《大きさがポイント!》スーツ柄 ハウンドトゥース

金曜は大きな病院の先生の礼装服の仕立てにはじまり、カシミアコートの仮縫い、それに秋の結婚式の列席に向けた1着と、平日ながらいつの間にか空には星空が広がっていて、洋服漬けの楽しい毎日をふと実感した。
そして土曜日。無地感覚なのに特有のカントリーテイストを醸すハウンドトゥースのスーツは、起毛した英国フランネルのウール。
触れると、しっかりしているけど暖かみがあって、丁寧に織ったのだなとわかる素材感とハダースフィールドの物作りに対する堅牢さを肌で感じる。
そう、気候はともかく10月だ、やっとこのスーツを着ることができる10月がやってきた。
そんなクラシックだけどスポーティなハウンドトゥースのスーツを、チャッカブーツと合わせてみた。

ネイビーでシンプルにタイドアップ。ここのところ1930年代の映画を観る機会が多かったせいか、ラウンド・カラーのシャツをコーディネート。
ラウンドカラーは個人的には常にブームが来ているような感じなのだが、なんとクライアントに提案したこともなければ、求められることもないというシャツの衿。クレリックシャツのラウンドカラーなど着た日には萌えてしまう自分がいるのだが。

さて、ハウンドトゥースとは実は見た目からついた名前である。
これは英語で、Hound Tooth(ハウンドトゥース)なのだが、Dog Tooth(ドッグトゥース)もある。

ハウンドトゥース、ドッグトゥース、この2つの柄自体は同じような構成。
なのだが、実は大きさが違う。
そして、一般的にはハウンドトゥースと呼ばれるので、私も冒頭でハウンドトゥースのスーツと書いてしまったのだが、厳密にはドックトゥースのスーツなのだ。
ドック、ハウンド、その意味は何かといえば、ドックは犬である。
つまり私が着ているスーツは犬の牙に似ているよね、ということでドッグトゥース柄なのだ。
ハウンドは何かというと、猟犬だ。
猟犬の牙に似ているということで、柄が大きいのだ。
ただ、どの大きさを境にドッグトゥースがハウンドトゥースになるのかは定かではないようだ。

英語圏では犬の牙の形に見立てたと思われる、ドッグ・ツース Dog Tooth 及びハウンド・ツース Hound Tooth と呼ばれている。このうちやや小さめの柄をドッグ・ツース、大き目の柄をハウンド・ツース(猟犬の牙)と慣習的に呼び分けているようであるが、やはりどこからがドッグ・ツースでどこからがハウンドかというと区分けは困難である。
メンズウエア素材の基礎知識 大西基之 著 より引用

そして、実は他国では犬ではないものに見立てられて呼び名がついているのをご存知だろうか?
日本では古くから、この柄を千鳥格子(ちどりこうし)と呼んでいる。
千鳥が群れをなして飛んでいるように見えるというが、確かに見えなくない。
そして、イタリアとフランスではまた別の側面が!
メンズウエア素材の基礎知識 大西基之 著 より引用
なんと、小さい格子は雌鶏、大きいのは雄鶏と区分けされているという。
それにしても足と言われればそういう風にも見えてくるではないか。
ということで、小さい格子模様のドッグトゥース。
イタリア、フランスではピエ・ド・プール。

これならスーツやジャケットに仕上がった時はさほど柄も目立たず、無地よりも表情が出る。
ちょうど冒頭で私が着ているのは上記の大きさの柄だ。
柄が大きくなると・・・

なかなか主張が強くなってきた。
レディースではコートやバッグなどでも見かけるが、メンズ素材ではあまり見ない大きさだ。ストールやボトムでもいけそうな大判柄。規則正しく千鳥は羽ばたいてゆく。
そして最後に、メゾンブランドのコレクションなどで見かける、主張の強い大きさがこちら。

おそらくここまで大きければ、ハウンドトゥース(ピエ・ド・コック)だろう。
猟犬の牙のような、千鳥のような、雄鶏の足のような、はたまた北海道にも見えてくる。
北海道とアメリカはなんだか似ている、と思ったことがある。ユーラシア大陸は本州と捉えると、オーストラリアは四国だ。こじつけのようになってしまったが、そう考えるとまるで星座のようにアメリカにも見えてくるから不思議だ。
もしこの柄は何と名付ける?というキャンペーンがあったなら、何と名付けるだろうか。みなさんならどうだろう?
ちなみに注意点としてはこの柄のスーツを凝視していると、目の焦点が合わなくなってくるところだろう。
そしてチェックの色は1色増えると、ガンクラブチェックとなる。
1874年、アメリカ狩猟クラブの結成時、ユニフォームとして採用したことが名前の由来だが、それは牙がないシェパードチェックなのだが、牙のある千鳥格子でもガンクラブチェックと呼んでいるようだ。

さて、あなたは犬の牙派だろうか。
それとも千鳥が飛んでいる?もしくは鳥の足?
ということで、色々ややこしいので千鳥格子と呼んでおこうか。
さて、明日は何着よう?
・・・・・・・・・・・・・・・・・ こちらは先生の書籍。
ぜひともアパレル、ファッション関係に携わっている方に読んでいただきたい一冊。
販売の方なら正しい商品知識がついてお客様からの信頼が上がるし、
企画、バイヤーなどの方も復習・再確認という意味でも読んでおけば一目置かれるはず。
もちろんテーラー、スタイリスト業の方は、ダイレクトにその知識を生かして成果に結びつけられるだろう。
大西基之先生の師匠の幻の著書がこちら
セビロの哲学―男性のおしゃれ (1968年)
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年10月1日
オーダースーツ | オーダースーツの柄
タグ:スーツ, 服飾史, 講義, コーディネイト, シャツ, 大西基之先生, 生地
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