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アルスターコートとは実は大人気のコートだった

アルスターコート コーディネート

オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。

表参道の街路樹に小さな光たちが灯る。
恋人たちはまるで全てがうまく事が運んでいるかのような笑顔で手を繋ぎ、幸せそうに歩き、立ち止まり、光を脇役にしてシャッターを切る。今年一年の総決算である12月が始まり、街にはネイビーやキャメルカラーのコート姿が溢れる。

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そんなコートまっさかりの今日この頃であるが、アルスターコートとは聞いたことはあるだろうか?
コートという言葉を省略して、アルスターと呼ぶこともある。

トレンチコートやピーコート、チェスターフィールドコートやダッフルコートは何となく聞いたことがある方でもアルスターコートというのは知らない、という声を耳にする。
実のところ、あの映画のアルスターが作りたいんだ。とは、オーダーの仕事を初めてから一度も耳にしたことはない。

ところが実は今日でも数々の映画に登場し、コートとしても空前の大ヒット作であったのがアルスター。
歴史を重ねながらも知られざるアルスターコートは、実はあなたが持っているコートもアルスターコート(アルスター)かもしれない、そのくらいにポピュラーで定番コートがアルスターコートだ。

どのようなものがアルスターコートなのか、今日は銀座ファッションアカデミア 出石尚三先生の講義の内容と織り交ぜてお伝えしたい。

まず、アルスターコートは、トレンチコートの原型である。
トレンチの父上は、タイロッケンというコートで、タイロッケンの父上こそアルスター、つまりトレンチコートのおじいさんがアルスターなのだ。

アルスターはダブルブレスト。
時代を追うとシングルもあったのだが、最初はダブルであった。
特徴はアルスターカラーという衿。なんといってもここがポイントだと思う。下衿よりも大きな上衿、浅いVゾーン。さらに、出石尚三先生が名付けた、アルスターレングスという独特の着丈も本来のアルスターの特徴なのだ。

アルスターコートというのはいつ頃生まれたんだろうか?
ロンドンで1869年に見られるようになったという風にいわれています。

銀座ファッションアカデミア 専任講師 服飾評論家 出石尚三 先生

 

アルスターコート
1890年のアルスターコート。
非常にロング丈、上衿は大きくダブルブレスト。

アルスターコートは1869年に誕生したとある。
図のコートこそアルスターコートだが、クラシック回帰の昨今、エレガントにキメるならばこんなコートがあっても良いではないか。ただ者ではない大人の余裕が手に入るに違いない。

アルスターコートである必須条件、ダブルブレストであったということ。
デタッチャブル(取り外し可能)のフードがついていた。

アルスターコートは、元は旅行用コートだった 

アルスターコート
1895年のアルスターコート。フードとバックベルト付き。

フード付きのコートというとすぐにダッフルコートを思い浮かべる。チェスターフィールドコートにフードが付いている絵はなかなか浮かばないが、アルスターもそうではないだろうか。
が、なんと、もともとアルスターコートにはフードが付いていた!
なぜフードがあったのか?というと、これはもともとは旅行用のコートだったからだ。
そしてそもそも旅行をする身分である、私は。というような強気で貫禄たっぷりな象徴でもある。

 

明らかに旅行用外套という狙いでした。

19世紀ながごろの旅行は過酷なんです。

今なら新幹線で冷暖房がありますが、昔は馬車です。

冷暖房ってものがありません。

ましてや北のほうでありますから。

 

 アルスターといえば長い着丈

寒冷な地方、打ち付ける雨、旅といっても現代の旅とはわけが違う。そこでフードが付いていたのだ。そして長い着丈はコートを脱いだ時のコントラストをさらに色濃くする。

また、アルスターコートには現代でも着こなしのポイントになり得るベルト付きコートが原則だ。

コート アルスター

 

もう一つは非常に丈が長いコートでありました。

それからベルト付きです。

これは日本語で共ベルト、英語でセルフベルトといいます。

トレンチもベルトしていますよね。

セルフベルトというものは1869年に現れたアルスターコートの大きな特徴でした。

 アルスター ロングコート


1876年のアルスターコート。インバネスコートのようなケープ付きである。
インバネスについてここで解説を初めてしまうと文章量がおよそ2倍に膨れ上がってしまうため、ここではあまり触れないが、簡単にいうとケープのついたコートだ。
なんとイギリスで登場したインバネスはすぐさま日本に入ってきて、福沢諭吉が中心となって広がっていく。日本名は《とんび》といい、着丈の長いタイプは《二重回し》という。実はこのコート、和服の上から羽織れるのだ。
そんなこともあり福沢諭吉は1866年の西洋衣食住の中でこのコートを紹介しているのだった。

さて、ベルトというとまさにトレンチコートなどもベルトで締めるタイプ。
この記事を書いている2017年の冬はベルテッドコートがトレンドの兆しがあるが、ややゆったりしたシルエットのコートをきゅっとベルトで締めると、密着してとても暖かい。着込んでもそれに合わせて調節できるのもベルトのあるコートの特徴だ。

また現代でも背中だけにベルトのあるタイプを見かけないだろうか?
これはこの後の時代に、シルエットがタイトになったので背中だけで調節できる背ベルトとなったのだ。

さて、それにしても非常に長い丈だ。
そこがまたそそられる名コートである。
当初のアルスターコートは、このように非常に長い。膝を通し越して、床上がり15センチほどだろうか。

アルスターコートの生地といえばフリーズ 

 

もう一つ忘れてはならない重要なことは、

アルスターコートにはフリーズってものが使われてた。

friese

今の毛布のような生地です。

 現代であればコート素材はウール、カシミア、キャメル、アルパカなど、またその混紡もある。アルスターコートもしかりだ。だがもともとのアルスターコートはフリーズという、かなり防寒性が高い紡毛の素材であったようだ。
これも旅行用ということが関連している。
そして、意外な使い方が!

ダッフルコートのバケットフード
実はこの記事を書いている私も、同じコートの使用方法は実体験として経験がある。
これはこの記事の最後でご紹介したい。

アルスターコートのアルスターの由来は? 


ドニゴール

ではアルスターコートのアルスターとはなんだろうか?
アルスターの意味は、北アイルランドの地名です、という記述をよく見かけるのだが、果たして本当にそうなのか?ということについて検証してみたい。

まず、事の発端は1866年に遡る。
ジョンマクジーというアイルランド人が、ドニゴールで生地屋をはじめた。
ドニコールツイードという言葉はご存知の方も多いと思うが、ドニゴールというのは地名である。

 

 

これがドニゴールという州名であります。

アルスターというのは、日本でいうならば関東。

ドニゴールってのは州、アルスターのなかのドニゴール州。

日本>関東>東京都
アイルランド>アスルター>ドニゴール 

旅行 馬車 コート

閑話休題、マクジーはフリーズという生地がなかなか売れていることに気づいた。

そこで、1867年、さらに販売するにはどうしたら良いだろうか?と旅行用コートを発表したのだ。
フリーズという毛布のような生地は、当時の馬車移動の旅行用に良いのではないかと。
つまり、どちらかといえば生地を売りたくて作ったコートなのだ。

 

 

当時の環境にあわせ、旅行に適した外套を考える、それがアルスター。
1868年から輸出をします。
ジョンマジクーは1868年にベルファーストから輸出したって書いてあるんです。

 

フリーズ生地を売るために企画されアルスターから輸出されたコートだった 

フリーズという生地自体はさほど新しいものではなく、もっと昔からあったのだそうだが、それをアルスターコートとして世に送り出したのがジョンマクジーで、英国を経由してフランスに渡り、瞬く間にヒットしたというわけだ。

つまり、アルスター地方で生まれたコートというよりは、
フリーズ素材を使って、
新しいコートを考えた人が、
アルスター地方のベルファストから運ばれた、というだけだ。

アルスターはグリーン 

 

 

 

フリーズも1418年ごろからイングランドで使われている。
おそらくそれ以前に、13世紀12世紀ごろから、アイルランドでは何か別の名前があっただろう。
それを輸出して、イングランドに伝え、英語でフリーズという言葉になったんではないか。

アイルランドでは毛布のような生地が折られていたということは間違いないでしょう。
だいたいロンドンデリーのあたりでフリーズという生地が織られていたんであろう。

英国の文献1418年に、EEウィズという作家の本に、グリーンフリーズのガウンという言葉がでてくるんですね。アイルランドではもっと先に使われていたんでしょうね。

 また、1765年の本にも、この時代の馬車の内装にグリーンのフリーズが使われていた、という表記があるようだ。

ということで、どうもグリーンのフリーズが文献で出てくるようだ。なぜグリーンだったか、これには2つの理由が存在するのだという。

 
一つはアイルランドの色。
グリーンはアイルランドを象徴する色という想いがあったのだろう。

ロンドンデリーというエリアには、コケとか、木の根とか、緑色に染まりやすい原料があったんではないかな。
13世紀ですから草木染めですね。

 

日本にも大島紬など、天然の原料で染める方法があるが、アイルランドも例えばタータンなどは、もともと草木染め。だから鮮やかな色が出て、経年の変化も美しい。
タータンについてもなかなか面白い、その記事はこちら。

 

アルスターコートにレディースも登場 

 

婦人用アルスターも登場しています、1871年に、テーラーアンドカッターの記事。
今ロンドンで最も着丈が長いコートは、アルスターコートであろうと記事が出ています。


アルスター レディース
レディースのアルスターもなかなか雰囲気がある。

レディース アルスターコート
タキシードや燕尾服に用いられる拝絹、それからウイングカラーで。

1889年になりまして、レディースなんですけど、5段ケープというデザインも生まれています。
珍しいわけではなく、馬車に乗る人が、5段ケープのマント着ておりました。

19世紀終わりになりまして、レディースアルスターが流行るのですけれど、
5段ケープは、英語でファイブケープス。
ファイブケープスインバネスとかね。

1871年、アルスターという活字が登場したと思えば、翌年の1872年にはもうイギリスからフランスに伝わったアルスター。
フランス読みではアルスターは、イルステール(ulster)となる。フランス人に聞くとイルステールと言うようで、辞典でも、イルステールとなっている。
あくまでも、おフランスの方々はイギリス英語読みはしたくないのですね。

大流行のアルスターコート、その理由は使い方にあった! 

 


実にアルスターコートがロンドンに現れて、その3年後にフランスに伝搬したという、当時としてはスピーディーな伝わり方だ。つまり、そのくらいに流行ったし、重宝したということなのだ。

 

どうして重宝したのだろうか?
毛布のような素材、長い丈、ということで、出石尚三先生はこう仮説を立てている。

19世紀の半ば冷暖房がない状況で、宿もフカフカのベッドもあるかかわからない、毛布もあったり、なかったり。昼間は外套(コート)として使っているアルスターを、毛布代わりに使ったのではないでしょうか。

確かに、どうしてここまで長い丈が特徴となっていたかというと、万が一寒さに震える日は、毛布代わりになります!という優れものだったならばどうだろう。
だからこれだけ丈が長かったと考えるのはとても自然なことだ。

かくなる私も、過去新しい紳士服店の設計に携わったことがある。
内装やら何やらとやっていたらとても時間が足りない。オープンの日程は決まっていたので、腹を決めてそのまま開店前の店舗で寝ることにした。

ショップ

開店前の店舗は白い床が貼られていて、鏡とカーテンレールと洋服をかけるレールが壁に設置され、照明はテスト用に少しだけ設置されていた。もちろん布団はない。冬ではなかったが肌寒い、どうしようかと思ってふと壁のレールを見ると、既にサンプルとして持ってきた服と一緒に長さを見るために自分のチェスターフィールドコートが掛かっていた。ヒザよりもさらに長いそのカシミアのコートを見て、これだ!と思って毛布代わりにしたのである。

結論、コートは毛布の代わりになる!と声を大にしてお伝えしてこの記事はそろそろ締めくくろうと思う。

そして、アルスターコートの最終形態がこちら! 

さて、アルスターコートについて見方が変わったのではないだろうか?
あれもアルスター?これもアルスター?見渡してみると、結構多くの人がアルスターコートを着ているのだ。本人はきっと知らないが。

こうして時代が進みゆくなか、様々な変化をしていくアルスターコートだが、最後にぜひこの図を見て欲しい。
何か気づかないだろうか?
ついにこのようなアルスターが登場するのだ。

アルスターコートとトレンチコート

Ulsterと資料右下には記載があるので、確かにアルスターとして紹介されている。
が、、トレンチじゃん!
この図を見る限り、ほぼトレンチコートではないか!

そう、このアルスターカラーをベースに、いよいよトレンチが開発されていく。
戦争はそれまでの肉弾戦から、銃撃戦になる。
銃撃戦になるから、突撃していっても打たれてしまうのだ、そこで溝を掘って、隠れ流れ打つ。

この溝、大変な欠点があった。
そこでいよいよトレンチコートの開発が!
この話はまた今度。
 

アルスター メンズ

アルスターコート まとめ 

 アルスターコートの特徴

・ダブルブレステッド
・デタッチャブルのフード(雨よけのフード)
・セルフベルト(共生地)
・長い着丈 
・フリーズ(frieze) 毛布のような素材

アルスターの歴史

・1866年 ジョンマクジーがドニゴールで生地屋を開く
・1867年 厚手の毛布のような生地(フリーズ)を販売するために、 旅行用コートを作成。旅行が一般的でなかった時代にアルスターを持っていることは ステイタス。
・1868年 フリーズで作成したコートがアルスターコートになる。
・1870年 女性用のアルスター・コートも現れる。

ということで、ストーリーのある紳士コート、アルスターコートも一着揃えておこうか。

さて、明日は何着よう?

 

 

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松 甫松 甫 記事一覧はこちら>>表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2017年12月3日
ボットーネ 松のスーツ・ジャケットスタイル365 ありのままブログ | 背広紳士の知識
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