【完全保存版】コートの種類と歴史を徹底解説|チェスターからポロコートまで奥が深いメンズコート
皆さんこんにちは、松はじめです。
コートの季節がやってくるとわくわくするのは私だけでしょうか。メンズのコートというのは、本当に面白いんです。スーツやジャケットはある程度形が決まっていますが、コートに関しては実にたくさんのデザインが存在します。
私は東京の表参道で10年以上オーダーのサロンを経営させていただいており、毎年たくさんのコートをお仕立てさせていただいています。私自身もたくさんのコートを持っていますので、この冬という時期が、装いに関しては一番楽しいと言っても過言ではありません。
今日は、チェスターフィールドのような一般的なコートだけではなく、様々なコートについて網羅的に、歴史的にどんなコートがどういう経緯で登場していったのかを解説させていただきます。
Pコート – 1790年に登場した海軍の防寒着

最初にご紹介するのがPコートです。短い丈でダブルになっていて襟がある、皆さんがイメージする通りのあのコートですが、実はかなり歴史が古いコートなんです。
登場は1790年。ペンシルバニアパケットという新聞の1月4日号に「Pコート」という言葉が使われていました。元々はオランダ語の「Pジャケット」という言葉から来ていて、Pジャケットという言葉は1720年のポストガゼット週刊新聞にも登場していますから、かなり古いコートだということがわかります。
今ではカジュアルなコートという印象がありますが、元々は海軍の方が着ていたコートでした。特に甲板に立って見張りをする役割の方が着るコート、専門用語で「リーファー」と呼ばれていたものです。
麻布ポケットの合理的な設計
船の甲板は寒く、特に北の海では北風が冷たいものです。防寒性を高めるためにダブルブレストになっており、ここが2枚になっていますから幾分か暖かいわけです。
このコートの最大の特徴は「麻布ポケット」というポケットにあります。現代でも多くのPコートに採用されている、縦に切り込んだポケットのことです。
軍人たるもの、姿勢を正しくしていなければなりません。横のフラップポケットに手を入れると、どうしても猫背になってしまいます。しかし見張り役は寒い。そこで特別に、姿勢が崩れない縦型の麻布ポケットが開発されたのです。背筋が伸びた状態で手を入れられる、非常に論理的な設計なんですね。
さらに、風向きに応じてダブルの打ち合わせを変えられ、襟を立てて風をしのぐことができる。非常に合理的なコートとして誕生したのがPコートなのです。
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チェスターフィールドコート – 1840年、洒落者伯爵が愛したコート

1840年になると、チェスターフィールドコートが登場してまいります。今やスーツの上に着るビジネスコートの代表格ですが、なぜこれほどまでにメジャーになったのか。それはまさにある洒落者の存在が大きいのです。
その洒落者とは、チェスターフィールド伯爵。このチェスターフィールド伯爵が愛用したから、チェスターフィールドコートと呼ばれるわけで、人名なんですね。服飾事典では第4世にちなむと書かれていますが、実際は第6世だと言われています。
防寒のためのレイヤードスタイル
当時のイギリスは非常に寒く、暖房も発達していませんでした。そのため、ウエストコート(ベスト)の上にフロックコートを羽織り、さらにその上にコートを羽織り、最終的にオーバーコートを羽織るという重ね着をしていたのです。
1838年にイギリスのベテランの仕立て屋、エドワード・コート氏が作った「コート本」というコートがなかなかかっこよかったと言われています。これを見たチェスターフィールド伯爵が、それをさらに改良し、丈を短くして、おしゃれ着に進化させました。室内着プラスアルファー、散歩に出かけるときの軽快なコートとして誕生したのです。
本来は「コート本」と言っても過言ではないのですが、洒落者のチェスターフィールド伯爵がアレンジして着たということで、チェスターフィールドコートという名前が今でも残っているわけです。不思議ですよね。
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バルマカーンコート – 1850年登場のステンカラーコート

1850年頃になってくると登場するのがバルマカーンコートです。聞き慣れないという方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に言うとステンカラーコートのことなんですね。
実は「ステンカラーコート」という言葉は和製英語で、日本だけの独自の表現なんです。新橋のビジネスマンが化学繊維のステンカラーコートを着て黒いバッグを持って歩く光景を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、意外にも歴史は古く、1850年という時代に登場しました。
チェスターフィールドとは違って、これはもうオーバーコートとして着るものです。ラグランスリーブという、袖が1枚で続いていくような型紙の切り返しをしたコートで、襟が特徴的です。
密かに私が好きなベスト3の1つで、ネイビーのロング丈のバルマカーンコートなどは本当にかっこいいですよね。
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アルスターコート – 1869年、旅行者のための防寒コート

1869年になって登場したのが、アルスターコートです。いわゆるアルスターカラーという特徴的な襟に長めの着丈、ベルトでくるくると巻いたりもしていました。
これは旅行者のコートだったと言われています。アルスターという地方から輸出されたということでアルスターコートになったと言われているんですね。
このコートはフリーズという素材を使って作られていました。ちょっと毛布のような、かなり分厚い素材です。アイルランドでジョン・バーバー氏が生地屋を始め、ドニゴール地方で作られたドニゴールツイードで知られる場所です。このバーバー氏が、長距離の馬車移動に最適だとフリーズ素材が売れていることに気づき、作ったコートがアルスターなんですね。
1868年にアルスター地方のベルファストというところから輸出したという記載があり、これがアルスターという名前の由来ではないかと言われています。ちなみにフリーズという生地は1418年の英国の文献にも出てくるということですから、かなり古くからあった防寒素材だったわけです。
アルスターコートはクラシカルなコートで、今でもこの原型がいろんなコートに派生していっている、まさに現代コートの原型とも言えるものです。
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ダッフルコート – 1902年、漁師から軍人まで愛されたコート

1902年に名前が登場したのが、ダッフルコートです。学生のコート、フード付きのあれでしょ、と思われた方、これも結構違う、かっこいいコートなんです。
1902年にキプリングという小説家の「少年キム」という小説の中に、ダッフルコートという言葉が登場してきます。さらに遡ると1850年頃、民族的な服として漁師さんが着るコートとして服飾事典に出てくるんですね。
特徴的なトグルボタンは、拾った浮きなどで作っていたのではないかとも言われています。北海道の漁師さんが防寒性を考えて作られたものでした。
1971年の映画「愛の狩人」というアイビーファッションが学べる映画にも登場しますし、英国陸軍のバーナード・モンゴメリー将軍もダッフルコートをかっこよく着こなしている写真が残っています。
元々漁師さんが着るコートであり、将校も着た。可愛く見えるコートに見えがちですが、実は歴史も深くてかっこいいコートの一つなんです。
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トレンチコート – 1912年、塹壕戦から生まれた機能美
1912年にその名が登場したのがトレンチコートです。今やレディースでもたくさんのデザインが出ているトレンチですが、これは「トレンチ大作戦」というものから生まれました。
当時の戦争は鉄砲で打ち合う時代で、深い溝を掘ってその中に入り、撃つときだけ出て、また隠れるという戦法が取られました。この溝のことを「トレンチ」というわけです。
このトレンチ大作戦には大きな欠点がありました。雨が降ったときの排水がなされていなかったため、溝の中は泥だらけになってしまうのです。豪雨に打たれた後は体も冷え、非常に動きづらく消耗します。
これを何とかしようと、軍がアクアスキュータムに開発させたのが、防水生地を使ったトレンチ専用のコートだったんですね。バーバリーなど各社が軍用の防水コートを作りました。
機能的なディテール
トレンチコートにはいろんな仕掛けがあります。肩の部分には銃を当てられるように布が重ねられていたり、ゆったりした作りでベルトでキュッと締める設計は防寒性に優れています。
通常の軍服よりも10センチ以上長く袖を作り、折り返して内側に入れ、縛ることで雨が入ってこなくなる。こんないろいろな防水対策がなされて、ついに完成したトレンチ大作戦用のコート。これが1912年頃だったと文献に残っています。
この後、戦争とは無関係に大ヒットしていき、今でも着られているミリタリー発祥の名作コートとなったのです。
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ポロコート – 1920年、競技の合間を彩る優雅なコート

1920年になると、アルスター系統のものを原型に作られたのがポロコートです。
ポロというのは競技の名前です。ポロ競技は4対4で戦う競技で、「1チャッカー、2チャッカー、3チャッカー」と回が進んでいきます。このチャッカーという言葉から、チャッカブーツという靴も生まれました。
ポロ競技の1チャッカーと次のチャッカーの間、体が寒くならないように羽織るウェイティングコート、これがポロコートとして誕生したんですね。アルスターっぽいものをベースに、トレンチのようにベルトで締める。ゆったり羽織って体を冷やさないようにするコートだったわけです。
私が一番好きなコート
これが私がかなり一押し、一番好きなコートと言われたら、ポロコートだと思います。
特徴的なのは背中のインバーテッドプリーツです。背中のベルトでキュッと締めてあげるのも特徴で、ポケットはフラップとパッチという独特なパッチポケット、フラップもある贅沢な仕様です。
アクションプリーツが入っていて動きやすく、機能性と優雅さを兼ね備えた素晴らしいコートなんです。
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まとめ – 歴史と機能美が詰まったコートの世界
今日いろいろなコートをご紹介させていただきました。
例えばチェスターフィールドコートといっても、シングルだけではなくダブルになったものもありますし、シングルのボタンが見えないように比翼仕立てになっているものもあります。また本格的な仕立てでは、襟の部分だけベルベットを配したりということもあるんです。
本当にいろいろなデザインがあって、こうして見ると歴史深くて、かなり楽しめる。それがコートです。語れる部分も多いですし、ぜひこの冬は自分のコートというもので、装いを進化させてみてはいかがでしょうか。
さて、明日何着よう。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2025年11月19日
オーダースーツ ボットーネのブログ | 明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術
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