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明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術

オーダースーツの生地の良し悪しの見分け方と国別メリットデメリットを解説

松はじめです。

既製品でもオーダースーツでも、生地がないと服はできません。

スーツでなくともそうなのですが、スーツを注文するという上では、生地を選んだり提案されたりするので、生地のことは多少なりとも知っていて損はありませんよね。

また、選んだ生地が全てとなってしまう現状もあり、あ・・こんなはずじゃなかった!と、仕上がりを左右するのも生地の影響は小さくありません。

そこで本日は、オーダースーツ選びで重要になってくる生地について、

・国によってどんな違いがあるのか?

・どうして価格が違うのか?

・どうやって良し悪しを確かめれば良いのか?

ということを、仕立屋を10年続けてきた私からお伝えしてみます。スーツは、ビジネスマンにとっては重要なアイテムです。

ぜひ、これからどこかでオーダースーツを作ろうかな・・と考えている方は参考にしてみてください。

この記事の目次

オーダースーツの生地の国別の種類

既製品にしても、オーダースーツにしても、何かしらの生地が使われて服になっています。

その生地は、どこの国の生地か?

まずは、大きく分けて3つがあげられます

・イギリス

・イタリア

・日本

主にこの3つの国は、織元(ミルといいます)があります。

その他、

・フランス

・中国

・バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)

などの生地というのもあります。

(厳密には、フランスには現在はほとんど織元はなく、企画している商社があります。)

隠れた名品もある日本のオーダースーツ生地

日本のオーダースーツ生地というと、非常に安価な生地から、海外生地よりも高価な生地までいろいろあります。

が、国産と称しつつも結構中国で織っているのが現状です・・大きな声ではいえませんが。

ほとんど国内では織っていません。

そんななか、例えば非常に良い織元としては、御幸毛織や、以前見学させていただいた葛利毛織など。

日本だから良い・悪い・高い・安いというよりは、日本のスーツ生地づくりの背景を知ると特徴が見えてきます。

そもそも、日本はイギリスから紡績の技術を学びました。

だから、日本の生地の織元が集まっている(集まっていた・廃業した会社が多いです)尾張一宮は、イギリスのヨークシャーのハダースフィールドという織元が集まっている地域とよく似ています。

織るところ、色を染めるところなど、それぞれが分業しています。

またハリ・コシのあるイギリス生地に似た、耐久性の高い生地も少なくありません。

日本の織元の多くは、織機を扱う人が工業高校・大学出身者の柄師(がらし)という職人さんです。

デザイナーではないので、色や柄の華やかさに欠けるのでしょう。

  • 良い点:関税がかからないためお値ごろ・機能性が高い素材もある
  • もうちょっと:色や柄に華やかさに欠ける

色・柄が豊富 柔らかいイタリアのオーダースーツ生地

イタリアの生地は、その色・柄が豊富です。

例えばネイビーといっても、ただのべったりしたネイビーもあれば、ナポリの海のような色鮮やかなネイビーまで豊富です。

どうしてか?というと、イタリア人の持っている感性というしかないでしょう。

青い海、美味しいピッツァ、照りつける太陽と陽気な人々からは、色も柄も豊かなものが生まれてきます。

アリストン 生地

また、そもそもはイギリスの貴族の服を作っていたのがイタリア。

イギリスの服というとダークトーンが基本です。

それとの差別化に、色を豊かにしたとも言われています。

ARISTON アリストン 生地

また、現在のイタリアでは日本やイギリスと違い、分業で生地を作るのではなく、一貫紡(いっかんぼう)といって羊の原毛をいれて、糸にして、染色して生地として織るまでを自社で一貫して行うところがほとんどです。

そのため、独自の色や柄が生まれる要因にもなっています。

イタリアにある仕立屋(サルト)をまわって、写真に残されている長谷川喜美さんは、カノニコというイタリアの生地の織元支援のもと、いろいろなサルトを取材されました。この写真集は圧巻ですが、トークイベントでもおっしゃっていましたが、イタリアの方々の気質は独特です。

  • 良い点:色・柄が豊富
  • もうちょっと:耐久度が低い

構築的で耐久性の高いイギリスのオーダースーツ生地

イギリスは、王室もあり島国で、その点では日本に似ていますが、かつては日の沈まない国はない、というくらい植民地を持っていました。

その中で、生涯に渡って着るスーツを仕立てるのが文化です。

各国のスーツに対しての文化・考え方の違いはこちらの記事で紹介しています。

だから、まずは耐久性が高いのが基本なのです。

サヴィルロウ

また、イギリスで有名な仕立屋街でサヴィルロウがありますが、こちらの昔のビスポークというと、分厚い生地をアイロン操作で曲げて、鎧のような服を作るのです。

だから、当然分厚い耐久性の高い生地が求められていました。

ハダースフィールドフェインウーステッド

今はだいぶ薄手になりましたが、1930年くらいの舞台の映画などを見ると、かなり肉厚の生地を使ったスーツを着ていることがわかります。

また、イギリスのスーツを着る金融街というと、基本はネイビーやグレー、靴は黒といったスタイル。

ファッションではなくビジネスとして信頼の証としてのスーツなので、色も柄もシックなのです。

  • 良い点:耐久度高く、堅牢
  • もうちょっと:華やかさに欠ける

オーダースーツ生地の価格の違いとは?

生地の価格を決めるのは主に、

・原毛の繊維の細さ・太さ

・ウールの品質

・素材の種類

これら3つの要素があるといえます。

もちろん他にもいろいろとあるのですが・・。

1:原毛の繊細さが大事

スーパー 生地 表記

糸は、もともと糸だったわけではなく、羊の棉(原毛)から糸にしています。

その原毛の繊維の細さ・太さは生地の価格に関わってきます。

一概にはいえないのですが、繊維が細くて繊細だと、生地自体の価格が上がります。

原毛の太さ・細さの単位はスーパーで表記されます。

よく、番手(糸の太さ)と間違われがちなのですが、スーパーは原毛の繊維長の太さのことです。

2:羊の状態はかなり重要

ワインではないんですが、羊には品評会なるものもあるほどで、ウールブローカーと呼ばれる人間は、そこでたくさんの羊毛をオークションで取引します。

時には舐めて評価する、という方もいるほどです。

繊維の太さ・細さもそうですが、そもそもの羊毛の品質で価格が変わります。

極端にいえば、同じ広さの牧場に1万頭の羊を飼っているか?100頭だけ飼っているか?

餌や、飼育環境で羊の状態は大きく変わります。

大切に大切に、それこそベストを着せて育てるという家族経営の牧場もあるくらいで、そうした羊は良い羊毛が取れるため、高価になるわけです。

3:どんな素材がブレンドされているか?

スーツというのは、実はウール以外にも使われていることがあるんですね。

つまり、生地を構成している素材でも価格は変わるわけです。

カシミア

スーツに使われている素材というと、ほとんどがウールでしょう。

ですが、その他いろいろな素材が一緒に織られていることがあります。

例えば、カシミア。

コートなどにも使われるカシミアは、高価なイメージですね?

これは、実際に大量にとれるものではなく、山地に生息する山羊の毛でもあり、どうしても希少で高価になります。

カシミア山羊には細い産毛と刺毛がありまして、脱毛するのですが、脱毛前にできる限り刺毛を抜かないように綿毛を抜き取る、それであとで刺毛を切り取るのが最上の採毛方法と言われます。

カシミアはウールではありませんので、厳密にはスーパーで表記することはできませんが、カシミアをスーパーに置き換えると、スーパー180’s〜190’s程の原毛の繊維の細さになります。ウールと比べると、とても繊細というわけですね。

モヘア

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モヘアは、アンゴラ山羊の毛。

しゃりっとしていて、夏のスーツなどに向いています。

夏ジャケット、ニットなどにも使われることがあり、山羊毛ということでウールよりも白いため染めた時の色も綺麗です。

写真のように、モヘアはとても白いのです。

アンゴラ山羊は2歳過ぎから毛が太くなります、そこで生後6か月までの子山羊の毛(キッド・モヘア)が珍重されているのです。

ポリエステルなど化学繊維

化学繊維というと、ポリエステル、レーヨン、テクラナ、ポリアミドなどいろいろとあります。

羊の毛や山羊毛といった天然繊維とは違って、要するに人工的に作った素材です。

強度を増すために入れている場合や、シワになりづらくする、ストレッチを効かせるなどの目的で入れているケースもあります。

当然ですがコストとしては天然素材より安価に仕上がる傾向があります。

どうやって生地を見分ける?

さて、ここまで色々とご紹介してきましたが、では一体どんな風にその良い生地というのを見分ければ良いのでしょう?

ここからは仕立屋として、私がチェックしている方法も含めご紹介したいと思います。

手に残るオイル感

ちょっとマニアックですが、生地の見本を指でキュキュッとこすります。

この時、程よい油が手に残る生地は、良い生地です。

べたっとするなら、それは本来の羊が持っていた油分に、さらに加工を重ねていると感じます。

これは回数を重ねないとわからないと思うので、すぐ応用できるものではないかもしれませんが、良い生地は触れると必ずわかります。

ブランドと数値を見ない

よく、服を買う時に値札を見ないように!とレクチャーするスタイリストの話を聞きます。

以前取材させていただいた、安積陽子さんも、値札を見ずに服を試着して、買いたいかどうか?感情は?値段は?とあとで確かめて感性をやしなう方法について書かれていたことがあります。

同じように、この生地のスペックは?ブランドは?などに左右されてしまうと、実の感覚を大切にできません。

もちろんこの方法には失敗というリスクもあるようには感じますが、結果として感性を養って、買い物の失敗を減らせると断言できます。

私の素材の師匠である、大西基之先生も、まず生地に触れて、良いかどうか感覚を大事にせよ!とおっしゃっていました。

仕立屋と友達になる

これを言ってしまうと元も子もないように思いますが、やはり仕立屋やデザイナーは生地と触れ合って生きています。

あなたにも専門分野があるように、仕立屋やデザイナーたちは生地を専門とし、もっぱら触れています。

だから、本当に良い生地を感覚的にも論理的にもわかっているはずです。

はずです、と書きましたのは、当然力量があります。

だからこそ、かかりつけの医師のように、かかりつけの洋服屋さんを持つのが近道です。

名医の友人がいたら心強いですよね?

かかりつけの洋服屋の友人がいたら、これもまた心強いというわけです。

まとめ

オーダースーツを構成する生地。

生地は、特に既製品ではなくスーツ選びにおいて出発点ですね。

生地を選ぶところからスタートするお店も少なくありませんから。

そして、それが全体を大きく左右するわけです。

ぜひ失敗しないオーダースーツ作りをするために、参考にしてみてください。

さて、明日は何着よう?

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2019年11月19日
オーダースーツ | オーダースーツの生地

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