そろそろ、ちゃんとした礼服(喪服)を
「そろそろ、ちゃんとした礼服(喪服)を一着持っておかないと…と思いまして。」
実はここ数ヶ月、例年に比べると随分と礼服(喪服)のオーダーが増えています。
定期的にスーツやジャケットをオーダーいただいてきた方が、たまたまタイミングが重なったようですが、皆さん理由は同じで「いついつまでに必要!」ではなく、「そろそろ持っておかないと」という『備えておく』ためにオーダーいただいています。
礼服って優先順位はそんなに高くないと思いますので、なんだかんだ後回しに・・・
いざ必要となった時に慌てて量販店で購入したり、最近は気軽にレンタルサービスもあったりしますから何とかなりますが、いかにも急遽準備しました感はぬぐえません。
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この記事の目次
立場が変われば、服装もアップデートしなければ
私は個人的に慶事においては、ある程度のマナーを守っていれば少しくらい個性的でもいいと思っています。
タブーの領域に入ってはいけないと思いますが、「〇〇でなければならない」というより「〇〇はやめておきましょう」の方が強い感じです。
正解はいくつもあるよね、と。
ただ、お葬式となると話は別です。
ちゃんとしたルールに則った正しい服を着るべきだと思います。
それに、年を重ねると人の見方も変わってくるものです。
あるお客様は「葬式で、上司がとんでもないダボダボな礼服を着ていて驚いた」とおっしゃっていました。
「葬式にブーツを履いてきた社員がいて、その場でストレートチップの革靴を買いに行かせた」と話されていた経営者の方もおりました。
若い時は「これでまあ大丈夫かな」という感じで服装を決めていたとしたら、年を重ねていつか大きな恥をかいてしまったりするかもしれません。
ボットーネで最近礼服(喪服)をオーダーいただいたお客様も、「そろそろちゃんとしなきゃな」とふと思われたのか、何かきっかけがあったのかは分かりませんが、30代・40代のうちから備えておくことで急遽必要になってしまった時も安心できると思います。
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【ウンチク】喪服=黒は世界的に見れば間違い?
まず結論を申し上げます。
世界的な葬儀スーツというと、濃紺、もしくはチャコールグレーです。
例えば、服飾評論家 故 落合正勝氏の著書の中にこうあります。
それは、1999年、ヨルダン前国王の葬儀。
各国代表者の服装についてのこんな内容。
では、各国の首相、大統領はどんな礼服だったのでしょう?
・カーター、フォード元大統領→濃紺のスーツに同系色のタイ
・クリントン元大統領→黒っぽいスーツに白シャツ、紺地に小紋のタイ
・エリツィン前大統領→スーツ、タイともに紺
・チャールズ皇太子→ブルーグレイのスーツに白シャツ、胸ポケットに喪章として黒のポケットチーフ
落合正勝氏によれば、英国のダイアナ元妃の葬送の際の、王室一族の服装も、ネイビー・ブルーが多かったそうです。
日本では黒がスタンダードなんだからそれでいいだろ!と思う方もいるかもしれませんが、そもそもスーツというのは日本の服ではありませんから、ヨーロッパでどのように着られているのかは知っていてもいいはず。
ヨーロッパで「着物の色は〇〇が正解だ!」みたいな間違った解釈があったとしたら、おいおいとなりますもんね。
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なんで日本では 礼服(喪服)=ブラック なのか?
とはいえ、集団の中で一人だけ違う服を着るわけにもいきませんから、なんだかんだで黒の礼服は必要なアイテムだとは思います。
ただ、冠婚葬祭全部これでOKというのが「ちょっと違うんじゃないか?」ということ。
どうしてそうなってしまったのか?これは私の考察ですが、黒スーツは『量販店の戦略のひとつ』として販売員向けに考えられたのではないでしょうか?
かつての日本には既製品はありませんでした。
みな、テーラーで作るしかなかった。
それこそ、カジュアルの服だって作る。
既製品という概念すらありません。
でも戦後になると、アメリカから既製服の文化がなだれ込んできます。
その後大量生産が始まって、生産拠点は中国や東南アジアなどの当時人件費が安い国へと流れていきました。
こうして、スーツはどんどん安くなっていきます。
登場したのはロードサイドの量販店。
この頃、【冠婚葬祭、黒スーツ1着あれば、まず安心!】というようなキャッチコピーがあったのではないでしょうか?
安いですから、作業着としてスーツを必要としている人もこぞって量販店で買ったことでしょう。
中には結婚式や、葬式に着る服を求めてスーツ量販店に行く方もいたでしょう。
当時18歳でだった私も、特に深く考えることもなく女性の販売員の方の勧めで冠婚葬祭スーツを買った記憶があります。
「礼服が欲しいんですけど・・・」
この時、洋服のプロであればどのように接客すべきか?というと。
「お客さま、今回ご使用いただくのは、おめでたい席でしょうか?それとも喪のシーンでしょうか?」
なぜなら、2つのシーンでは着用する服が異なるから。
・・・でも実際はおそらく、こう話すことになるはずです。
「お客さま、それならこのブラックスーツであれば、冠婚葬祭どのシーンでもOKです」
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状況を考えて装う文化
そもそも、礼装というのは、礼服を装う(よそおう)と書くのです。
だから、服は装って、服装となるのですよね。
ジャケットと、パンツ、ネクタイが10セットある。
それを、パズルのように組み合わせて、服装になる。
そこに、おめでたい時ならこの組み合わせ。
喪のシーンならこの組み合わせ。
友人との食事ならこの組み合わせ。
暑い所に行くから。
長期間の旅行だから。
こんな風に、TPOといいますがシーンや立場、気候などを考えて着るのが本来なのです。
どちらかというと西洋では、とりあえず、黒スーツと決まっているから黒!
というよりも、
この方への追悼の意味を込めて、この服をこうやって着よう。と考える文化があります。
礼服といっても黒の上下を着れば良い、というわけではないのです。
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。5年勤務ののち、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2023年10月3日
オーダースーツ ボットーネのブログ | 明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術
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