白いリネンスリーピーススーツ – 夏の紳士の極致

この記事の目次
はじめに

アトリエから上がってきた一着の白いリネンスリーピーススーツを前に、私は深い感慨を覚えていた。この一着こそ、まさに夏の紳士の三種の神器と呼ぶに相応しい逸品である。
振り返れば、ボットーネを操業してから実に10年以上の歳月が流れて初めて手がけた白いリネンスーツ。なぜこれまで仕立てようと思わなかったのか、今となっては不思議でならない。おそらく、真に価値のあるものを作り上げるには、それ相応の時間と経験の蓄積が必要だったのだろう。
生地への拘り – 重厚なリネンの魅力

今回選んだリネン生地は、ウエイトが350gを超えるヘビーリネン。昨今、軽やかさを求めて250〜300g程度の軽量リネンが主流となっているが、あえて重厚なものを選択した。これは単なる頑固さではない。昔ながらのリネン生地が持つ、あの独特の風合いと存在感こそが、真の玄人好みの逸品を生み出すのである。
軽量リネンにも確かに利点はある。現代のライフスタイルに合わせて選択するのも一つの見識だろう。しかし、クラシックな価値観を重んじる我々世代にとって、生地の重量感は着る者の品格を物語る重要な要素なのだ。
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ディテールに宿る美学

黒蝶貝のボタン
ボタンには黒蝶貝を選択した。白いリネンに対する黒蝶貝の深い輝きは、まさに陰影の美学を体現している。このコントラストこそが、単なる夏の軽装ではない、格調高い装いを演出するのである。
ベストの衿付き仕様

ベストには衿をあしらった。これは決して奇をてらったものではない。もともとベストには衿があるものであり、これこそがクラシックな正統仕様なのである。実を言えば、私がこれまで仕立ててきたベストのほとんどが衿付きである。シングルもダブルも、考えてみれば全て衿付きなのだ。
上着を脱げばたちまち上着の役割を果たすベスト。衿をつけることで、その存在感は一層際立ち、クラシックかつ格調高い一着となる。これぞベストの真髄である。
共地仕様の背中

ベストの背中部分も表生地と同じ共地仕様とした。ここは確かに好みが分かれるところだろう。滑りや通気性を重視するならば、キュプラやビスコースの裏地生地を用いる選択肢もある。しかし、統一感と重厚さを求めるならば、共地仕様に勝るものはない。
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シルエットの哲学

今回のシルエットは、王道を踏襲しながらも、従来よりも少しゆったりとさせている。そして秋冬のスーツやジャケットでは、さらにゆとり量を増やしてルーズシルエットで仕立てる計画を進めている。
ただし、ここで重要なのは「いかに美しくゆとりをもたせるか」という点である。単純なビッグシルエットでは、20代の若者であれば着こなせるかもしれないが、我々世代にはエレガントさが不可欠なのだ。年齢と共に培われた品格を損なうことなく、現代的な快適さを取り入れる。これこそが成熟した大人の装いの極意である。
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シャツとの調和

合わせたシャツは、イタリア・カンクリーニの生地で仕立てたもの。実はあまり着用してこなかった一着だったが、長い充電期間を経て、このリネンスーツとの出会いを待っていたかのようだ。
新しい服というものは、どうも気恥ずかしいものである。何年か着込んでこそ、その真価が発揮される。服と人との関係性もまた、時間をかけて育まれるものなのだ。
リネンは発散性、吸水性に優れており、初夏から夏にかけてのパーティーなどで着用するには最適な素材である。機能性と美観を兼ね備えた、まさに大人の夏の装いと言えよう。
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銀座ファッションアカデミアでの一日

この日、私はこのリネンスーツを纏い、銀座ファッションアカデミアで開催された服飾の講義に参加した。服飾評論家の出石尚三先生より直接認定証をいただくという、記念すべき日でもあった。
講義を主催されている内田さんからは「あとは葉巻ですね!」という言葉をいただいた。確かに、このリネンスーツには上質な葉巻の香りが似合いそうである。大人の嗜みとしての装いが、また新たな世界への扉を開いてくれるのかもしれない。
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終わりに

白いリネンスリーピーススーツ。それは単なる夏の装いではない。時代を超えて愛され続けるクラシックな価値観と、現代的な快適さを融合させた、大人の男性のための究極の一着である。
年齢を重ねた男性だからこそ着こなせる重厚さと品格。そして何より、着る者の人生経験を物語る深みがそこにはある。
さて、明日は何を着よう?クローゼットに並ぶ一着一着が、それぞれ異なる物語を紡いでくれることだろう。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2025年6月20日
ファッションアイテム | オーダースーツ
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