スラックスについて考えてみる
衣替えをした矢先この寒さですから、この時期は油断できません。
暖かく過ごしやすい春の陽気がますます待ち遠しいですね・・・
雨も勘弁、今週あたりでニットも着納めとなってほしいものです。
さて、本日は「スラックス」について考えてみたいと思います。
何を今さらという感じですが、イタリアではスラックスのみの仕立て専門店があり(日本でもあります)、それだけ重要なアイテムですよ!ということです。
※ここでいうスラックスは、単体というよりもスーツとしてのスラックスの意。
この記事の目次
良いスラックスとは何か?
まず、皆さんにとって”良いスラックス”とはなんでしょうか?
重視するポイントは人それぞれあると思いますが、色味が好みであったり、シルエットが気に入るもの、あとはフィット感がいいもの、動きやすいもの、などが上がりますでしょうか。
つまり、目で見て判断する視覚的要素と、体感として自分自身で感じる要素に分けられると思います。
「履きやすくて、美しいもの」シンプルですが、この言葉に集約されます。
「セビロにかぎらず、すべての衣服は、まず実用的でなければならず、そしてこの実用性から発した要素がデザイン的に高められたものであるべきである。着やすさがそのまま美しさに、美しさがそのまま生活の豊かさに結びつく、といった可能性を持ったものでなければ、それは美術骨董品と同次元のものになってしまう。」
セビロの哲学 星野醍醐郎著(1968年)
素材の神、大西基之先生のさらに先生である星野醍醐郎氏の本の中の一説。
こんなに昔から本質的なことは変わらないのが紳士服、スーツのおもしろさだと思います。
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履きやすいとは何か?
履きやすさは、例えば私のようなフィッターや、一緒に買い物をしている奥さん、ショップの店員さんでは絶対に分からないこと。
「このパンツ、履きやすいですよ!」と言われても、そんなの履いてみない限り判断できません。
見た目ではなく「どう感じるか」ですから、外野がとやかく言うことではないのです。
ピタッと細身にフィットした履き心地を好む人もいれば、
ヒップから裾にかけてたっぷりゆとりのある履き心地が好きな人だっています。
タイトもフィットですし、ルーズもフィット。
正解は、その人自身しか持っていないのです。
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美しいとは何か?
最近流行りのオーバーサイズのパンツを履いて、「これ最高、シルエットがいい!」と思う人もいれば、
「いやいや、ダボダボだよそんなの。」と良く思わない人もいるはずです。
くるぶし丈のスラックスは、「すっきりしてスマートで良い!」「いやいや、つんつるてんだよ。」と意見が別れるでしょうし、
テーパードシルエットのスラックスは「今風でカッコいい!」「いやいや、若い感じがして嫌だな。」なんて言うかもしれません。
いわゆる「トレンド」として認識されるものは、「=美しい」ではないことを忘れてはいけません。
何事も突出しすぎると見る人によって意見が分かれるものです。
最近はSNSで多くのファッション・インフルエンサーの着こなしを学ぶことができますが、
私個人としては、どうも「軍パン」とジャケットを合わせるスタイルが美しいとは思えません・・・。
分かる人は思い浮かべてほしいのですが、あれ、普通の人が見たら絶対変だと思いますよね笑
ちょっと話がズレましたが、我々ファッション業界人は、もっと現実の世界も見なければならないと思います。
夢を与えるのも必要ですが、仲間内だけで「おしゃれ!」とか「その組み合わせは斬新だね!」とか、
それだけが先走りすぎてしまうと、大きな違和感を持ってしまうのではないでしょうか。
社会に出て、ビジネスシーンでスーツを着用するのであれば、見ている人全員に100点…とまではさすがにいかなくとも、70点くらいは出せるような服が、大多数の社会人が求めるものだと思います。
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ボットーネの考える良いスラックス
『履きやすくて、美しいもの』をボットーネとしても考えてみたいと思います。
というか、確固たるものがありますが、説明したことはないなと、、、
まず、『履きやすい』は、『ストレスがない』と置き換えることができます。
一日中履いていて違和感がなく、座っていても、膝を曲げた時も、窮屈さを感じない絶妙なサイズ感が人それぞれあります。
脚は特に筋肉の付き方に差があり、例えば学生時代にサッカーをしていた人は太ももが大きく、中には脹脛まで鍛えている方もおり、僅か5mmの幅の違いで大きな着心地の差が生まれてしまいます。
そういう方に限って、無理してテーパードの細身のスラックスをパツパツな状態で着ているのです。
やはり『履きやすさ』においては、適度なゆとりがなければならないと思っています。
次に『美しさ』について。
先程、トレンド=美しいではない、と言い切ったものの、もちろん一切無関係というわけではなく、時代性をある程度帯びていなければ周囲と調和のない違和感のある服になってしまいますから、トレンドも欠かすことはできません。
ことスラックスにおいては、分かりやすいのが太いのか、細いのか、長めか短めか、などがあります。
そして、トレンドの先端を追いかける人と、やや遅れてトレンドを取り入れている人、流行に無関心な人は世の中に同時に存在しており、そう考えるとやはり適度に流行の範囲に収まっていることが『見て美しく感じる』重要な要素な訳です。
ただ、トレンドに振り回されているのはどうもみっともなく、自分軸にスパイス程度に振りかけるだけでいい。
テーパードがお好きであれば、自分の足の筋肉の付き方に合うテーパードであればいいだけ。
そこを調整できるのがオーダーの良さであり、その人の為に仕立てられたスラックスは、その人が履いてこそ初めて形となる。
美しさは「その人に合っていて、極端でないこと」がとても重要だと思います。
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最後は着る人
「見て美しい」というのは洋服単独に存在するのではなく、着る人全体が持っている“着こなし”によることが少なくありません。
イケメンとかスタイルがいいとかそれだけではなく、しっかりと手入れがされていたり、姿勢を良くしたり、これから意識すればできることの方が遥かに重要です。
私自身結構猫背なのですが、Youtubeで見たストレッチを続けていたら、自分でもびっくりするくらい姿勢が良くなり、ジャケットを着た時もかなり見た目が良くなりました(スラックス関係ない)。
良いものがあっても、最後は人がそれを完成させます。
最終的に何の話やって感じになりましたが、スラックスひとつとっても、洋服って奥が深いってことです。
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。その後、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2022年4月5日
ファッションアイテム | オーダースーツ
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