チノパンとは?コットン軍用パンツとマンチェスターと紅茶の不思議な関係

松はじめです。
ジャケットに合わせるパンツに、ポロシャツに、ジーンズと肩を並べるほどに普及しているパンツといえば、チノパンではないでしょうか?
チノとは、中国人??
一体なぜ?
そこには、東インド会社と、高級茶と、マンチェスターの綿産業誕生のエピソードまで関わっていました。
5分で解説します。
結論 中国経由で入った素材だから
安価で、しかも耐久度が高い素材。
そんなメリットに目を付けたのは、軍隊でした。
服飾評論家 出石尚三先生からお伺いした話ですが、
チノクロスは、ファティーグ(軍隊の労働・作業着)としてアメリカ軍兵士のパンツによく使用されていたのだそうです。
19世紀のアメリカ。
スペイン、そしてメキシコの植民地であったカリフォルニアなどの西海岸を奪い、勢いは増すばかり。
さらにスペイン植民地のフィリピンもアメリカの植民地化しました。
植民地フィリピンにはアメリカの本国から、軍隊が送り込まれます。
この時に、中国から輸入したのです。
アメリカ英語で、中国のことを少し軽んじて見た言葉で、チノーズ(中国から来た)という風に呼ばれたのです。
マンチェスターが中国に販売

中国から輸入したとはいえ、
中国に販売したのはイギリスのマンチェスターでした。
1830年に、マンチェスターとリバプールを結ぶ鉄道が通ります。
リバプールからは、ウールやシルクも輸出されていました。
こうして19世紀、英国産業の柱になるほどです。
ちなみにイギリスは中国からお茶を輸入していますが、
お茶の仕入れ代をアヘンで払ったりと、いろいろな歴史があります。
コットン(キャリコ)禁止令
話は少し遡りますが、
1540年ごろ、キャリコという言葉がありました。
コットンの平織りの織物、
今でもありますね。
インドのカリカット(地名)の港町は、英語でキャリコというのです。語源はこれです。
イギリスは、これをインドから輸入します。
東インド会社(イーストインドカンパニー)は、インドでウールを売って、コットンを買おうとしました。
ですが、売れなかった・・・。
インドでは、ウールは高級で売れなかったのです。需要もなかったのでしょう。
イギリスには銀山がありましたから、銀と引き換えにコットンや香辛料を買いました。
マンチェスターが中国に販売
インドのコットンは安く、売れに売れました。
シャツやシーツに使う素材といえばリネンでしたが、なんと値段はリネンの1/3以下!!
今でも、英国人の中には、
・リネンこそ高級であり、貴族の品だろう
・コットンは庶民のものであろう
というイメージがあるのだかないのだか・・。
価格だけではなく、当時の高級品とはいえリネンではコットンの色が出ませんし、コットンなら壁紙やシーツにもぴったりの素材。
余談ですが、シーツもリネンでした。
だから、ホテルにはリネン室がありますよね。
さて、あまりにもコットンが売れたので、困ったのはウールやシルクの商社。
1600年代後半になると、いよいよウールマーチャントの中には倒産する企業まで。
1700年、これではいけないということで、イギリスはコットン輸入禁止令を出します。
さらには、1720年になると、コットン使用禁止令まで出るのです。
(ただし、苦肉の策として、ウールやシルクとの混紡はOKのようでした)
安価な物が入ってきたときに、国の産業を守ろう!という動きはいつの時代も同じですね。
インドから糸を輸入して織る
コットンが禁止となった英国。
知恵を絞った結果、インドから糸を輸入。
それで、英国内で織ったら合法ではないか!
染色も、プリントも、国内でやろう。
コットン輸入&使用禁止となったがゆえに、マンチェスターの綿産業は発展したのですから、面白い話です。
また、コットン(キャリコ)が輸入できない東インド会社も困ったものです。
何か他にないだろうか?
そうだ、中国のお茶だ!
そしてこの関税を100%にしようではないか。
こうして高級なお茶が生まれ、莫大な関税によって戦争に強い英国が出来上がったといわれます。
チノクロス

さて、チノパンは、チノクロスという生地を使います。
一般的には茶系のベージュ、それにカーキ。
コットンや、ポリエステルなどの混紡があります。
織り方は綾織り(ツイル)。
この斜めになっている織物、例えばジーンズ(デニム)などもこんな風になっています。
ウールと綾目が逆

ちなみに、ウールにも綾織があるのですが、
綾の方向は逆です。
右上から左下になっていますね。
専門的な話をすると、単糸か、双糸か?
1本の糸か、2本の糸を撚り合わせているか?が違うので、こうなります。
コットンの原料 綿花

綿産業は、先ほどご紹介したイギリスのマンチェスターというところが有名です。
この写真が、コットンの原料。綿花(めんか)です。
綿花の栽培に適した湿った環境だったのです。
東インド会社が登場し、インドのコットン(キャリコ:コットンの平織りの織物)が入ってきます。
それはそれは安い・・ウールマーチャントも倒産し、知恵を絞った結果、糸だけインドから買って、英国で作ろう!と発展したのですから不思議な話です。
マンチェスターとまっキントッュ
マンチェスターというと、トーマスハンコックという人物が有名です。
彼は、チャールズマッキントッシュの名前を借りて(ライセンス)
チャールズマッキントッシュカンパニーを作りました。
コットンを使って、レインコート素材の開発にいそしみました。
インディアンラバークロス(生地)を製品化して、スコットランドの象徴として裏地にタータンを貼りました。
おそらく綿織物の工場をやっていたのでしょうね。
マッキントッシュは、実はコートを作ったわけではなかったのです。
カーキ色
チノパンの色というと、ベージュやカーキがあります。
ミリタリーの色といえばカーキですよね。
このカーキは、ヒンドゥー語で土という意味なんだそうな。
19世紀末、インドに駐留していたイギリス陸軍駐留部隊の連隊長、ハリー・ラムスデン卿。
軍隊というのは非常に厳しく、
ポケットに手を入れるのももってのほか、服装の乱れすら許されません。
でも、植民地を統括している身の私が、この白い制服ではすぐ汚れてしまうではないか!
おまけに、目立つので狙われたら終わりです。
白い生地を染めよう。
桑の実ジュースに、コーヒーと、さらにカレーを混ぜ。
おぉ、うまく迷彩柄に染まったな。
これがブリティッシュカーキの始まりのようです。
タキシードのカマーバンドもインドから
英国の植民地という背景から、インドにはいろいろと面白いエピソードがあります。
例えばカマーバンドも。
とある英国将校が、暑さに耐えきれずベストを脱いだ。
しかし、ベストを着ておらぬなど何事か!
ということで、現地の方が巻いていた帯でベストの代用品にした、
これがカマーバンドの始まりといわれます。
まとめ
今や当たり前のように呼ばれる、チノパン。
もともとはインドのコットンの糸がイギリス・マンチェスターに入る。
それが中国に渡り、アメリカ兵に渡った。
だから、チノクロス。
インドでは白い制服を染めて、カーキ色が生まれた。
今では持っていない人はいないというくらい一般的になった、
カーキのチノパンにもこんなエピソードがあったのですね。
さて、明日は何着よう?
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ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2019年5月13日
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