ドライクリーニングは意味ない?スーツ・ジャケットは出しちゃダメ??クリーニングの真実 ケアの達人に聞く服の寿命を延ばす秘訣
みなさんこんにちは。松はじめです。
「クリーニングって本当に服にいいの?」
「ドライクリーニングは頻繁に出しちゃダメって聞いたけど、本当?」
「高級スーツのお手入れ、どうしたらいいんだろう?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今日は千葉県君津市に工房を構える、ケアのスペシャリスト・ナチュラルクリーンの松村さんにお話を伺う機会がありましたので、クリーニングの真実についてお伝えしていきたいと思います。
ドライクリーニングの光と影 – プロが明かす真実
「ドライクリーニングは諸刃の剣なんです」
松村さんはそう切り出しました。10年以上にわたって高級スーツのケアに携わってきた彼の言葉には、重みがあります。
ドライクリーニングが持つ優れた特性
まず、ドライクリーニングの最大の特徴は型崩れのしにくさです。水洗いの場合、スーツの芯地が変形してしまう可能性がありますが、ドライクリーニングならその心配が少ないのです。
これは特にオーダースーツにとって重要なポイントです。なぜなら、オーダースーツは体型に合わせて繊細な立体裁断が施されているため、形状の維持が命となるからです。
また、都会で働く方のスーツによくつく、大気汚染による油性の汚れにも効果を発揮します。「電車の中や、オフィス街の空気には、目には見えない油性の汚れが含まれています」と松村さんは指摘します。
見落としがちな問題点
しかし、ドライクリーニングには注意すべき点もあります。
最も深刻なのが、汗への対応です。松村さんによると、ドライクリーニングでは水溶性の汚れ、特に汗の成分を完全に除去することが難しいとのこと。
「汗は放っておくと、時間とともに酸化して黄ばみの原因になります。特に白いワイシャツの襟や脇の部分は要注意です」
また、食べこぼしの処理も課題です。「カレーやソースなどの汚れには、水溶性と油性の成分が混在しています。ドライクリーニングだけでは、完全な除去は難しい」と松村さん。
さらに、定期的なドライクリーニングを繰り返すことで、生地が徐々に硬くなっていく傾向があります。これは溶剤による洗浄で、生地本来の油分も失われていくためです。
クリーニング溶剤の秘密
私たちの大切な服を預けるクリーニング。実は使用される溶剤によって、その仕上がりは大きく変わってくるんです。
主役は石油系溶剤
まず、最も多く使われているのが石油系溶剤です。街のクリーニング店で見かける、あの懐かしい香りの正体ですね。価格が手頃で扱いやすいため、多くのクリーニング店で採用されています。
「石油系は、極端な汚れ落ちはないものの、生地に対してやさしい溶剤なんです」と松村さん。確かに、一般的なスーツやジャケットのメンテナンスには、十分な性能を発揮してくれます。
ホテルで活躍する塩素系溶剤
次に紹介するのは、テトラクロロエチレンと呼ばれる塩素系溶剤です。
「なぜホテルのクリーニングは仕上がりが違うの?」
そう思ったことはありませんか?実は、ホテルでは防火の観点から、この塩素系溶剤を使用することが多いんです。
松村さんによれば、これは強力な洗浄力を持つ反面、生地本来の油分まで除去してしまう特徴があるとか。まさに諸刃の剣といったところです。
「塩素系溶剤は確かに汚れはよく落ちます。でも、ウールが本来持っている大切な油分まで取ってしまうんです」
プロが選ぶシリコン系溶剤
そして最後が、ナチュラルクリーンさんでも使用している、シリコン系溶剤です。
「価格は確かに高いです。でも、生地本来の風合いを損なわない。それに、手間を惜しまなければ、最高の仕上がりが期待できる」と松村さんは太鼓判を押します。
私も実際、シリコン系溶剤で仕上げられたスーツを見せていただきましたが、その艶やかさと柔らかさには目を見張るものがありました。新品のような光沢が戻っているんです。
ただし、このシリコン系溶剤での作業には、熟練の技術と時間が必要。そのため、一般のクリーニング店ではなかなか採用が難しいようです。
匠の技が光る、ナチュラルクリーンの特別なケア
先日、君津市にあるナチュラルクリーンの工房を訪問すると、そこには高級時計の修理工房のような、静謐な空気が漂っていました。
「一着一着に、その服だけの個性があり、その服に合わせたケアをしている」
作業台に並ぶスーツを眺めながら、私はそう感じました。
魔法のような、しみ抜きの技
私が特に目を見張ったのは、シミ抜きの工程です。一般的なクリーニング店では、すぐに溶剤での洗浄に入るところを、ここではまず丁寧な観察から始まります。
「このシミは油性か水性か。いつ頃ついたものか。生地の特性は何か。全て見極めてから処置を始めます」
松村さんの手元では、様々な専用の薬剤が使い分けられていきます。シミの種類によって薬剤を変え、つけ置き時間も調整する。まさに科学者のような正確さで作業が進んでいきます。
シリコン溶剤による究極の洗浄
一般的な溶剤での洗浄は、確かに手軽です。でも、本当にそれでいいんでしょうか?
松村さんがケアを行うナチュラルクリーンは、高価なシリコン系溶剤にこだわり続けています。
コストは上昇しても、お客様の大切な一着を預かる身として、これ以外は考えられないということなのでしょう。
またその後のプレスが困難であっても、しっかり水洗いを行うことで、皮脂汚れを落とします。
逆に、ドライだけでは皮脂汚れが落ちないままなのです。
匠の技が光る仕上げ工程
最後の仕上げでは、ハンドプレスと機械プレスを絶妙に使い分けていきます。
「機械プレスは確かに効率的です。でも、例えばお客様の肩の形に合わせて仕立てられた部分は、必ずハンドプレスで」
その手つきは実に繊細。プレスの温度、スチームの量、かける圧力まで、全てが経験に基づいて調整されていきます。
毎日の小さな習慣が、スーツを長持ちさせる
スーツって、結構デリケートなんです、
だから松村さんのここまでの言葉に、私は強く共感します。
毎日の小さなケアの積み重ねで、スーツの寿命は大きく変わってくるんです。
ブラッシングという魔法の習慣
私が表参道のサロンでお客様に最初にお伝えするのが、ブラッシングの大切さです。帰宅したら、たった30秒でいいんです。でも、この習慣が服の寿命を大きく左右します。
「見えない埃や汚れは、放っておくと繊維に潜り込んでしまうんです」と松村さん。確かに、クリーニングに出すと色が変わったように見えるスーツの多くは、実は蓄積された埃が原因だったりします。
スーツの収納と保管の秘訣
「スーツを締め付けるのは良くありません」
松村さんは、スーツの保管方法について特に強調されていました。クローゼットの中で、スーツ同士が密着していませんか?カバーは、ビニール製を使っていませんか?
スーツにも”呼吸”が必要なんです。通気性の良い不織布のカバーを使い、横の間隔も最低3センチは空ける。これだけで、スーツの寿命は大きく変わってきます。
特に日本の湿気の多い気候では、この”呼吸”が重要です。除湿剤の使用も効果的ですが、最近では天然の竹炭を活用する方も増えているそうです。
汚れへの対処は早めが肝心
「シミができたら、すぐに対処を」
これは松村さんが最も強調していた点です。特に食べこぼしは要注意です。シミは時間とともに繊維の中に浸透していきます。放置すればするほど、取れにくくなります。
かといって、自己流の対処は逆効果になることも。特に市販のシミ抜き剤の使用は要注意です。
「シミの種類によって、適切な処置方法は変わってきます。判断に迷ったら、すぐに専門家に相談してください」
プロの出番!こんな時はクリーニング専門店へ
シミができた時の緊急対応
シミは時間との勝負です。特に気をつけたいのが以下のような汚れです:
- 食べこぼし(特に油性の汚れ)
- 飲み物のシミ
- 雨染み
これらは時間経過とともに繊維の中に浸透し、除去が難しくなります。市販のシミ抜き剤による自己処理は、かえって状況を悪化させる可能性があるため、プロの判断を仰ぐことが賢明です。
衣替えシーズンのケア
特に気をつけたいのが夏物の収納前です。見えない汗の成分が繊維に残ったまま保管すると:
- 黄ばみの原因に
- 繊維の劣化を促進
- 臭いの元になる
「特に夏物は、クリーニングしてから保管することをお勧めします。見えない汗の成分が生地を傷めていきますから」と松村さん。
大切な行事の前に
フォーマルな場面で着用するスーツは、特に丁寧なケアが必要です:
- 結婚式や葬儀などの儀式
- ビジネスの重要な場面
- 就職活動
スーツの経年変化とケア
味わい深い経年変化のために
スーツは着用を重ねることで、以下のような変化が起こります:
- 生地の光沢の変化
- 風合いの変化
- 形状の変化
これらの変化に対して、適切なケアを行うことで、本来の品位を保つことができます。特にオーダースーツは、体型に合わせた立体的な仕立てが特徴のため、定期的な専門家によるケアが重要です。
まとめ:プロの技術が服を生かす
クリーニング、特にドライクリーニングは、適切に行えば衣服のメンテナンスに非常に有効な手段です。しかし、ただ漫然と出すのではなく、その特性を理解した上で、衣服に合った最適なケア方法を選択することが重要です。
松村さんの言葉が印象的でした。 「一着一着に、その服の個性があります。その個性を理解し、最適なケアを提供する。それが私たちの仕事です」
特に大切な一着、思い入れのある服については、ナチュラルクリーンさんのような専門工房による丁寧なケアをお勧めします。全国からの郵送対応も可能とのこと。ぜひ一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
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