メンズ素材の講義

本日は我々テーラーが勉強する会というものを開催した。
素材の神と呼ばれる、大西基之先生をお招きし、
33歳の若手テーラーをはじめ、オーダー業界の人間が講義を受けた。
もちろん私も弊社クルーも、ノートは片時も離さずメモをとった。
大西先生は大手企業での研修を定期的に行っているが、
このように1テーラーを中心に行う会は初めてで、
まだ雪が降りしきるころから企画をし、ついに実現した。

バッグから出てきたのは、原毛、メリノ羊毛だ。
大西先生は昭和41年、メンズファッション専門学校の、1期生。
あいうえの苗字が不在だったため、番号は001番だ。
この学校は今はないのだが、
現在パリで活躍中の鈴木健次郎氏も卒業している。

まるでABCクッキングスタジオのような光景だが、
テーブルにズラリと並んだのは、原毛。
さすが受講者がテーラーだけあり、その感触を確かめるべく自然と手が伸びる。
昭和47年、ダーバンに第一回目のデザイナーとして入り、
それまでの時代は生地屋が持ち込んできた生地から選んで服を作っていたのが、
尾張一之宮に乗り込んでいって、生地から企画するという、他がやらないことを手掛ける。
ところが当時、織元といえば、技術者がいる。
作る技術はあるのだが、ファッションはまったく考えていない。
だから何のためにその糸を開発するのか?が技術者にはわからない。
大西先生はファッションから入っていったため、
ファッションのためにこの生地が必要、ということがわかるわけだ。

御覧のように、同じ原毛でも色が違う。
大西先生曰く、【チョッキを着せて育てるとどうか(手前)。こっち(奧の原毛)は臭いもキツイ、うちの犬みたいな臭いがする 笑】

こんなことがあったそうだ。
ある店舗にいったとき、
グレンチェックが裏返って売られていたそうだ。
花屋だって、
花の名前を覚えるところから始まる。
しかし、メンズには学ぶ場所がない、
だから大西先生は講義をするのだ。

英国羊毛 シロップシャー。
紳士服地に使われる羊毛原料のうち、メリノ種以外の羊毛はほとんどは英国羊毛で、品種は60種類を超える。
英国羊毛は強度と弾力性が特徴で、触ってみると、非常に荒い。

キャメルの原毛はいわゆるキャメルカラー。
日本で古くからあるキャメル(ラクダ)色は、必ずしも正確にキャメルヘアーを用いた生地の色ではなく、
そのカラーからくるイメージで呼ばれたもので、
カシミア、リャマ、ヴィクーニャなどとウールをブレンドしたものなどを指していることが多かったとのことだ。

キャメル素材でコートを仕立てるとこのようになる。
写真のコートとは異なるが、キャメルといえばポロ競技者に好んで着られたことから観戦者に広がった、ポロコートもトラディショナルアイテムの一つだ。

モヘアの原毛は非常にハリコシがある。
この季節のスーツ、ジャケット地として通気性が良く重宝する。
本講義の冒頭であったが、
生地というのは、素材であるわけだ。
しかし、パソコンにしてもカメラにしても、自動車にしても、
重要なのは機能や能力だ。
画素数がどうかは重要だが、
プラスチックがどうであり、何製か、というのは二の次で、
むしろ問題ではない。
だが、織物における素材とは決定的に違う。
テーラーの扱う素材は、
まず、色、柄を決める。
スタイリングやデザインもあるが、
第一優先は色・柄・風合いだ。
ではそれがどこに紐づいているのかといえば、
原料そのものになる。
こんな色でこうコーディネートしたい、
それが生地にくっついている。
だから生地が大切なのだ。
ましてテーラーが扱うのは、
生地=製品。
既製品なら着用してみて合うか合わないかが言えるが、
テーラーは基本的には生地を提案して、
そのテーラーを信頼して顧客が作る。
生地が大切なのだ。

この講義は今後も、
◆毎月第一火曜、
◆10:00~13:00
◆5,000円(事前申し込み制)
◆株式会社ボットーネ内で開催しており、
テーラー、アパレル販売に携わる方、洋服店オーナーなど、
学ぶことでより良い提案を、と考えている方にピッタリだ。
興味のある方は申し込みフォームからご申請を。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2016年7月8日
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