【初心者向け】パターンオーダー?フルオーダー? オーダースーツの種類を解説

「オーダースーツって、どうしてお店によってこんなにも価格が違うのですか?」
先日初めてボットーネにお越しいただいたお客様から、このような質問がありました。
そのお客様は、初めてのオーダースーツにチャレンジするということで、光栄にもBOTTONEにお越しいただきました。
詳しくご説明する内に、「確かにこれって分かりづらいな…」と思う訳ですが、オーダースーツの種類(パターンオーダー、フルオーダーなど)による価格差もあれば、取り扱う生地、仕立ての品質なども価格に反映されますので、お客様にとっては益々分かりにくいのです。
そこでこの記事では、スーツをオーダーされたことのない初心者の方に向けて、
①オーダースーツの種類
②品質の違い
③生地の違い
この3つの軸で詳しく解説していきたいと思います。
✅ パターンオーダー?フルオーダー? よく分からないよ!
✅ 自分にはどんなオーダースーツがいいのだろう・・・
✅ 価格の違いにはどんな要素が?
こんなお悩みをお持ちの方にはぴったりの記事になっております。
是非最後までご覧ください。
この記事の目次
オーダースーツの種類

オーダースーツには大きく分けて3つの種類が存在します。
お店によって微妙に呼び方が違ったりするのが更にややこしいのですが、本質はこの3つ
①フルオーダー
②パターンオーダー
③イージーオーダー
上記3つが大まかなオーダーの種類です。
皆さんはそれぞれの違いを説明できますでしょうか?
まずはここを理解することで、今の自分に必要なオーダースーツはどんなものか?このあたりが見えてくるようになります。
オーダースーツに興味を持たれた皆さんが、ご自身でネットで調べてみたとしても、
●ありきたりなまとめサイト
●いつも同じ店舗が1位のランキングサイト
●詳しすぎて訳が分からないブログ
こんなサイトばかりがヒットして、いまいち信用していいのか分からない!となってしまいませんか?
『ありきたりなまとめサイト』が一番悪質で、スーツのことを何も知らないライターさんがネットで調べながら適当に書いているケースがほとんどですから、これを信用してしまうと間違った認識を持ってしまいます。
そうならないように、東京表参道の地で10年以上オーダースーツサロンを経営しているBOTTONEが、みなさんに『分かりやすく・正しい』知識をお届けしたいと思います。
フルオーダー

ここでは、フルオーダー=フルハンドメイドのオーダースーツと定義しましょう。
フルオーダーは、職人が採寸・型紙の作成・裁断から仮縫い・中縫い・本縫いと最後の工程まで、そのほとんどを手作業で行います。
いわゆる”丸縫い”というやつですね。
スーツのデザインには職人の感性が投影され、納期は短めに見ても仮縫いを含めて半年程度、著名なテーラーや繁忙期と重なれば1年以上かかることも珍しいことではありません。
フルオーダーで誂えるということは、職人(テーラー)の技術・手間に対してクライアントはお金を払うということであり、その価格は生地によって多少変動はあれど、約40万円~というテーラーが多いように思います。
一時期は高齢化が問題となり技術の継承が不安視されていましたが、近年は30代・40代の若いテーラーが増えてきており、かつてないほどの盛り上がりを見せております。
一部のWEBサイトなどでは、「仮縫い付き=フルオーダー」という風に書いている場合がありますが、これは明確に間違いです。
後述するイージーオーダーでも仮縫いは可能ですので、勘違いしないようにしてくださいね。
残念なことに、「うちは仮縫い付きのフルオーダー店です!」と自ら誤解を招く表現をしているお店も…。
こんな人にフルオーダーはおすすめ!
✅ 憧れの職人さんに最高の1着を仕立ててもらいたい
✅ イージーオーダーは経験済みで、次のステージを味わいたい
✅ とにかく予算は気にしない、品質が最優先
パターンオーダー

パターンオーダーとは、既成サンプルをベースに袖丈などの数カ所を自分のサイズに合わせて仕上げていきます。
別の言い方では「セミオーダー」ということもあるようです。
イメージとしては「既製品+微調整」といった感じでしょうか。
低価格(約2万円~)&短納期(約2~3週間)で仕上がる点は大きな魅力と言えますが、これはどちらかというと「オーダー」という分類ではなく「発展した既製服」と捉えた方がしっくりきます。
もともとパターンオーダーという概念は、例えばA社のXブランドというスーツ(既製服)が存在したとして、
●サイズ面などでのお直しの領域を超えている
●サイズは合っているけれども他の生地が欲しい
という場合に柔軟に対応する為に発展してきた背景があります。
つまり、補正などは大きく入れることはできませんが、サイズ調整&ちょっとしたデザインの変更や生地選びを味わう為に生まれた訳です。
全国展開しているような大手がよく採用しているオーダー方式になります。
この辺りを履き違えてしまうと、「オーダーしたのにしっくりこない!」という自体になりかねません。
しっかりとパターンオーダーの特性を理解した上でオーダーすると、満足度の高いスーツが手に入りますよ。
こんな人にパターンオーダーはおすすめ!
✅ とにかく手軽にオーダーしてみたい
✅ 価格はできる限り抑えたい
✅ どうしても着用したい日があって、時間がない
イージーオーダー

イージーオーダーが最も説明が難しく、幅広い解釈でとられているオーダーの種類だと思います。
いうなれば、フルハンドの長所と既製服の長所を掛け合わせた第三の仕立てのようなイメージです。
スーツといえば、昔はフルオーダーが当たり前で、その時代の後にアメリカ文化が入り既製服として認知されるようになりました。
そんな中で生まれたイージーオーダーは、フルオーダーでもなく、既製服でもない、中間に位置する第三の仕立て。
パターンオーダーも同様に分類できますが、パターンオーダーとイージーオーダーでは明確に違う点がいくつかあります。
パターンオーダーは、サイズサンプルをベースに微調整を加える方式でしたが、イージーオーダーは、様々なサイズの型紙に、店頭で採寸された顧客の寸法をフィットさせ、一点ずつ裁断し縫製し仕上げていく方式です。
あらゆる補正に対応でき、型紙から一点ずつ裁断するという点では、イージーオーダーは唯一無二のオーダースーツが仕立てられると言えます。
お店によっては仮縫いをすることもでき、注文服としてメリットが明確に体感できるのがイージーオーダーです。
価格はお店によって違うと思いますが、スーツで約7万円~。
納期は1ヶ月~2ヶ月、仮縫いは追加で1ヶ月程度が相場です。
こんな人にイージーオーダーはおすすめ!
✅ オーダースーツの醍醐味を味わいたい
✅ 自分にぴったり合ったサイズのスーツを着たい
✅ 店員さんではなく、専門家と一緒に仕立ててみたい
イージーオーダーは日本独自?

ということでフルオーダー、パターンオーダー、イージーオーダーについて説明させていただきました。
同じオーダーという名が付いていますが、細かく見ていくと全くと言っていいほど違いますよね。
それでも出来上がってくるのは「スーツ」であることに変わりありません。
自分が求めるものにはどんなオーダーの種類が適切なのか、じっくり考えてみてくださいね。
ちなみに、ここでは分かりやすいようにイージーオーダーとうたいましたが、本来はイージーオーダーとは日本独自の呼び方ですので注意してください。
パターンオーダーとイージーオーダーは海外では同じように分類されることも多く、本来は分ける必要がないのかもしれませんね。
明確なことは、フルオーダーは全くのゼロベースからパターンを起こす、すなわち時間とコストは大幅にかかるということ。
それ以外のオーダーは、あくまでもベースとなるパターがあり、そこからどのように調整できるのかという点でパターンオーダー(簡易的)とイージーオーダー(フルオーダーに近い)の境目は存在すると理解してください。
イージーオーダーとパターンオーダーは一見違いが分かりにくいですが、料金や補正の対応可能範囲で判別することができる。
ちなみにボットーネは・・・

私たちのオーダーシステムは、型紙をゼロベースから起こすフルオーダーではありません。
しかし大量生産 でもなければ、通り一辺倒の型が決まったマシンメイドのパターンオーダーとも違います。
3つの分類の中では『イージーオーダー』が当てはまります。
先ほどご説明したように、丸縫いのフルオーダーだと生地にもよりますが1着40万円くらいが相場です。
ボットーネは創業時から、「普通の方が輝ける服を、普通よりも楽しく、普通よりも丁寧に。」そういう想いがあり、最初は7万円の価格帯からスタートしました。
百貨店で同じ服(スーツ)を買うのなら、「ストーリーを楽しみながら、専門家と一緒に服を作ろう」と思っていただけるようなところを目指しましたので、0からパターンを起こす形ではなく、既存のパターンをベースにしてシルエット構築しています。

もちろんパターンをベースにしていても、細かな補正を加えるのはもちろんのこと、お客様ひとりひとりのお身体にフィットするよう1着1着丁寧にお仕立しております。
「誰がやっても同じ」ではなく、フィッターの力量も仕上がりに大きく反映されますので、お客様の意見も組み合わせつつ、こだわりを持ってご提案させていただきます。
残念なことに、「うちは仮縫い付きのフルオーダー店です!」と、明らかにイージーオーダーなのに誤解を招く表現をしているお店が非常に増えています。
正直に言ってしまうと「なんだ、ボットーネさんはフルオーダーじゃないのね…」となってしまいそうなんですが、ここはあえて記載させていただきました。
オーダーの種類で生地は変わるの?

詳しい方は、生地によって価格が変わってくることを良くご存知かと思います。
「こっちの生地の方が好みだけど、価格はこっちの方が助かるな…」と悩まれたご経験もきっとあることでしょう。
ですが、生地による価格の違いはお店の中での価格の違いであって、「どんなテーラーにスーツをオーダーしようかな…」と悩まれている人にとってはあまり参考になりません。
例えばAテーラーとBテーラーがあったとしまして、同じ生地でスーツを仕立てたいと思います。
生地はオーダースーツ生地のなかで最もポピュラーなCANONICO(カノニコ)としましょう。
Aテーラーでは3ピースで約12万、Bテーラーでは同じく3ピースで8万円でした。
「それなら、お得なBテーラーにお願いしよう!」・・・となりそうなもんですが、なってはいけないんです。
実はAテーラーの方があらゆる面で優れているかもしれません、驚くほど着心地が良くなる芯地を使っているかもしれませんし、研究に研究を重ねた特別なパターンを使用しているかもしれません。
生地は同じものを扱っているお店がほとんどですが、オーダースーツはそれ以外(例えば『仕立ての良さ』)の領域で大きな差が生まれるのです。
なのに、そこがどうしても分かりにくい。
良いスーツ=良い生地、これは違うということ。
それなのに、生地だけが良いブランドのスーツが横行してしまっているのです、残念ながら。
これはオーダーだけでなく、既製服スーツでも良く見られること。
生地、ゼニアです!ロロピアーナです!と。
でも仕立ては限りなくローコストで作ってるのが現状です。
どうして? それは生地はわかりやすい、対して仕立てはわかり辛いから。
ややこしい話をしてしまいましたが、まとめると、生地の種類は多いにこしたことはありませんが、『お店選び』の段階では重要ではありません。
そこは勘違いしないようにしてくださいね。
✅ 生地の種類でお店の良しあしは分からない
✅ 生地の説明や値段はキャッチーで分かりやすいだけに、惑わされないで!
生地と仕立てのバランスが重要

ということで、オーダースーツの種類について説明をさせていただきました。
そして重要なことは、オーダーの種類=仕立ての品質の違いであり、それが価格や納期に影響してくるということ。
イタリアのカノニコは最もポピュラーな生地と言えますが、例えば同じ品番のカノニコの生地を使っても、オーダーの種類と仕立ての品質によって3万円のスーツにもなれば、10万円のスーツにもなりえます。
価格は違いますが、どちらも同じカノニコのオーダースーツです。
オーダースーツにおいて生地とはまさに製品そのものとも言えますが、生地のブランドばかりを気にしてしまっては重要な部分を見落としてしまうかもしれません。
車で例えるなら、フェラーリの見た目をしているのであれば、エンジンも相応の物を積んでいることが望ましい。
フェラーリの見た目だけど、エンジンは軽自動車と変わらないのであれば、それは果たしてフェラーリなのか・・・。
低価格のスーツが悪いということもちろんありません。
それぞれのステージにふさわしいクオリティがあるということをお伝えしたく、このような表現となってしまいました。
皆さんも参考にしてみてくださいね。
ライター:nakanomaru一度は大手IT企業へと入社。5年勤務ののち、心の声に従い上京しボットーネに。
人生で情熱を注げることは2つ、1つはサッカー、もう1つはスーツ。
何事もコツコツ、地道に基礎を固め着実に行う動作の安心感の高さはクライアントからの評価も高い。
2025年3月7日
ファッションアイテム | オーダースーツ
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