テーラーのプレス修行 ナチュラルクリーン クリーニング工房
現場をお客さんたちに見せたら、ものすごくやってることがわかりやすい。
表の部分よりも隠れてる裏の部分を見てもらいたい!
表より裏。
袖裏、背裏とか、見えない部分にこだわるって日本の感性、お陰様の精神なんでしょうねぇ。
以前そう語ってくださったのは、クリーニングの最高峰といって過言ではない、メディアひっぱりだこの、ナチュラルクリーン中田代表だ。
先日テーラー修行の旅という記事で書いたとおり、
今日、ボットーネの新人クルー、嶋田がこのウォータークリーン ナチュラルクリーンの門をくぐる。
ナチュラルクリーン修行が決まったときの記事はこちら。
テーラー 修行の旅 クルーのナチュラルクリーン修行が決定した
とにかく曲がったことが嫌いな、勉強熱心なクルーが、名門クリーニング工房へ。
ただいま、AM3:05。
君津駅前のビジネスホテルの朝食はAM6:00からなので、まずは権利を放棄してチェックアウトすると、そそくさと荷物をトランクに詰め込み、一路ナチュラルクリーンへ。
まだ外は暗い。
早くも緊張で顔が顔張っているのが見て取れる、クルー嶋田。
到着したぞ!ナチュラルクリーンのクリーニング工房に到着した。
我々のタクシーの到着の後すぐに中田代表の車が駐車場に停まったのがわかったので、一礼。
おぉ、道場だ。
いよいよ、ナチュラルクリーンで毎朝欠かさず行っているという早朝稽古に参加だ。
クリーニング会社で稽古?そんなイメージなのだが、そもそも身体が資本、この時間から毎朝稽古を続けているのだそうだ。
あなたが入社した企業が、朝3時半から来い!と言われたら、それも毎日来いと言われたら、どんな気持ちだろうか?
まあ、この時代、あり得ないよね、そんな感じだろう、あり得ないようなプロ集団がいるのだ。
クリーニング工房の2階が道場だ。
《おはようございます!》
中田代表が道場に入った、
はっとする。空気がキリッと引き締まった。
はじまるはじまる!!
まずは中田代表からの具体的な指導の元、ストレッチ、そして腕立て、腹筋、、、
・・・・・・・・・・開始10分、
ぜえ、ぜえ、
ふぅ、はぁ、
早くも息が上がる。
つ、ついていけない。
ポタポタポタ、滴り落ちる汗。
嶋田も私も早くも限界、ついていくのがやっと。
もう5時、稽古も1時間を超える・・・。
二日酔いじゃだめなんですよ~だって、狂うんですよ、手もとが。
日々修行ですよ、早く寝て、朝は4時過ぎに起きて心身のコンディションを整える。
よく職人って飲むイメージでしょ、そういうのってうちではないんです。
しっかり朝ごはん食べる、で、体操する、筋トレする。体が資本ですから、アスリートみたいです。
これは、まさにアスリート!
プロなのだから、病気になどなっていられない、
だから体力。
ナチュラルクリーンのみなさんはこれを毎朝続けられているのか!
そしてこのまま仕事は22:00まで続くのだそうだ。
はぁ、はぁ・・・
ようやく稽古が終わった、
感謝の気持ちをこめ、しっかりと床を雑巾で拭く。
いよいよ工房へ移動だ。
1に掃除、2に掃除!
こうして1階の工房に降りると、今度は工房内の清掃だ。
雑巾を持ち、水拭きのスタートだ。
《僕はね、裸足。裸足で歩くとね、汚れてたらわかるんですよ》
と中田代表。
汚れていたならば、気づいたら誰もが掃除をするのだそうだ。
この企業を育ててきた、山田会長もモップがけだ。
道具もしっかり磨く。アイロンもピカピカだ。
もちろん嶋田も。
もちろん、私もさせていただいく。
スキッとする、やっていて気持ちが良い。
《見えないところを、裏を綺麗にするんです。袖裏でも背裏でもそうですよ、裏が綺麗になれば表は綺麗になるんです。》というこの中田代表イズムが浸透しているのだ。
あれ、今何時?
な、な、なんとAM5:22だ!
AM3:45から稽古が始まって約1時間半、もうそんなに時間が経っていたとは、驚きだっ。
稽古に、掃除に、集中して没頭するあっという間なのだ、なぁ嶋田くん。
嶋田くんも気持ちが良さそうだ。
もともと彼は掃除好きだもん、とっても居心地が良さそうだ。
ゴーン、ゴーン、ゴーン。こ、これは?
一同畳のスペースへ。
中田代表は現役のお寺の住職であり、保育園の理事長も務める。
10年前、社長の山田幸雄氏が脳梗塞で倒れ、幹部社員たちの強い要望もあり縁あってこのナチュラルクリーンへ来たのだ。
そして、お経がはじまる。
お経の後、ナチュラルクリーン 日刊ボスのそらごと より、《何の用ですか?聞き返す時間がムダ》というコラムを読んだ感想の発表の合間に、具体的な仕事に対する考えが語られる。
お、いい香りがすると思ったら・・・
こうして朝食のスタートに向け、事務所内では味噌がとかれていた。
今日はカレー?良い香りが広がっている。
なんとその奥、細かなタスクや進行の完了期日やチェックが進んでいる。
まだ朝礼前にも関わらず、だ。
全てそれはいつ終えるの?
そんなところに貼って見えない。
仕事が遅い!と会長の奥様、法子さんの声が響き渡る。
厳しい。
だが、ここではパートの方ですらプロフェッショナルだ。
さて、私たちも朝食を運び・・
家庭的な朝食がテーブルいっぱいになったぞ。
稽古と掃除を全力でやった後のみなでの食事、これは本当に美味しい。
うちはスピード、繁忙期なんて食事ぱっととってずっと仕事だよ。と中田代表。
全員が発言する。
厳しさあり、でもそんな中にもユーモアあり。
そして朝礼、朝礼、中間礼だ!
朝礼は2回、さらには中間礼があるという徹底ぶり。
これはうちもすぐにでも取り入れなければならない、チェックやシェアは多いに越したことがないっ。
普通のクリーニング店で、高級衣類のクレームいっても、仕方ないですよ。だって洋服の成り立ちというか、構造って知らないから・・
いよいよプレス研修だ。
ナチュラルクリーンのプレス研修といえば、
以前現代の名工と呼ばれる鈴木誠治先生のプレス研修でもおじゃましている。
鈴木先生の技の模様はこちらだ。
伝説のプレスをこの目で
驚くような丸みが出た服を見て、言葉が出ない、これはプレスではない、もはやアートだ。
触れただけで製作者の考えと立体が見え、的確に施されていく美しいプレス。
イメージを裏切る物腰柔らかな氏の目の奥に、その外見と相反するようなプロ魂。
地の目という、洋服の設計図をきちんと理解して考えながらのプレスが重要なのだ、もちろん今日もそのあたりからご指導いただくことに。
まずはスーツのパンツの裏側から。
スーツのパンツの裏は、平台に置いてプレスしておかないと、最終的に見える外側に響いてしまう。
そしてパンツのヒップ裏。
ヒップの裏がぴたっとプレスされていると、履いたときに決まるのだ。
やはり、裏側が重要なのだ。
それから、腰裏、パンツのヒップのピスポケットも。
パンツのピスポケットは履いているうちに伸びて広がってしまっていることが多く、
毎回伸ばして、その裏からアイロンをあてていく。
さらに、ポケットの袋地。
ここはコットンだから、ウールなどスーツの素材のプレスとは少し感覚が違う。
パンツのポケットの裏までしっかりプレスするのだ。
そのようなことを細かく全て仕事の手を止めて教えていただいた。
まただ、いつの間にか2時間が経っていたのね。
こうしてこちらでは、徹底して学ぶ、基礎から、具体的に。
すると・・・
なんか、嶋田くんの表情がイキイキしてきたぞ!
未知のものへ挑戦する喜び、
いくつになってもチャレンジャーじゃないとね、わくわくしないでしょ。新陳代謝が起きないよ。お金がすべてじゃあ、できないって。
日々挑戦だ。
そして、やっぱり、服が好き!
それだけだ。ねぇ嶋田くん。
だって、洋服好きなんだもん。
そしてこうしたご縁から、これから嶋田くんの師匠としてプレスを教えてくださることに!
こうして昼食前、再度水拭きを行って、お昼をいただく。
午後もまだまだプレスは続く。
毎日精進して、身体作りもやって、心技体のバランスってものを、きちんと保ってく、これを心がげてます。
松さんね、まぁ今日、若いあなたと来られてるわけだけど、
その一端をね、今日感じ取って、自分たちができることを少しでも、毎日・・・
毎日が勝負なんです。
いっぺんに花火みたいにドーンじゃあ続かないですよ。
コツコツコツコツやってかれると、
世間で言われてるテーラーっていうのとは違う部分が出るんじゃないかと思いますけど、どう思います?
いっぱい僕もテーラーさん見てきたけど、
やっぱ、癖強いよ。
そしてね、自我が強い。
我良しが強い。
そういうものじゃなくてね、お客さんに対しての最高のものを提供しよう、
そうしたら逆にいえばそういうの要らないんですよ。
本当に感性の世界だからね。
毎日毎日、ぴっと心に本柱を立ててですね、
1日をスタートするわけね。
そして昼、夜と、何度も何度も自分を見つめてく。
流されるな、弱さを克服して強くなれ!
どうですか?(嶋田に)
嶋田は、目に涙声だった。
「感想文」
ボットーネ 嶋田 将
前回10月末にこちらに伺い、中田代表や松代表から
仕事に取り組む姿勢や物事の考え方、基礎がなってない事など、
沢山のご指摘をいただき、今までの自身の行動や考え方、
自身の姿勢を反省し、あらため、再度こちらの仕事の姿勢をはじめ、
内なる強さ(見かけだけでなく、感謝の気持ちを常に持ち謙虚で
いる心構え)を学ぶために本日参りました。
早朝の筋トレでは、誰よりも汗をかき、ついていくことが出来ず、
日頃の運動不足、そしてテーラーとしての身体づくりができていない
ことを体感し、スラックスやシャツやパンツのプレスを練習させて
頂いては、洋服のディテールの知識不足、プロ意識の低さを感じました。
一日を通じて今後の目標(プレス技術の取得)が得られた事、今後の
仕事、そして普段からの心の持ち方を見直す事をいただけた事、
そして、中田代表をはじめナチュラルクリーンで活躍される皆様と
ご縁がつながり、自身の弱さや、今の現状を把握できることは大きな収穫でした。
本日頂いた機会をムダにせず、これからも日々の努力を積み重ねていきたいと思います。
また、今日体感した経験をボットーネで活かしていきたいと思います。
ありがとうございました。
正直、ここまでやっているクリーニング工房はもちろん、ここまでやっている企業があるだろうか。
人が続かない、だから緩く甘い、休日も増やして・・・馴れ合い、スタッフの談笑、そういうのはここでは一切なかった。
途中出社してくるパートの方は、全員が私のところに来た。
どうしたのかな?と最初思ったら、
【おはようございます!今日も1日よろしくお願いします!】と一礼していかれるのだ。
裸足で歩いても足が汚れない床、
2時間かけて行う明日の段取り、
とにかくお客様のために、という言葉をここまで体現している企業が・・・あったのだ。
我々は模範にしたい、こういうテーラーでありたい、そう思った。
これからボットーネに入社する人はそういう覚悟で来てほしいし、そういうのが好きな人と仕事したい。
私はそれなりに謙虚な方だと思っていた。
ナチュラルクリーンにはかれこれ10回以上訪問しているが、
この工房に入るたび、働いている人の姿勢を目の当たりにするたびに、自分の弱さとか、傲慢さに気づくのだ。
テーラーとして、一歩ずつ、日々精進しよう、そう思った。
ナチュラルクリーンの中田代表が書いてくださった記事はこちら。
ボスの日々是笑日 「共生」2/6(月)
早朝からの筋トレやコア体操や空手の基本稽古。さすがに筋トレでは二人ともアゴが上がってプルプル状態でしたが、ギブアップせずに最後まで頑張っていました。
http://www.naturalclean.co.jp/blog6/blog.cgi?year=2017&month=2&day=6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回お世話になった、ナチュラルクリーン。
私が数年前にお伺いし、潜伏取材のブログを書かせていただいたのが以下だ。
ぜひ一度クリーニングに出してみていただきたい、羽織ると・・わかる。ここは違う。
そこでわかった驚きの事実、全部オープンにします。
ライター:その他クルー
2017年2月6日
嶋田
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