カジュアルなチェスターフィールドコート
本日はチェスターフィールドコートのお仕立て事例をご紹介致します。
これまで当ブログでは、カシミアやウールを使用したベーシックなチェスターフィールドコートをご紹介させていただきました。
ですが今回は少し雰囲気を変えて、カジュアルに着用できるチェスターフィールドコートをご紹介致します。
ガンクラブチェック


素材はハリソンズ社のムーンビームというコレクションの中から、カントリーテイストのチェック柄をお選びいただきました。
チェックの中でも”ガンクラブ・チェック”といって、ツイードなどでも良く目にするチェックになります。
ガンクラブ・チェック(Gun-Club Check)
通常2色(白×黒)でできているシェパード・チェックに、もう一色のカラーチェックを重ねたものをガンクラブ・チェックというが、実際は牙のあるいわゆる千鳥格子の組織でも3色使いのものは一般にガンクラブ・チェックと呼んでいるようである。
1874年、アメリカ狩猟クラブの結成時に、庫の柄をユニフォームに採用したことからそう呼ばれている。柄そのものは、白×黒×赤茶の3色のシェパード・チェックがベースであり、千鳥格子ではない。マーケットで見る多くのガンクラブ・チェックは3色以上の多色部分、つまり桝の”出違い”の部分が使われることが少なくないが、ガンクラブ・チェックの場合、特にトーンの近い多色使いは表情も豊かになり、ツイードなどにおいては大変味が出る。

メンズ・ウェア素材の基礎知識[毛織物編](大西基之先生 著)より抜粋
今回のお選びいただいたガンクラブ・チェックの生地は、赤と青のウィンドウ・ペーンも重ねられており、素材としても面白い組み合わせですね。

ハリソンズ ムーンビーム(MOON BEAM)
このムーンビームのコレクションは、ウールがベースながら「アンゴラ」をブレンドしていることにより、ふんわりと柔らかく、お仕立て上がりも非常に軽やかになるのが特徴です。


アンゴラとは、アンゴラ山羊を指す場合と、アンゴラ兎を指す場合とがあります。
今回はアンゴラ兎の方です。
兎の毛ということで、ウールに比べ格段に軽く、それでいて暖かさはパワーアップする、希少価値も高い贅沢な素材。
(ちなみに、アンゴラ山羊はいわゆるモヘアです。)

この柔らかさは一度触っていただくと分かりますが、すぐ虜になってしまいます。
カシミアとはまた違った感触で、触っていて本当に気持ちが良い!
実はこのムーンビーム、基本的にはジャケット用の素材となります。
昨年はネイビーのジャケットをオーダーいただきました。
ジャケット用の素材をあえてコートに使用することで、軽やかでカジュアルシーンにぴったりなコートが出来上がります。
見た目以上に、とにかく本当に軽いんです。

目付としては、秋冬だけでなく春先まで着用できるかと思います。
カジュアルチェスターフィールドコートのディテール
チェスターフィールドコートですが、フロントは比翼仕立てではなく、上衿もベルベット仕様ではございません。
チェスターフィールドコートらしいデザインですが、プライベートで着用するとなると本格的すぎてカジュアルな服装に合わない為です。

着丈もひざ上程度の少し短めに設計することで、カジュアルな装いにも難なく溶け込みます。
ニットの上などから、さらりと羽織るイメージですね。

今回は腰のポケットに少し特徴を持たせました。

基本的なチェスターフィールドコートは、スーツと同じようなフラップ付きのポケットを持ってくるのですが、オーダーいただいたお客様のお好みにより、ポケットに手を入れやすい箱型のマフポケットにしています。
(お写真ではちょっと分かり辛いですね、、、)
ステンカラーコートにみられる、このポケットのことです。

マフポケットには少し注意点があり、「ダーツ」というフロントの絞りがなくなるため、少し絞りが緩く、ストンとしたAラインのようなシルエットになるります。

これがまたカジュアルな服とマッチするんです。
勿論、絞りを強調したい場合はフラップ付きのポケットにすることで引き締めることが可能です。
この辺はお好みに合わせてチョイスしてみてください。




ということで、少し気分を変えてカジュアルなコートもオーダーで作ってみてはいかがでしょうか?
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。5年勤務ののち、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2019年10月22日
オーダースーツ ボットーネのブログ
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