生地選びの基本│あなたに合ったスーツの見つけ方
私たちのサロンを訪れるお客様からいただくご質問の一つに、「高い生地と安い生地には、一体どのような違いがあるのですか?」というものがあります。
一見すると同じように見えるネイビーやグレーの生地でも、実はその裏側には、美しさ、耐久性、そして着心地を左右する決定的な違いが隠されています。
本日は、プロの視点から「生地選び」に焦点をあてて、詳しく紐解いていきたいと思います。
この記事の目次
「美しい光沢」と「ぬめり」

まずオーダースーツ店で取り扱っている生地には世界各国の様々な生地があります。
絶対数は多くはありませんが、日本でも生地を織っていて、その他ここ最近では中国の生地も少なくありません。
しかし、やはりオーダースーツの生地といえばイギリス、イタリア、フランスなどが有名ではないでしょうか?
特にイタリアの高級生地を手にした瞬間、誰もが最初に驚くのはその生地が持つ美しさです。
例えば、イタリアの名門ロロ・ピアーナやフランスのドーメルの生地は、一目見てそのオーラに圧倒されるような美しい光沢を持っています。
これは繊維の細さと均一性が生み出す輝きであり、リーズナブルな生地が比較的落ち着いた光沢であるのに対し、高級生地は絹のように滑らかで、手のひらに吸い付くような「ぬめり」を感じることができます。
この視覚的な高級感は、単なる「おしゃれ」を超えて、ビジネスの場では信頼感やエグゼクティブとしての風格を演出する強力な「武器」となります。
「繊細な生地=良いスーツ」という誤解

「スーパー150’s」といった専門用語を耳にしたことがあるかもしれません。
これは原料となる羊毛の細さを表す数値ですが、ここに生地選びの大きな罠があります。
確かに、スーパー150’sや160’sといった極細の繊維で織られた生地は素材としての希少性も高く、シルクのような質感と極上の着心地を提供してくれます。
しかし、繊維が細いということは、それだけ繊細であることも意味します。
繊細な生地は美しい光沢と滑らかな手触りで本当に着心地も良いのですが、それ故にシワになりやすく、毎日のハードな着用には耐えられない場合もあります。
「高級な生地が一番!」なのではなく、どんなシーンで週何回着るのか?によってその人のライフスタイルに合う生地というのは変わってきます。
耐久性と実用性を見極める

前述のとおり、高級な生地は「耐久性」は高くないケースが多く、この点もスーツ選びの奥深さです。
英国産のハリソンズやスキャバルといったブランドのクラシックな生地は、決して安価ではありませんが、その価値は「強さ」にあります。
これらの生地は「目付(生地の重さ)」がしっかりとしており、1日中動き回ってもシワが目立ちにくく、クリースライン(スラックスの折り目)も消えにくいという特徴があります。
ある程度の価格帯の生地においても、比較的光沢が控えめかつある程度ハリコシがあって、耐久性の高いしっかりした生地が多く、シワになりにくく、実用的な側面を備えているケースが多いです。
しかし、格安の生地や、機能性を重視したポリエステル混の生地などは、ストレッチ性や防シワ性に優れている一方で、ウール特有のふくらみや上品な光沢を再現しきれないことがあります。
近年の技術向上により、一見しただけではウール100%と遜色ないほど「高見え」する優れたストレッチ素材も登場しており、用途によっては非常に賢い選択肢となります。
生地は中等、仕立ては上等という考え方

最も重要なことは、良い生地を選べば必ず「良いスーツ」になるわけではない、という事実です。
私たちはよく「車」に例えてお話しします。
どれほどフェラーリのような美しいボディ(高級生地)をしていても、エンジン(仕立て)が軽自動車のものであれば、それは真のフェラーリとは呼べません。
オーダースーツの世界では、「仕立ての良さ」が着心地を左右し、さらに高級な生地は非常に繊細で扱いが難しいため、職人によるアイロンワークや丁寧な縫製技術があって初めて、その美しさが最大限に引き出されるのです。
逆に言えば生地はどのお店にいっても目当ての生地を見つけることは可能で、たとえ同じ生地でも『オーダースーツがなんと1着2万円から!』と謳っているお店と、1着10万円以上するお店とで価格差があるのはこの点が大きく関わっています。
あなたのライフスタイルに最適な「価値」を選ぶ
高い生地と安い生地の違いは、単なる「質の差」ではなく、「用途の差」であると私たちは考えています。
- 重要な商談や勝負の1着を求めるなら、ドーメルのアマデウスのような、光沢と耐久性のバランスに優れた高級生地をお勧めします。
- 週に何度も着用する頼れる相棒が必要なら、ハリソンズのリージェンシーのように、丈夫で品格のあるクラシックな生地が最適です。
- 出張やアクティブな動きを重視するなら、最新の技術を駆使した機能性ストレッチ素材が、あなたのパフォーマンスを支えてくれるでしょう。
ボットーネ表参道では、単に高い生地を勧めることはいたしません。
お客様が「そのスーツを着て、どのような自分になりたいのか」を深くヒアリングし、世界各国の様々な生地の中から、あなたにとっての「最適解」を共に見つけ出します。
表参道の静かなアトリエで、実際に生地を手に取り、その質感の違いを五感で確かめてみてください。
皆様の日常を彩る特別な一着を仕立てるお手伝いができる日を、心よりお待ちしております。
ライター:その他クルー
2026年5月15日
オーダースーツ ボットーネのブログ | 明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術
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