装いのヒント満載! ベストドレッサーよりウェルドレッサーを目指す?
皆さん、こんにちは。松はじめです。
先日、メンズファッションTVの収録で、非常に興味深い議論に参加させていただきました。テーマは「ウェルドレッサー」について。書籍『ジャパニーズダンディ』のプロデューサーである河合雅人さんと、同書に登場される紳士たちとの対談から、真のウェルドレッサーとは何かについて深く考える機会を得ました。
今回は、その対談で得られた洞察を皆さんと共有したいと思います。
ウェルドレッサーとベストドレッサーの違い

まず、最も印象的だったのは「ウェルドレッサー」と「ベストドレッサー」の根本的な違いについての話でした。
日本でよく使われる「ベストドレッサー」は、どちらかというと期間限定の評価なのです。「今年のベストドレッサー」や「このパーティーのベストドレッサー」といった具合に、一時的な美しさや話題性に重きを置いている傾向があります。
一方、「ウェルドレッサー」は生涯にわたる評価なのです。その人の人生そのものが服装に表れ、パーソナリティと洋服が一体化している状態を指します。アメリカでは「Well」という言葉に「健康的」「健全」という意味も含まれており、非常にポジティブで肯定的な評価として使われているそうです。
これは単なる服装の美しさではなく、その人の生き方や哲学が装いに現れている状態なのです。
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真のウェルドレッサーの条件
対談の中で特に印象深かったのは、ウェルドレッサーの条件についての議論でした。
第一の条件:服について語らない
興味深いことに、真のウェルドレッサーは自分の装いについて饒舌に語らないという特徴があります。「今日のジャケットはどこそこのブランドで」「この靴はここで買いました」といったブランド自慢をする人は、実はウェルドレッサーではないのです。
これは12年間、ある著名な方のそばで働いた経験談として語られたエピソードが象徴的でした。その方が身に着けていたブランドとして記憶に残っているのは、わずか3つだけ。ベスト、ネクタイ、靴のブランドのみでした。それほど自然に、ブランドが背景に溶け込んでいたのです。
第二の条件:自分が主役であること
ウェルドレッサーにとって、ブランドは手段であって目的ではありません。ブランドが主役になってしまい、その人がブランドに着られている状態では真のウェルドレッサーとは言えません。
むしろ、どんなブランドを身に着けても、その人らしさが前面に出る。その人のキャラクターが装いを通じて表現される。これこそがウェルドレッサーの真髄なのです。
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ドレッシングの本質
「ドレッシング」という言葉の語源についての説明も非常に興味深いものでした。
料理のドレッシングと同様に、ファッションにおけるドレッシングも、様々な要素を一つにまとめ上げる技術なのです。和風でも中華でもイタリアンでも、その人の個性やキャラクターによって一つの統一されたスタイルを作り上げる。これがドレスアップの本質です。
真のウェルドレッサーは、ブランドにかかわらず、あらゆるアイテムを自分のものとして消化し、統一されたスタイルを作り上げることができる人なのです。
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天然素材への拘り
対談では、天然素材への拘りについても言及されました。リネン、コットン、シルク、カシミアなど、自然から生まれた素材への愛着です。
これは単なる素材へのこだわりではなく、人間も自然の一部であるという哲学に基づいています。現代で言うサステナビリティの概念にも通じる、自然との調和を大切にする姿勢なのです。
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日本のウェルドレッサーたち
対談の中で、具体的な日本のウェルドレッサーとして名前が挙がった方々がいます。
服飾評論家として「服の哲学者」と呼ばれた星野大悟さん。スーツに関しては世界一とも評される技術と美意識を持った方でした。
また、VANの創設者である石津謙介さんも、ジャンルを問わない幅広い装いで多くの人に影響を与えた真のウェルドレッサーとして挙げられました。
こうした方々に共通するのは、決して自分の装いを自慢げに語ることなく、自然体でありながら常に美しい装いを保っていたことです。
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アクセサリーの重要性
ウェルドレッサーにとって重要な要素の一つが、アクセサリーの使い方です。
ベーシックなアイテムを、その人なりの着こなしで個性的に見せる。そのポイントとなるのがアクセサリーなのです。しかし、これも決して派手すぎず、その人の個性を引き立てる程度に留めることが大切です。
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現代におけるウェルドレッサーの意義
現代の日本において、真の意味でのウェルドレッサーは決して多くありません。ファストファッションの普及により、誰でも手軽におしゃれを楽しめるようになった一方で、個性や哲学を持った装いをする人は少なくなっているように感じます。
しかし、だからこそウェルドレッサーという概念の価値があるのです。一時的な流行に左右されることなく、自分なりのスタイルを確立し、それを生涯にわたって磨き続ける姿勢。これは現代社会においても、いや現代社会だからこそ必要な美意識なのではないでしょうか。
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まとめ

真のウェルドレッサーとは、単におしゃれな人ではありません。自分の生き方や哲学を装いに込め、それを自然体で表現できる人のことです。
ブランドに頼るのではなく、自分が主役となり、様々な要素を統合して一つのスタイルを作り上げる。そして、それについて饒舌に語ることなく、ただ自然に美しい装いを続ける。
これこそが、時代を超えて愛される真のウェルドレッサーの姿なのです。
私たちも、流行に流されることなく、自分なりのスタイルを見つけ、それを大切に育てていくことで、真のウェルドレッサーに近づけるのかもしれません。
ファッションは自己表現の手段であり、その人の内面を映し出す鏡でもあります。表面的な美しさだけでなく、その奥にある哲学や生き方こそが、真のウェルドレッサーを作り上げるのです。
今回の対談を通じて、改めてファッションの深さと、真のウェルドレッサーが持つ魅力について考えさせられました。皆さんも、ぜひ自分なりのウェルドレッサー像を描いてみてください。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2025年10月1日
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