ピーコートとは?(Pコート)意味と由来には海軍に秘密があった
オーダーサロン ボットーネがお届けするビジネススーツ&フォーマル通信。
今日はピーコートについて真の情報を入手したのでお届けしたい。
雑誌でも、服飾辞典で調べても、ありきたりなことしか載っていないピーコート。ピーコートはカジュアルで、碇のマークのボタンで。んん?本当にそうなのだろうか。
ところで冬のコートといえば、チェスターフィールドコートやポロコート、トレンチコートにピーコートなど様々なコートがある。男性のコートは実にデザイン豊かで、たくさんのストーリーがある。
その中でもピーコートはやはりカジュアルのコートというイメージがないだろうか?
・もとはどんなコートなのだろう?
・ピーコートの3大特徴とはなんだろう?
・そもそもなぜピーコートというのだろう?
ピーコート、Pコート、などと書かれているのを見かけるのだが、なかなか謎の多いコートである。
本日は銀座ファッションアカデミアより、出石尚三先生の講義から、ピーコートの秘密に迫ってみよう。
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まず、ピーコートという言葉について考えてみたい。
ピーコートというとコートとついているから冬に着るコートなのだろうとは推測ができると思う。
ところが、アメリカやイギリスではピーコートとは呼ばないのをご存知だろうか?
一体何と呼ばれているのか?
ピージャケットだ。
英語でピーコートという言葉がないわけではないのですが、ピージャケットの方が優勢であります。
(ピーコートで)服飾辞典を引きますと、ピージャケットの項目を見なさい、と。
ところが日本ではコートじゃないですか、ピーコート。
英語の習慣だとピージャケットという言葉が多く使われます。
銀座ファッションアカデミアの講義より 講師:出石尚三 先生
なんと。
冒頭からピーコートの話は大きく揺れ動く。
例えばトレンチコートをトレンチジャケットとは言わないだろう。
チェスターフィールドコートを、チェスターフィールドジャケットとも言わないと思う。
コートというと外套(がいとう)、つまり防寒のためにジャケットのさらに上に羽織るものではないだろうか。
逆にジャケットというとスーツの上着であったり、デニムに合わせるジャケットなど、要するに上着のようなイメージがある。
余談だが、スーツのジャケットだけをデニムに合わせている人を見るが、一瞬でわかる。スーツの上着だね?と。それだけは辞めた方が良いということだ。
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ピージャケットはもっと早い(使われ出したのが)ですよ。
ピーコートというのは、活字ですと、pea-coat。
イギリスよりもアメリカの方が先だったようです。
1720年、ボストンガゼットという週刊新聞の、5月9日〜16日号に、ピージャケットということばが使われております。
ピーコートという英語がないわけではないです。
まず、ピーコートは大変歴史が古いということが伺える。
私は1978年生まれだが、ピーコートと呼ばれたのは古く、1790年だったのだ。
1978・1790
なんとなく数字の配列は似ているものの、私よりも約200年先輩といえる。
そしてその以前も現代も、ピーコートではなくピージャケットという方が一般的だ。
なぜ・・・?
コートなのにジャケットなのだろう?と思った読者の方は多いと思う。
そして、P(ピー)とは何だろう?
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ところが、ピーの正体の前にも様々な疑問があった。
ピーコート、それはピージャケットと呼ばれ、さらにはフラッシングという名前で呼ばれていたというのだ。
それも、1800年代の本に。
1834年に、フレデリックマリアットという人がピーターシムプルという本を出しているんですね。
本の中に出てきます。
「彼らは、ピージャケットを着ている。彼らは、ピージャケットのことを、フラッシングという風に呼んでる。」という記述があるんです。
このフレデリックマリアットという変わった姓ですけれど、ロンドンに1792年7月10日に生まれた軍人。
14歳で海軍兵学校には入っているという根っからの軍人です。
1830年に退役しまして、1829年から、海洋小説を書いています。
この方は海洋小説ばかり書いた人なんであります。
その中の一つがピーターシムプル。
読んでいると、Flushing(フラッシング)と呼んでると書いてあるんです。
フラッシングというのは、紅潮するというような言葉ですね。
顔が赤くなるときにフラッシングという言葉を使うそうですが、海洋小説なのでピージャケットは出てくるんですね。
ますます謎は深まるばかりだ。
そもそも海軍にいた人が小説家になるということも凄いのだが、そもそも私もこうしてこの記事を書いているのだが、もし戦争を経験していたらどうだっただろう?
軍艦とか、戦車とか、それに服が好きときたならば服のことは鮮明に脳裏に刻まれただろう。
と、同時にそれを書くときに、きっと戦闘の時の記憶が蘇っただろう。
さて、私が現代日本で、未来に何かを残すべく文章を残すとして、クールビスについて何と書くだろう。
彼らは6月になればネクタイを外し、さらには上着を脱いだ。レザーのバッグは重いから、フェリージというブランドのナイロンバッグに、たっぷりと書類を詰めた。ナイロンバッグの持ち手とフチはレザーだが、擦り切れ、Aの手でしっかり握られた跡がわかる。
Aは、11月の1日、突如として上着を着てネクタイを身につけた。そうしてAは、会社に出社したのだ。
そんな風に書くのだろうか、クールビズを。
とにもかくにも、ピーコートはピージャケットがより正しい呼び方で、ピージャケットはフラッシングと呼ばれていたのだった。
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それでは、ピーコートの名前を追うべく、ピーコートは本当にコートなのか?
着られていたのか?について時代を遡ってみれば、答えがわかるかもしれない。
ということで、この挿絵。
紛れもないピーコートが描かていた。
中央の男性がピーコートだ。
絵は、イギリスの雑誌、ストランドマガジンに掲載されたもの。
創刊したばかりでとても売れた雑誌だったそうだ。
なぜ売れたのか、それは人気の小説、シャーロックホームズが読めたから。
そう、この挿絵でピーコートを着ている中央の男性、それがシャーロックホームズだ。
(右はワトソン)
91年に、赤毛連盟(原題:レッドヘッデッドリーグ)という、おそらくホームズシリーズで一番有名な、銀行強盗を捉える話なのだが、この英語の原文に書かれている部分の挿絵だ。
赤毛連盟 アーサーコナンドイル作より引用
銀行の地下に行くシーンで、深夜です。
夜の地下金庫に行く、寒い。
(強盗との)格闘も予想される。狩猟用のムチをもっていく。
深夜の寒い地下の金庫室、だからコートで防寒したということだ。
つまりやはりピーコートはジャケットではなく、コートだということがわかる。
それにしても、ダブルブレストで重厚で、なのに軽快な装い。
絵からもピーコートはカッコイイ!!と思わないだろうか。
なんだかそう思えてくる、どうだろう?ワトソン君?
そして大人気小説のシャーロックホームズシリーズの、主役のホームズに着せたピーコート。ホームズの時代背景はいつ頃なのだろうか。
ホームズの物語は、1880年代なんですね。
(作者)アーサーコナントイルは、どの事件もたいていそのくらいの時代です。
じゃあどうして、ピージャケットを書いたのか?
作者は時代背景に合わせて、それぞれの役に合った服をコーディネートする。
トレンチが良い場合もあれば、タートルネックのセーター姿かもしれない。
1880年あたりの時代と、ホームズの立ち位置、トレンドを考えてピーコート(ピージャケット)が採用されたといえる。
そして、作者はどうやら船医だったのだ。
ということは・・・?
アーサーコナンドイルは、船医の経験がある。
1879年くらいに、エディンバラの医学校を出まして、船医の応募が出ていました。
(船は)ホープ号というんですけど、捕鯨船で7ヶ月勤務です。
報酬は50ポンド。
(当時の50ポンドは500万円くらい?)
グリーンランドに行っております。
若いし、体力あってスポーツ万能な人で、アザラシを見つけは、鉄砲で撃って。
場所はグリーンランド、時は3月始め、寒かったと思うんです。
おそらくホープ号の船上で、コナンドイルはピージャケットを着たことはあったんじゃないかと。
若いということは素晴らしいし、色々な経験をしているのだ。
シャーロックホームズの作者は、7ヶ月の仕事に応募した。
船に乗ってしまうとなかなか戻ってこられないわけで、医師というのはとても重要だというのは今も昔も変わらない。
それから、北海の冬の寒さは日本の寒さとは比ではない。
3月といったって流氷流れるまだまだ寒い海で、吹き付ける風。
私は稚内に行ったことはないが、おそらく厚着をしても凍えながら、右手と左手をこすり続け、勧められるがごとくウォッカを飲むだろう。
やはりコートは北にルーツがあるようだ。
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ピーコート=ピージャケット=フラッシング
様々な呼び名があり、なんとまだあった、ピーコートの別名、それは・・・。
<資料>明らかに船員。
リーファーと説明にある
リーファースーツ。
ピージャケットとユニフォームとの折衷案のような感じになっております、剣衿(ピークドラペル)ですね。
本当にあった話で、1941年ごろの物語。
イギリス連合軍は、ヨーロッパ本部に攻め込みたい!
地中海に突き出したナバロン、そこが自然の要塞になっていて、洞窟をうまくくりぬいて、大きな大砲をドイツ軍が設置してる。
飛行機は全部落とされた。
出撃しよう!といって、あのナバロンの要塞をなんとかしないと。と問題になる。
映画でグレゴリー・ペックが、こういうの(リーファー)着てるんですね。
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ピーコート=ピージャケット=フェイシング=リーファー
リーファーという別名を持つピーコート。
かなり核心をついてきたところで、まずはリーファーとはどういう意味か?を追ってみよう。
・・・
リーファーはイギリス英語、スラング(俗語)。
リファーってのは、士官候補生、要するに海軍の見習い兵。
海軍用語でありまして、昔は帆船でありますから、蒸気がないですから。
帆を上げろーっ、一番重労働を若い奴にやらせた、だからリファーという。
率直にいえば使いぱしりの若造というか。
どんな悪天候であろうが、甲板に出て帆を上げるわけです。
どんな悪天候でも、どんなに寒くとも、台風でもなんでも帆を上げなくちゃあいけない。
若いうちはそんな仕事がまわってくる。
その時、綺麗事ではなくてピーコートを着たのだ、軍から支給されているし。
だからリーファー。
.
リーファーフロントという言葉はご存知の方も多いのではないだろうか。
つまり、士官候補生の仕事に関係して生まれたデザイン、リーファーフロントだ。
リーファー、ブリッジコート、ワッチコート。
ブリッジというのは見張り番。
動けないんですよ(甲板のある場所から)。
そうするとですね、自分が見張りしてる、北風が来る、
寒くてしょうがないんですね。
現代ならレーダーがある。
鳥が飛んできてもレーダーでわかるような高性能だと思うが、そういうハイテクな機器がない時代は、目視で敵艦を確認する。
24時間交代で、深夜であってもいつ敵艦に遭遇するかわからない。
寒い冬の海の上、一箇所から動くわけにはいかない、凍えそうだ。
そんなとき、びゅーっと右から風が着た。
じゃあダブルブレストの右を上にしてボタンをかける。
反対から風がくるようになった。
寒い!と、左を上にしてボタンを掛け直す。
これが、リーファーフロントというピーコートの特徴の1つだ。
現代でも女性物、男性物で前合わせが違うが、ピーコートに限ってはどちらにもなるということだが、それは見張り番のためだったのだ。
.
ピーコートの3大特徴のその2、これがマフポケットだ。
マフポケットは蓋のない、縦に手をいれやすいポケット。
実はこれはある大きな意味が・・・
マフっていうのは、17世紀18世紀フランスの貴婦人の間で流行った、手套(てとう・しゅとう)。
手袋しているんだけど、さらに手の外套を使ったんです、これが貴婦人の印。
枕くらいの大きさ、円筒形、中は空洞で手が入れられます。
ミンクやロシアンセーブルで出来ていて、良いものなら高級車一台分!
絶対にポケットに手を入れてはならぬ!
背筋が曲がっている海軍兵は確かに強さを感じない。
海軍の威厳、それはピンと立った立ち姿。
だから絶対にポケットに手を入れてはならない、厳罰なのだ。
が、さすがにマイナス10℃の甲板で立ちっぱなしの見張りに、それは酷というもの。
手袋をしていても寒さで凍えてしまう。
そこで!
ピーコートだけは手をポケットに入れてOK!というルールが敷かれたのだ。
なんとも、そのくらい厳格なのだ。
手を入れてもいいですよ、という特別な、ピージャケットだけに許されるポケット。
逆にそれくらい厳しい状況で使われてきたんだということですよね。
.
そしてなんといってもピーコートの特徴でもっともわかりやすいのが、丈が短いこと。
フィンガーチップレングス、つまり腕を下に下げた状態の、指先のあたりにくる丈。
世界各国共通なんです、ロシアであろうとスペインであろうと、みんな(海軍は)ピーコート。
寒いところで働ける防寒着、ピーコートが優れてる。
悪天候の時に着るのであれば、スポーティに、カジュアルにと着るではなく、しっかり着る。
吹雪でも中は濡れないで済む。
現代で私たちが抱いている、ピーコート=カジュアルコートという図式は実は違う。
ピーコートは海軍が制服として採用しているコートだ。
そして、それは防寒も兼ね備えている。
それに加え、この着丈が絶妙だという。
昔々はグレイトコートってものがあったんですね。
短外套(ショートコート)の逆で、大外套のことなんです。
今はあまり見かけませんが、零下10何度の冬になると、短いコートでは間に合わない。
アンクルレングスです、マキシコート、つまり裾まであるんです。
そうしないことには冬を過ごせないんです。
とにかく上に暖かいコートを着て、厳寒の冬を越すためにはグレイトコートというのを着た。
しっかりした生地で丈が長いんです。
フルレングスなので暖かいんです。
丈が長くなればなるほど暖かいです。
ただし、グレイトコートにも欠点がありまして、足さばきが悪いんですね。
走ったり敏捷に動いたりするには不便であると。
座ったり、立ったり、いちいち後ろが気になる。
ものすごい寒いんだけど、たち働かなくちゃいけない。
僕の想像ですよ、グレイトコートを半分に切ったんです。
グレイトコートを半分に。
(写真のコートは90センチ丈、ピーコートよりも長い設定。だが長い方が自然にすら見える。)
確かに、長いコートは暖かい。
でも、チェスターフィールドコートなどでフルレングスの長いコートは、扱いづらい。
いやはや、長い・・・そこが美しいわけなのだが。
反対に短いコートは動きやすい。
そして、確かに言われてみれば、ピーコートは前ボタンも少なくないし、長いコートだったとしてもおかしくないバランスではないか。
.
<資料>サヴィルロウでは、ピーコートを元に、様々な提案を貴族に行った。図にはパイロットコートとある、これもピーコートの別名だ。
さて、やはりこのコートは軍服であったということがはっきりした。
船の上、見張り(ブリッジ)が着るからブリッジコート、水平の見習い(リーファー)が着るからリーファーコート、いろいろな呼び名がある。
ではピージャケット、ピーコートとは?そしてフラッシングとは?
序章でお伝えした、ピーコートのことをフラッシングと呼んだ。という小説の文をもう一度。
本の中に出てきます。
「彼らは、ピージャケットを着ている。彼らは、ピージャケットのことを、フラッシングという風に呼んでる。」という記述があるんです。
ピージャケットの元、フラッシング。
なぜピーコート(ピージャケット)をフラッシングと?
まったく似ても似通っていない名前である。
ピーコート=ピージャケット=フラッシング
ピーコートは何か?の前に、フラッシングとは何?
それは・・・
それは、地名だった!
オランダに、フリッシンゲンという街がある。
ここは非常に貿易が盛んだった。
このあたりをフランドル地方と呼ぶのだが、もともとウールなどの生地を輸出していたのだ。
分厚い、目付け800gなどの、縮絨をして、強い、厚い、丈夫な、そんな生地。
どうやらそれがフリッシンゲンの港から出荷されていた。
フリッシンゲンと聞いて、フラッシングと受け取ったのだった。
つまり、まずはフラッシングは生地の名前であると。
昔は必ずしも文字ではなく耳の情報。
例えばワイシャツ。
横浜に来た外国人に、これは何?と聞いたら、
「 White shirt」(ホワイッシャツ)
あ、ワイシャツでございますか。
ホワイトシャツ、と英語で発音したら、確かにワイシャツ、と聞こえる。
こういうことが服飾の世界にはたくさんある、そこが面白いのだけれど、フラッシングもフリッシンゲンを聞いてそうとったのだろう。
では・・・、ピージャケットのピーとは、一体?
.
どうも、オランダに関係しているということはご理解いただけたと思う。
そして、オランダの言葉が英語のニュアンスで解釈された、いや、聞き取った?
とにかく、とあるオランダ語がピーコートを、ピージャケットと呼ばせた根本の原因のようだ。
オランダ語ではピーは服という意味です。
ジェッケルということばは、上着という意味なんです。
ここんところを無理やり日本語にしますと、上着服って意味なんです。
上着服?
ジャケット服?
日本語の電話。
これは、中国で、ディエンフォアという、まさに電話の中国語読みをする。
中国から漢字が伝わった、と習ったことがあるが、実は電話は最近の文明だ。
だから、日本から中国に伝わった言葉も多いといぅ。
同じように、ヨーロッパも影響を受け合っているはず。
ジャッケルといえば、オランダ語とはいえど、ジャケットの意味合いは推測できる。
でも、ピーは、服。
まるで長嶋茂雄氏が監督時代に、「今年の清原君はシャープが鋭くなって。」と言った迷言のようだが、なぜこんな不思議な言葉が?
北海のグリーンランドで魚を獲るなんてのは、暖かなくちゃいけない。
僕の想像ですよ、グレイトコートを半分に切ったんです。
下まであったんですよ。
きちんと上は詰まるし、そういう風なグレイトコートがあったんです。
オランダよりもっと北の地方にはあったでしょう。
ところが17世紀ごろでしょう、オランダで、半分に切った。
なんでかというと、ピーコートをきて走れるんですよ。
グレイトコートを着て走れません。ピーコートを着て、甲板の上を急いで走ることはできる。
そうやって着てると、変なもん着てるなあ。
えぇっ、長いグレイトコート半分に切ったんかい!
驚いて、、、まるで、ピ、ピージャッケルやんか。
これ変!それじゃあまるで上着服やんかっ!
ということでありえない言葉、若者言葉に入るかどうかはわからないが、ピージャッケルが生まれたのだろう。
しかし、確かに動きやすい。
逆にロング丈のチェスターフィールドコートで、走れなくはないが裾がもたつくし、座ることすら丈が気になる。
要は実用性がないのだ。
そこで防寒のコートの側面、耐久度は維持しつつ、丈を短くした動きやすい(仕事しやすい)コート。
実に素晴らしいコートをオランダでは使っていた。
そこから、軍服となったのだ。
オランダの人たちが、おそらく海上労働者たちが、上着服を着ていたのでしょうね。
寒いところで働かなくちゃいけない。
アメリカ人とかイギリス人が見て、それはなんだ?良さそうじゃないか。
「我が国では、ピージャケッルと言う!」
英語としてですよ、ここから、
pea jacket。
ピージャケッルを、ピージャケットと聞いた、だからピーだったのだ。
もちろん諸説あるのだが、歴史を辿ってみたならば、この考えは非常に有力ではないだろうか。
そんな理由で、伝統的に今日でも、ピージャケットと呼ぶわけなのだ。
もとになってるピージャッケルというオランダ語が源である、と考えるとスッキリするのではないだろうか。
デニムだって、フランスのセルジュ・ドゥ・ニーム(ニームの綾織)の、ドゥニームが語源だ。
ピーコートは、ピージャケットというジャケットではなくて、歴としたコートだ。
それも、強靭で、時には軍服として。時には船乗りたちが。
走り回り、マフポケットで寒さを凌ぎ、決してカジュアルではない勇ましい海の男たちのコートだ。
そんな歴史ある上着服、ピーコート、これからはピージャケットと呼んでみても良いかもしれない。
ある日漁師は長いコートの裾を切って、寒さをカバーしつつ動きやすいコートを奥さんと開発した。
意外にも好評だったそのコートは、お前それ、上着服じゃん。と揶揄される。
それなのに軍服に採用され、唯一ポケットに手を入れて良いぞ。というコートとなった。
いつしかサンローランは婦人服としてピーコートを発表し、現代ではモードのみならずピーコート自体がファッションのアイコンになっている。
だからこそ、こん普遍的なディテールをオマージュしつつ、現代的にモデファイしなければいけないのが、私たちのような現代の服に関わる人間の責任ではないか。
ということで、なかなか重厚にまとめてしまったが、まずは寒い日はピージャケットで風を凌ごうか。
さて、明日は何着よう?
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年10月30日
オーダーコート | コートの歴史
タグ:服飾史, コート, 講義, ピーコート
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