アイビースタイルを学ぶなら観るべき5本の映画
皆さん、こんにちは。メンズファッションTVの松はじめです。
前回の「アイビースタイル特集」が大好評だったので、今回は特別ゲストとして高木晃一先生にお越しいただき、アイビースタイルを学べる映画を5本ご紹介いただきました。ファッションは映画から学ぶという素晴らしい視点で、皆さんのコーディネートに役立つ情報をお届けします。
なぜ映画からファッションを学ぶのか
高木先生によれば、映画は時代を映す鏡。ファッションも時代とともに変わるので、自分が生まれる前の時代のファッションを目で見て耳で聞いて楽しめるのが映画の魅力です。昔の格好をそのまま真似するのではなく、コーディネートの参考にしたり、そこから自分なりのアレンジを加えたりする楽しみ方もあります。
今回は特に1960年代から70年代初頭のアメリカ東部、アイビースタイルが見られる映画を中心にピックアップしました。それでは、公開年代順にご紹介します!
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1. ティファニーで朝食を(1961年)
まず1本目は1961年公開の『ティファニーで朝食を』。オードリー・ヘプバーンの名前は誰もが知っていますが、実は男性ファッションの視点から見ると、ジョージ・ペパード演じる小説家志望の青年のスタイルにも注目すべきです。
この映画の舞台となった1960年代初頭は、アメリカ社会の黄金時代。経済も安定し、社会も安全で、いわゆる「ゴールデンエイジ」と呼ばれていました。ジョージ・ペパードのスーツ姿、ジャケット姿、カーディガンの着こなしは現代のアイビースタイルにも参考になります。
特徴的なのは黒のニットタイの使用頻度の高さ。当時のニューヨーカーは、貧乏であってもきちんとした服装を心がけていたというメッセージが、この映画からは伝わってきます。ヘンリー・マンシーニの名曲とともに、60年代初頭のニューヨークのファッションを楽しめる一本です。
2. 卒業(1969年)
次は1969年公開の『卒業』。この映画は外せません!ダスティン・ホフマン演じる主人公が、東部の名門大学(アイビーリーグ)を卒業して故郷に戻るシーンから始まります。
冒頭からホフマンはツイードのジャケットに3つボタン。まさに当時のアイビールックそのものです。この映画が1969年に公開されたことで、日本ではアイビースタイルが再度注目される契機になりました。
映画のストーリー自体も興味深いのですが、ファッションという観点では、主人公の着こなしから当時の若者のスタイルを学ぶことができます。ツイードジャケットに3つボタン、アイビーの定番アイテムがしっかりと描かれています。
3. 愛の狩人(1973年)
3本目は『愛の狩人』。これは『卒業』と同じマイク・ニコルズ監督作品で、1973年の公開です。
この映画は大学の寮で出会った性格の全く異なる2人の若者の友情と、その後の人生を追った物語。一人は真面目で誠実、もう一人は女性を肉体関係だけで見る、という正反対の2人が、大学時代から社会人になり、40代くらいまでの人生を描いています。
ファッションの観点から見ると、学生時代はペニーローファー、卒業して弁護士になるとタッセルローファーになるなど、ワードローブの変遷が楽しめます。学生時代から社会人への移行に伴う着こなしの変化、成功していく過程でのスーツのグレードアップなど、服装の変化を通じて人生の変遷を感じられる作品です。
4. ラブ・ストーリー(1970年)
4本目は1970年公開の『ラブ・ストーリー』。現代版のロミオとジュリエットとも言える悲恋物語です。
この映画が作られた1970年は、アメリカではベトナム戦争の影響で反戦運動が盛んになり、ファッションも50年代・60年代初頭のアイビースタイルからデニムが主体になってきた時代です。しかし、この映画では古き良きアメリカのスタイルが描かれています。
舞台はハーバード大学とラドクリフ女子大。主人公のスタイルから「これは絶対ハーバードだ」とわかるのが、ネクタイとマフラーのカラー。スクールカラーで統一されたスタイルがハーバードの伝統を表現しています。
当時のアメリカの若者の多くはジーンズスタイルに移行していた時代にも関わらず、この映画ではまだジャケットを着たり、セットアップのニットを着たりと、60年代のファッションが継続しているのが特徴です。これは意図的に富裕層の若者を描くための演出だったのかもしれません。
5. ペーパー・チェイス(1973年)
最後の5本目は『ペーパー・チェイス』(1973年)。「ペーパー」とは試験のことで、「チェイス」は追いかけるという意味。ハーバード・ロースクールが舞台の学園ドラマです。
アメリカの名門大学、特にロースクールでは、入学は比較的簡単でも卒業が難しい。鬼教授と呼ばれる教員が次々と学生を落とし、最後に残った者だけが栄冠を勝ち取るという厳しい環境が描かれています。
この映画の中で特に注目したいのは、1973年のロースクールに通う学生たちのスタイル。当時でもTシャツ一枚で授業に来る学生はおらず、皆きちんとした服装で学ぶ姿勢が描かれています。現代と比べてカジュアル化しすぎている現状を考えさせられる作品でもあります。
ストーリーとしては、田舎から来た真面目な主人公が、一度離婚経験のある女性と出会い恋に落ちる。その女性が実は鬼教授の娘だったという展開で、主人公は彼女のために一層勉強に励み、最終的に試験を通過して教授を見返すという青春物語です。
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ファッションは文化であり、生活の豊かさ
これら5本の映画を通じて学べるのは、単なるファッションの知識だけでなく、その時代の学生文化や社会背景です。アイビースタイルの基本は東部の大学生のスタイルにあり、それを映画から学ぶことで立体的な理解ができます。
高木先生は「最近はカジュアルすぎる」と指摘します。冷房の効いた環境の中、Tシャツ一枚で過ごすのは、生活の変化がなさすぎるのではないか、という問題提起です。服装を楽しむことは人生の豊かさにつながる文化であり、新しい服を手に入れると出かけたくなる、そんな前向きな気持ちも生まれてくるのではないでしょうか。
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おわりに
今回ご紹介した5本の映画:
- ティファニーで朝食を
- 卒業
- 愛の狩人
- ラブ・ストーリー
- ペーパー・チェイス
これらはどれも今すぐ視聴できる作品ばかりです。マニアックなものではなく、楽しみながらファッションの参考にできる内容となっています。
皆さんも是非、これらの映画を通じてアイビースタイルを学び、自分のファッションに取り入れてみてはいかがでしょうか。年齢を重ねると外出する機会が減りがちですが、おしゃれをして出かけることで人生がより豊かになるはずです。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2025年5月3日
オーダースーツ ボットーネのブログ | 明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術
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