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アイビースタイルの魅力と歴史 〜日本におけるアイビールックの源流〜

 

こんにちは、メンズファッションTV松はじめです。今回はメンズファッションの中でも特に人気の高い「アイビースタイル」について、ファッション業界の重鎮・高木晃一先生をお招きして深掘りしていきます。

この記事の目次

 

アイビーとは何か?その起源と意味

「アイビー」という言葉、よく耳にするけれど実際には何なのか?多くの方がそう思われているのではないでしょうか。

アイビー(Ivy)とは、英語で「蔦(つた)」を意味します。この名前の由来は、アメリカの古い名門大学のキャンパスに蔦が絡まっていることから来ています。アイビーリーグとは、アメリカ東部の名門私立大学8校(ハーバード、イェール、プリンストンなど)の集まりで、その歴史ある校舎には蔦が絡まっているのが特徴です。

高木先生によれば、アイビースタイルとは「アメリカの東部アイビーリーグの大学生のファッションスタイル」が起源であり、より具体的には「1955年から1965年の間のアメリカ人男性のドレスコード」と定義されるそうです。

日本におけるアイビールックの父:石津健介先生

日本にアイビールックを広めたのは、石津健介先生です。実は「アイビールック」という言葉自体が石津先生の造語なのです。

石津先生は1951年に大阪で石津商店を設立し、翌年、VAN(バン)という会社を立ち上げました。終戦後に米軍の将校(アイビーリーグ出身)の通訳を務めていた経験から、アイビースタイルに触れる機会があり、それを日本に広める先駆者となりました。

特筆すべきは、石津先生の語学力です。英語だけでなく中国語も堪能で、戦前は中国・天津で活躍されていたそうです。そのような国際的な視野と経験が、日本のファッション界に新風を吹き込んだのでしょう。

石津健介先生と「TAKE IVY」

アイビースタイルについて語る上で外せないのが、『TAKE IVY』という写真集です。これは1965年、東京オリンピックの翌年に出版された伝説的な一冊で、カメラマンの林田昭慶氏がアメリカのアイビーリーグの大学を訪れ、学生たちのファッションを撮影したものです。

高木先生によれば、当時のアメリカ人からすれば「なぜ学生の普段着を撮影するのか?」と不思議がられたそうですが、現在では貴重な文化資料として評価され、英語版も出版されています。まさに日本人が見出した「アメリカファッションの美学」と言えるでしょう。

アイビースタイルの特徴とアイテム

アイビースタイルの代表的なアイテムと言えば:

  • ツイードのジャケット
  • ボタンダウンシャツ
  • ブレザー
  • ローファー

これらのアイテムは工業生産された高品質のもので、きちんとミシンで縫製されています。高木先生いわく、「アメリカントラディショナルは日本人に一番似合う」スタイルだそうです。

時代背景とアイビースタイルの変遷

なぜアイビースタイルが1955年から1965年頃に花開いたのか?それには時代背景があります。

第二次世界大戦後、日本が焦土と化す中、アメリカ本土は直接的な攻撃をほとんど受けませんでした。そのため、1950年代から60年代のアメリカは「黄金時代」と呼ばれる繁栄の時代を迎えます。中間層がしっかりと存在し、豊かな社会が形成されていました。

しかし、1960年代後半からベトナム戦争の泥沼化により、アメリカ社会に大きな変化が訪れます。反戦運動が高まり、若者たちの間で「髪を伸ばす」文化が広がりました。これは「徴兵されて髪を短く刈られたくない」「戦争に行きたくない」という象徴的な意思表示でした。

こうした社会変化に伴い、ファッションも大きく変わります。長髪にTシャツ、デニムというカジュアルスタイルが台頭し、それまでのドレスコードが崩れていったのです。

映画に見るアイビースタイル:「卒業」

アイビースタイルを象徴する映画として、1968年公開の「卒業」(The Graduate)があります。主演のダスティン・ホフマンはツイードのジャケットにボタンダウンシャツという典型的なアイビースタイルを纏っています。

この映画は東海岸の大学を卒業して地元に戻ってきた若者が、親の友人の妻と不倫関係になり、さらにその娘とも恋に落ちるという複雑な物語です。ラストシーンでは、娘の結婚式に乱入して花嫁を奪い去るという衝撃的な展開を見せています。

高木先生は若い頃は「真実の愛とはこういうものか」と感動したそうですが、年を重ねると「娘を奪われ、妻も誘惑された父親の立場」を考えると見方も変わると言います。ファッションだけでなく、映画の見方も年齢と共に変化していくという興味深い視点です。

アイビースタイルの今日的意義

アイビースタイルが60年近く経った今でも愛され続ける理由は何でしょうか?

それは「普遍性」にあると言えるでしょう。高木先生が指摘するように、60年前のファッション指南書が今でも通用するというのは、メンズファッションの特徴です。移り変わりの激しいレディスファッションとは対照的に、メンズファッションには長く愛されるクラシックな要素があります。

特にアイビースタイルは、単なるトレンドではなく、一つの文化として定着しています。日本人が体型的にも似合いやすいという点も、長く愛される理由の一つでしょう。

おわりに

今回はアイビースタイルの基本的な概念から歴史、日本での展開までをお届けしました。次回はさらに詳しく、アイビースタイルの具体的なコーディネートやアイテム選びについてお話ししていく予定です。

ファッションは時代を映す鏡です。アイビースタイルを知ることは、戦後のアメリカ社会や日本のファッション史を知ることにもつながります。そういった意味で、単なる着こなしの問題を超えた文化的価値があるのです。

最後に、高木先生のおっしゃった言葉で締めくくりたいと思います。「コンテンツというのは、一度こうして作ると、いつか違う人の役に立つものです。2年半前に変えた方が、今年の春にまた役立てたりしたら、それが一番嬉しい」

皆さんのファッションライフにも、このブログが少しでもお役に立てば幸いです。

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2025年6月4日
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