背広の語源(由来)はサビルロウではなかった!スーツとフロックコートやモーニングを見ると・・・

松はじめです。
背広という言葉の由来はご存知でしょうか?
実は、いくつかの説があります。
良く語られるユニークな説は、ご存じの方も多いかもしれません。
英国仕立屋街のサヴィルロウが、訛って背広になった
サヴィルロウ→せびるろう・・→せびろぉ・・→背広 説。
この説は、会食の時の小ネタにはなろうかと。
ところで、仕立屋が考える真の背広の説は少し違います。
なぜ背広と呼ぶのか?
さて、その説とは…
背中が広い、説。
背中が広いから、背広!
そうです、そのままですね。
一体どういうことでしょう?
結論 背が広いから背広
今のスーツを着用する以前の時代は、
モーニングコートやフロックコートを着ていました。
正装、というとモーニングやフロック。
このコートの背のパーツが、狭い。
スーツの背中のパーツが、広い。
だから背広と呼ばれたという仮説です。
狭い背中とは?

まずはこちらが、モーニングコートの背です。
スーツなどの背中は、真ん中で縫われているだけですよね。
この背中は、どうでしょう?
いつくものパーツで構成されています。
背がいくつものパーツで分かれ、組み合わさって立体的で構築的なシルエットになっています。
どうしてか?というと、このように細かく分けて、縫い合わせた方がよりフィットするからです。
モーニングコートや燕尾服のような構築的シルエットの洋服、それはより人間の身体に沿い、細かい絞り込みができます。
それでいて動きにも対応できるので、社交ダンスや指揮者の服としても理にかなっているわけです。
仮縫いの時に調整できる箇所(パターンを調整できる箇所)はより多くなります。
スーツは、もともとはスコットランドの労働着。
こういった窮屈な服でダンスをしたり、食事をしていた貴族。
いよいよ形式張った退屈な食事が終わり、ゆっくりできる。
男同士、ラウンジルームでくつろごうじゃないか!
この時に窮屈な上着は脱ぎ捨てて、リラックスな服で過ごしました。
リラックスした服にちょうど良かったのが、スコットランドの労働着です。
動きやすいように設計されていますから、くつろぐのにちょうど良かったわけです。
スーツの背中

こちらが、スーツの背中です。
電車に乗って誰かのスーツの背中を見れば、こういう風に真ん中で縫われているはず。
こうやって背中から比べれば、確かに背広。
反対にモーニングコートを背狭と言ったかどうかはわかりませんがね・・。
通常のスーツの背は、こんな風に2枚の大きなパーツを組み合わせて完成しています。
背中を比べてみると

右が通常スーツ。
並べてみると、まあ広さというのは違いますよね。
そもそもはモーニングコート、フロックコート、テールコートといったように、コートと呼ばれる服も少なくありませんでした。
コートはコート、トラウザーズ(パンツ)はトラウザーズ、ヴェストはヴェスト(ウエストコートというくらい)、全部が独立した存在でした。
どうしてか?
乗馬をするからです。
乗馬しやすいように、フィットさせる上着。カーブを描いているのも馬用です。
モーニングコートの前は、フロックコートでした。
この時は、フロントはカーブしていなかった。
そこで、馬に乗る時はぺろっとフロントをめくります。
めくった先は、後ろのボタンに引っ掛けたんです。

ということで、このボタンがある。
全部意味があるのです。
また、コートの生地と、パンツ(トラウザーズ)の生地も違います。
馬に乗るのに、ピタッとフィットしたパンツでないと水ぶくれになってしまいますし、耐久性が求められました。
背広という初めての言葉

背広という言葉が初めて登場したのはいつでしょう?
服飾評論家 出石尚三先生の著書、福沢諭吉 背広のすすめによれば、
語源についての権威者、広田栄太郎著(近代訳語考)東京堂出版刊に、
明治3年刊行の古川正雄の、入絵知恵の環のなかに言葉としての背広(ひらかな)が登場するようです。
まんとる せびろ ちょっき
しやあつ つけえり ずぼん
図があるだけで、説明はないそう。
出石先生の本ではこんなこともわかります。
さらに以前、福沢諭吉のペンネーム、片山淳之介が書いた西洋衣食住に、
ビジネスコートを訳した、丸羽織という言葉が登場するそうです。
これが背広となったのでしょうね。
スーツの百科事典は、これ一冊でスーツのこと全てが詰まった、まさに百科事典。
福沢諭吉 背広のすすめは、日本にどのようにスーツ(背広)は広がったのだろう?事細かに説明している貴重な一冊。
西洋の服の呼び方いろいろ
背広以外にも、面白い話はいろいろとあります。
現代のように文字で書いて伝達するのがコミュニケーションとは限りません。
例えば、シャツ。
ワイシャツといいますよね。
これは、ある言葉の聞き間違えから生まれていると言われています。
それはこちら
また、パンツの裾。
シングルとダブルがあります。
このダブル、私たち仕立屋のような職業の人間は、かぶらと呼ぶことがあります。
みなさんも、修理屋さんにパンツを持っていくとわかると思います、今でも職人さんはかぶらといいます。
ダブルの折り返しの幅は、かぶら幅。
これも聞き間違え。
背広 まとめ

背広という言葉は、サヴィルロウが訛って背広説は、面白いです。
が、背中が広いから背広と呼んだというのは、なかなか有力な説ではないでしょうか?
スーツの元、ラウンジコートが誕生し、日本に入ってくる。
いろいろなタイミングを考えてもうなづける話です。
そもそも背広という言葉自体使わなくなった傾向もありますが。
さて、明日は何着よう?
・
・
・
あわぜて読みたい
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2019年5月12日
スーツの着こなし術 | ジェントルマンの知識
おすすめ記事
晴れの日 結婚式の新郎タキシードを仕立てるということ普段からなかなかスーツは着ない、という方でもいくつか着なければならないシーンというも…
スーツの起源はどこの国のどんな服?ラウンジスーツ・ラウンジコートの歴史を追う■1864年の英国皇太子の装い アレクサンドラ姫に長男が生まれました、その弟は後のジ…
フェルト帽子の最高峰 ビーバーハットはボルサリーノ以外にもおすすめブランドがあったなぜ良い帽子を持つべきなのか? 顔を良く見せよう、変化をつけよう、と思った時にできる…
宅配?保管?上質?タイプ別 おすすめクリーニング店4選早い!便利なクリーニング店 リネット 【リネット】宅配クリーニング 朝のうちにクリー…
【ブーツNG】男性のフレンチのマナーとエスコート マナー講師 高田さんに学ぶ日本人はなぜフレンチが苦手なのか? 「そもそも、テーブルマナーといっても、あの人はひ…
フレスコ スーツ!フレスコ生地とは?実は夏のおすすめ素材ボットーネの夏の定番は”フレスコ” 「夏の素材」というと、思い浮かべるのはリネンやコ…
良いスーツって何だろう?オーダースーツ仕立屋の先輩から教わった話結論 目的が違う これはどういうことを言いたいのか、解説します。 仕立屋職人が言いた…
スーツの背抜き 総裏の選び方 背抜きはいつから?いつまで?こちらが背抜き仕様のスーツ。 着た時に背中に触れる部分が、裏地がない仕様になっている…
オーダースーツのユニークな裏地をご紹介さて、その他ユニークな裏地はいろいろあるのでご紹介します。 スーツというと西洋が起源…
グローブ トロッター購入!魅力溢れるバッグをどんどん好きになっている私「旅行」 というワードに関連して脳内に【GLOBE TROTTER】(グローブトロッ…
関連カテゴリーの人気記事 週間ランキング
-
1
スーツに合わせる靴!合わせてはいけない靴!茶靴は?ブーツは?まとめ -
2
ネクタイの元 クラバットの進化 -
3
背広の語源(由来)はサビルロウではなかった!スーツとフロックコートやモーニングを見ると・・・ -
4
なぜスーツの袖からシャツが出ていないといけないのか?雑誌が教えてくれない理由に迫る -
5
英国紳士のスーツの着こなしにベストは必須なのか?イギリスから来たお二人に直撃 -
6
なぜジェームスボンドは007 カジノロワイヤルでタキシードを着るのか? -
7
ネクタイのルーツ クラバットやフォーカーレを追ってみる -
8
葬式の服装 男性のスーツは黒ではなかった?喪服のマナーと心(男性編) -
9
【ブーツNG】男性のフレンチのマナーとエスコート マナー講師 高田さんに学ぶ


















ブルックスブラザーズ展に行けなかった人のためにブログでご紹介!200年の歴史とボタンダウンやアメリカのスタイル
スーツのお台場仕立てとは?東京のあの場所と関係があった
ダッシングツイード 日本上陸 来日したガイ・ヒルズ氏にファッションや英国ドレスコード事情を聞いてみました
人はなぜスーツを着るの?答えは落花生にあった!出石尚三先生に聞く、スーツ
3分でわかる初めてのオーダースーツの打ち合わせの流れ!既製服との違いの講義をしました











