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スーツのドライクリーニングは本当に悪いのか? プロが語る真実

こんにちは、松はじめです。表参道で10年以上オーダーメイド洋服のサロンを経営している経験から、今日はよく耳にする「スーツはドライクリーニングに出してはいけない」という話について徹底解説したいと思います。

「ドライクリーニングにスーツを出すと痛む」「余計な油分をそぎ取ってしまうから頻度は低くするべき」—こういった意見をよく耳にします。しかし、これは全てのドライクリーニングに当てはまるわけではありません。結論から言うと、ドライクリーニングにスーツを出してはいけないということはありません。ただし、クリーニング店選びには重要なポイントがあります。

この記事の目次

ドライクリーニングの溶剤の種類を知ろう

クリーニングの質を決める大きな要素の一つが使用される「溶剤」です。主に3種類の溶剤があり、それぞれ特徴が異なります。

1. 石油系溶剤

業界で最も多く使われている溶剤です。

メリット

  • 価格が安い(お客様にとっても、クリーニング業者にとっても)

デメリット

  • 汚れの除去力はそれほど強くない
  • 乾ききっていないと独特の匂いが残る
  • 石油なので火災のリスクがある(そのため新規店舗は郊外に出さざるを得ない)

2. 塩素系溶剤(テトラクロロエチレンなど)

高級ホテルのコンシェルジュサービスなどでよく採用される溶剤です。

メリット

  • 汚れ落ちが非常に良い
  • 燃えないので安全性が高い

デメリット

  • 強い洗浄力ゆえに洋服を傷めやすい
  • 生地の油分を取り過ぎる(パサパサになる原因)
  • 色や風合いを変えてしまうリスクがある

3. シリコン系溶剤

私が信頼しているナチュラルクリーンさんが使用している溶剤です。

メリット

  • トリートメント効果がある
  • 洋服の生地を傷めにくい
  • 風合いを損なわない

デメリット

  • コストが高い(結果としてクリーニング料金も高くなる)

クリーニングの洗い方も重要

溶剤の種類だけでなく、洗い方も洋服の状態に大きく影響します。

大量処理型: 多くの洋服を一度に洗う方法で、コストは抑えられますが洋服へのダメージリスクが高まります。

丁寧な一点洗い: 私が信頼するナチュラルクリーンさんの松村さん(京都大学薬学部出身)が実践しているのは、まず汚れを見つけて部分的に落とし、その後短時間で洗うという方法です。洗う時間が長ければ長いほど洋服は傷みやすいため、この方法が理想的です。

石油系溶剤であっても、丁寧に洗えば大きなダメージは避けられます。逆に言えば、どんな良い溶剤を使っていても、大量処理で雑に洗われては洋服の風合いは損なわれてしまいます。

シミ抜きの技術にも大きな差

シミ抜きの腕はクリーニング店によって大きく異なります。シミ抜きは生地にとってリスクがあるため、リスクを避けてあまり積極的にシミ抜きをしない店もあれば、高い技術でしっかりシミを落とす店もあります。どのようなシミ抜きのポリシーを持っているかも、クリーニング店選びの重要なポイントです。

ドライクリーニングだけでは不十分な理由

意外と知られていないのが、ドライクリーニングは油性の汚れしか落とせないという事実です。人間の汗やコーヒー、お茶、醤油などの水溶性の汚れはドライクリーニングでは取れません。

ドライクリーニングだけを続けると、水溶性の汚れが残ったまま高温のプレスをかけることになり、汚れが固着してしまいます。つまり、見た目はきれいでも実は汚れたままということになります。

そのため、理想的なのはウォータークリーニング(水洗い)とドライクリーニングの併用です。ウォータークリーニングで水溶性の汚れを、ドライクリーニングで油性の汚れをそれぞれ落とすことで、本当の意味できれいな状態に仕上がります。

「汗抜き」について

一部のクリーニング店では「汗抜き」というオプションがあります。ただし、松村さんによると「汗抜き」の定義は店によって様々で、単に脇の部分だけを水で処理する場合もあるとのこと。本当に汗による汚れを落とすには、やはり適切なウォータークリーニングが必要です。

スーツを水洗いするリスクと技術

スーツを水につけると、内部の副資材(パッド、芯地など)も含めて形が大きく崩れます。これを元に戻すには、洋服の構造を理解した高い技術を持つプレスマンが必要です。

水洗いができるクリーニング店には、必ず優れたプレスの技術を持つスタッフがいるはずです。ナチュラルクリーンさんの及川さんのプレス技術は、洋服を作る私から見ても唸るほどの素晴らしさです。

スーツのクリーニング頻度とお店選び

高級なスーツであれば、基本的にはシーズンに1回程度のクリーニングで十分です。特に石油系溶剤を使うお店で水洗いもしない場合は、頻繁に出すよりも、日常のブラッシングをしっかり行い、シーズンに1回程度のクリーニングがおすすめです。

一方、ウォータークリーニングも併用する優れた技術を持つクリーニング店であれば、汚れや汗がひどい時には都度出しても、さほどダメージはないでしょう。

クリーニング店を選ぶ際のポイントをまとめると:

  1. 使用している溶剤の種類を確認する
  2. 洗い方が丁寧か(一点洗いか大量処理か)
  3. ウォータークリーニングができるか
  4. プレス技術が高いか

これらを踏まえ、私が信頼しているのがナチュラルクリーンさんです(※この記事は広告ではなく、純粋に私の経験からのおすすめです)。

おわりに

洋服を長く美しく保つためには、適切なクリーニングが欠かせません。「ドライクリーニングに出してはいけない」という単純な話ではなく、どのようなクリーニング店を選ぶかが重要です。ぜひ一度、お気に入りのスーツを信頼できるクリーニング店に相談してみてください。

私は表参道で、お一人お一人と最大120分向き合い、しっかりとピン打ちをして仕立てるサロンを運営しています。洋服のことでご質問やお悩みがあれば、いつでもご相談ください。また、「リセット仕事服」という本も出版していますので、コロナ以降のメンズファッションの基礎に興味がある方はぜひお手に取ってみてください。

皆さんの洋服が長く美しく保たれることを願っています。

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2025年4月16日
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