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明日は何着よう?松はじめのスーツの着こなし術

葬式・お通夜の喪服(礼服)の正解はこれ!

 

皆さんこんにちは、松はじめです。

今日は、多くの方が勘違いしている「喪服」について、世界基準の視点からお伝えしたいと思います。「喪服といえば黒いスーツに黒いネクタイでしょ?」と思われる方が多いかもしれませんが、実は世界的に見ると、それは必ずしも正解ではないのです。

 

この記事の目次

日本独特の「黒い喪服」文化の真実

黒いスーツは実は日本だけの文化

驚かれるかもしれませんが、喪服で黒の上下を着るというのは、実は日本独特の文化なのです。世界的に見ると、葬儀の場で必ずしも黒を着るという国はそれほど多くありません。

この日本の「黒い喪服」文化には、実は商業的な背景があります。昔、大手メーカーが「冠婚葬祭、この黒があれば大丈夫です」というキャッチフレーズで販売戦略を展開したのです。特にロードサイドの「2着でいくら」といったスーツ店が全国に展開される中で、販売員にとって説明しやすい商品として「黒いスーツ」が重宝されました。ネイビーのスーツなどは説明が複雑ですが、「冠婚葬祭はこの黒で大丈夫」と言えば簡単に売れたのです。

オフスケール染めの問題点

日本の黒いスーツの多くは「オフスケール染め」という技法で作られています。これは、ウール本来が持つ鱗(スケール)を化学的に除去してから染色する方法です。確かに非常に深い黒色を出すことができますが、同時にウール本来の特性も失われてしまいます。

生地の専門家である大西元気先生によれば、「こんな馬鹿なことをやっている国は日本ぐらい」とのこと。ウールが持つ本来の伸縮性や風合いを犠牲にしてまで、極端に黒い色を追求するのは、素材の特性を無視した発想なのです。

世界基準の喪服とは

ミッドナイトブルーという選択

では、世界基準で見た時の喪服とは何でしょうか。私がおすすめするのは「ミッドナイトブルー」のスーツです。

ミッドナイトブルーの歴史は古く、ヨーロッパの薄暗い照明の中で、黒いフォーマルウェアが黒く見えないという問題を解決するために生まれました。ある方がテーラーに「黒よりも黒く見える色を作ってほしい」と依頼して作られたのが、このミッドナイトブルーなのです。

夜間の照明下では黒く見え、日中の太陽光ではうっすらとネイビーに見える。この絶妙な色合いが、真の意味でのフォーマルカラーと言えるでしょう。

国際的な事例から見る現実

過去にヨルダンの国葬が行われた際、黒いスーツに黒いネクタイを着用していたのは、当時のアメリカ大統領と日本の総理大臣だけでした。他の各国首脳は皆、ネイビーのスーツにネイビーのネクタイ、ネイビーのチーフという装いだったのです。

この事実からも分かるように、国際的には必ずしも「黒」が喪服の絶対条件ではないのです。

正しい喪服の構成要素

スーツの選び方

日本的に無難に行くなら黒いスーツでも構いませんが、世界基準を意識するなら:

  • ミッドナイトブルー:最もおすすめ
  • ダークネイビー:深い紺色
  • チャコールグレー:フランスなどで選ばれることも

これらの色は、故人への追悼の気持ちを適切に表現できる色とされています。

ネクタイの選択

ネクタイについても同様です。国際的な葬儀で公式に「黒いネクタイで」と指定される場合もありますが、基本的には:

  • ダークネイビー:忠誠や誠実さを表す
  • 深いグレー:落ち着いた印象

ネイビーは非常にフォーマルな色であり、真っ黒よりも品格のある印象を与えます。

なお、ネクタイの結び方についても、ディンプル(首元のくぼみ)を作るかどうかは、その家庭やコミュニティによってルールが異なります。必ずしも統一されたマナーがあるわけではないのです。

シャツの注意点

シャツで避けるべきはボタンダウンシャツです。これはブルックス・ブラザーズが出張時の実用性を考えて開発したビジネス向けのシャツで、フォーマルな場には適しません。

喪服には:

  • ワイドスプレッドなどのシンプルな襟型
  • 白無地
  • 装飾のないデザイン

これらを選んでおけば間違いありません。

靴は絶対に紐靴で

靴については、これは絶対的なルールがあります:

  • 黒の紐靴(レースアップ)
  • ストレートチップが理想
  • プレーントゥでも可

避けるべきは

  • ローファー(脱ぎ履きしやすいスリッポンタイプ)

ローファーは元々貴族の室内履きでしたが、現在はカジュアル寄りのアイテムとして認識されています。式典の場では、きちんと紐で結ぶタイプの靴を選ぶのがマナーです。

喪主の方や関係者の方は、意外と靴をよく見ています。「脱ぎ履きしやすいから」という理由でローファーを選ぶのは避けた方が良いでしょう。

小物類へのこだわり

筆記用具の重要性

意外と見落とされがちですが、受付での記帳時に使う筆記用具も重要です。置いてある安価なペンを使うのではなく、きちんとした万年筆を持参することで、故人への敬意を表すことができます。

実際に「百均のペンで記帳して怒られた」という方もいらっしゃいます。このような細部への配慮が、真のマナーと言えるかもしれません。

ベルト vs サスペンダー

ベルトについては、黒のベルトでも構いませんが、実はより格式高いのはサスペンダーです。ベルトは実用的なアイテムであるのに対し、サスペンダーは公式な式典にふさわしいアイテムとされています。

もし可能であれば、黒のサスペンダーを使用することで、より格式高い装いになります。

サイズ感への配慮

日本特有の事情を考慮したサイジング

日本の葬儀では畳の上で正座をする機会が多いため、普段のビジネススーツとは異なるサイジングを考慮すべきです:

  • 膝周りにゆとりを持たせる
  • 裾周りも少し余裕を持たせる
  • パンツの丈を気持ち長めに設定

座った時の見た目や動きやすさを考慮したサイジングが重要です。

生地選びの現実

黒い生地の限界

実際のところ、オーダーメイドの世界では黒い生地の選択肢はそれほど多くありません。タキシード用のモヘア素材などはありますが、通常のスーツ用となると限定的です。

また、黒い生地は「着込んでいく味」が出にくいという特徴があります。ネイビーやミッドナイトブルーなら、着用を重ねることで生地に味わいが生まれますが、黒い生地ではそうした変化を楽しむことが難しいのです。

まとめ:個人への想いを服で表現する

結局のところ、喪服の本質は「故人への追悼の気持ちを服で表現する」ことにあります。必ずしも「これでなければならない」という絶対的なルールがあるわけではなく、TPOに応じたふさわしい服装を心がけることが大切です。

日本では黒いスーツが無難であることは確かですし、周囲から浮いてしまうリスクを避けたい方は従来通りの装いで問題ありません。

しかし、世界基準を知った上で、自分なりの装いを選択するという考え方もあります。私自身は、ミッドナイトブルーのスーツにダークネイビーのネクタイという組み合わせで喪服としています。

大切なのは、形式にとらわれすぎることなく、故人への敬意と追悼の気持ちを込めて装いを選ぶことです。そして、そこに自分なりの品格と美意識を反映させることで、真の意味での喪服となるのではないでしょうか。

突然の訃報はいつ訪れるか分かりません。その時に慌てることのないよう、今回お伝えした世界基準の知識を参考に、ご自身なりの喪服スタイルを考えてみてください。

最後に、皆さんはどのような喪服をお選びになりますでしょうか。今日の話が少しでもお役に立てれば幸いです。

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松 甫ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>> Twitter Facebook 表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。

2025年6月28日
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