンチだと、20枚が一冊になっているものもあれば、
100枚程度の生地見本が入っている場合もあり、
このバンチの生地は、桝見本から選び抜かれた100枚なのだ。

そもそも、生地を作るために、まずデザインを考えるわけだ。
柄、色、そして糸の太さなど、掛け合わせられる要因は様々だ。
もちろんイメージして一発勝負で生地にするわけではない、リスクが高すぎる。
染色にだって変化もあるし、柄が思ったより目立たないな、ということもあるだろう。

ということで、まず小さな面積で試作をするわけだ。
その試作をするために、桝見本(ブランケットサンプル)が登場するのである。

桝見本とは、150センチ幅の広い生地に、
ひと桝10センチの”桝”が並んでいる。
まさに読んで字のごとくだ。

生地 桝見本
「これが桝見本。」
大西基之先生はそう言って、鞄から出した桝見本を両手いっぱいに広げた。
ところどころ抜かれている。

桝見本

10cm×10cmの桝が幾重に並ぶ。
桝ごとに、縦と横の配色を変える。
様々な色味を小さいマス目で確認して、この中から選定作業をするのだ。

単純に、生地の色は明るいグレーで、
柄はグレンチェックチェックで、オーバーペンの色はブルーでOK、などとすんなりいくわけではないのだ。
生地は、色・柄・素材の組み合わせが変わるだけで、全く別の印象になるからだ。

この一つずつ色が違う、色違いを、
色ナレという。

カノニコ新作生地
例えば、このサンプルでいうと左下の2612-8938の色ナレが、2612-8937となる。

「一つの品質で色をかえるのを、色ナレというんだけど、
スーツを仕立てる時に、他のナレは?なんていえば、こいつうるさいな、と思われるね(笑)。」

このような工程を経て選ばれた一枚が、毎シーズンのバンチに組み込まれる。
生地からすると激戦というわけだ。

このように、桝見本、桝を制作するというだけでも非常に重要な仕事だ。
なぜならば、この見本次第で売れ行きが変わるのだから、
社運を賭けたプロジェクトであることは言うまでもない。
メゾンブランドならばパリ・ミラノコレクションに相当するといっても過言ではない。

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「横(のライン)が強くなると太ってみえる。
痩せてみせるために、ストライプ柄があるわけだから。
グレンチェックなんかも同じ。
だから出合いをとっているけど、変なところをとると・・・
最終的に服になったときにどうなるか?を想像しながら桝を抜かないといけない。」

決定した見本は在庫で抱えるわけだ、
どのくらいのストックを用意しておくのか?も大切になってくる。

ここで実は、イタリアのビエラ地区と、日本との大きな違いがあるのだ。
通常日本では、この桝を制作する設計者は、「柄師(がらし)」だ。
柄師は技術者だ。

技術者が悪いわけではないのだが、
当然経歴として多くなるのが、工業学校・繊維化出身者となるわけだ。
考えてみて欲しい、ファッションとは縁遠いところにいるのだ。

大西基之

IMG_6646ではイタリアはどうか?というと、
このポジションには「デザイナー」が就く。
そしてデザイナーは織機を扱うこともあるという。
高いファッション感性を持った技術者なのだ。

そのため、彼(彼女)らの給与は、
社長に次ぐ高収入ということがザラなのだ。
日本では考えられないことかもしれないが、
デザインとはそのくらい価値のあることなのだ。

写真はフランスのマーチャントだが、
ドーメルの社長とともに来日されていた、
ドーメル・テキスタイルデザイナーのアイリーン氏。

そして勝ち組ビエラ(イタリア)と衰退する英国生地・日本生地と
でも書いたように、イタリアは紡績、染色、整職、整理、検反、出荷まで全てを行う
一貫紡が多い。
だからなおのこと生地のデザイン、染色などが重要になり、
他ブランドにもトレンドが流出しにくいから、
オリジナリティが高い。

こうしたこともイタリア素材の強みなのだ。

こちらは先生の書籍。
ぜひともアパレル、ファッション関係に携わっている方に読んでいただきたい一冊。
販売の方なら正しい商品知識がついてお客様からの信頼が上がるし、
企画、バイヤーなどの方も復習・再確認という意味でも読んでおけば一目置かれるはず。

もちろんテーラー、スタイリスト業の方は、ダイレクトにその知識を生かして成果に結びつけられるだろう。


メンズ・ウエア素材の基礎知識 毛織物編

大西基之先生の師匠の幻の著書がこちら
セビロの哲学―男性のおしゃれ (1968年)

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2016年11月5日
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