ペイズリーとパーティーの不思議な関係

出石尚三さんの特別講演 英国からの流儀 では、社交と服装について語られた。
そのなかで、ビクトリア時代、パーティーでいかにお金を使ったか?について以前の記事で書いた。
そもそも、なぜそんなにパーティーにお金を使ったのだろう、そして使えたのだろうか?
日本もバブルという、六本木でタクシーを捕まえようとしたならば札束ををちらつかせ競い合った時代があったのだと思う。以前2年間携わったうちの顧問に当時の様子を聞いたときに、
六本木→赤坂を移動するだけで1万円払いましたよ。と言っていたけれど、このときの英国はどうであったのだろう?
まず、なぜそんなにパーティーにお金を使うのか?について、1つは産業革命が大きく関係している。

18世紀以前は、色々なものを手で作っていたのである。
靴もハンドメイド。
それを機械にスイッチしたのがこの時期である。教科書に出てくる蒸気機関もそうだけれど、実は後述するあるファッションアイテムもこの産業革命の影響でがらりと変わる。
それから、もう1つの英国が潤った要因が、植民地政策であった。
インド、中国、アフリカ、オーストラリア、世界中にマーケットがあったのだ。

さて、産業革命で大きく変化したある小さな街といえば、ペイズリーである。
ペイズリーとは上記の柄なのだが、この草のようなアメーバのようなモチーフ、現代でもネクタイやストールで見かけることは少なくない。
もともとは手作り。この柄のなかにまるで絵画のように、デザイナー・作り手としての暗号、サインのようなものをわからないよう模様の一部として盛り込んでいることがあるそうだ。
そんなペイズリーだが、要するに地名がもとになっている柄の名前で、スコットランドの小さな小さな街なのだが、ここである革命が起こるのだ。


このスコットランドの小さな街では、カシミアの糸を手で紡いでいた。
手で紡ぐから、細く繊細な織物にすることができたのだし、前述したように模様に似せてわからないようなサインを入れることもできた。
この手紡ぎのカシミアペイズリーのショール、18世紀のヨーロッパで大流行となる。

なぜ大流行になったのかといえば、真冬のパリ(とにかく寒い)でもこのカシミアショールを羽織れば、コート不要といっても良いくらいに暖かいのだそうだ。
現代のような冷暖房の整った環境下ではないから、そういう機能面での優秀さはとても大切だ。
そして、それもももちろんあるのだが、なんといってもその値段を聞くと驚く。
ペイズリーのショール、一体おいくらくらいだと思うだろうか?
なんと、今の値段に置き換えて、200万円とか300万円という金額だそうだ。
私が最初に入社した富山県にある自動車ディーラーに入社したとき、買った車は、ユーノスノードスターの中古だったが、あれを新車で買うと確か200~250万円くらいだったと思う。
とにかくカシミアショールは高価だったということだ。
高価であることはそれだけではないがトレンドを生みやすい、カシミアショールは18世紀ヨーロッパで大流行した。
流行アイテム、かつそれが高価、そして手に入りにくい。
そうなってくると、うちはカシミアショールを6枚持っていましてよ。おたくは何枚お持ち?と、私立小学校のバッグ自慢のような現象になった。
高価で、それに手作業なのだから数も限られるしなかなか完成しない、それを一体何枚持っているのか?というところにステータスがあるというわけだ。
なかなか完成しない、という、そのなかなかとはどのくらいの納期かといえば、大きなものは、5年!
なんとか、あの大人気アイテム、カシミアショールを機械で生産できないだろうか?
200万円するショールを、似たようなものが20万!
そんなビジネスができないだろうか。
もしできたならばこれはビジネスチャンス・・・と考えた輩は存在していた。
1820年、ついに機械化に成功し、200万円のショールの似たようなものを、20万円くらいで量産することができるようになった。
これがペイズリーショールだ。
200が20万になったわけだから、それはもう大ヒット商品になった。
出石先生がぽろっと漏らした言葉は、時代を問わず人間心理をあわわしていた。
《大流行になりすぎて流行が終わるわけですが・・・》
さて、こうして大流行したペイズリーショールだが、
あまりのトレンドに、ペイズリーの街は、現代でいえば中国の田舎がビルだらけの大都会になるような、そんな発展ぶり。次々と倉庫が建設された。
こうして一体は突如立派な街になった。瞬く間にIT長者が誕生するように、ニューリッチが誕生したのだ。
ニューリッチ、フランス語で「

英国は植民地を多く持っている。インド、中国、アフリカ、オーストラリア、とにかく販売先がいっぱいあるから、作れば売れた。一攫千金、イギリスで起業してお金を持ったニューリッチ、次に何を考えたのだろうか?
これも人間の根源的な部分は普遍ということなのだが、地位&名誉欲が湧き上がった。
とはいえ貴族階級ではない、
そこで、息子or娘をできるだけ、できるだけ・・上流なご家庭の子と結婚させられやしないだろうか?
とはいえ、そのような人脈があるわけではなく、自ら開拓するしかない。
どうしよう・・・
いや、ある、、
金なら。
金はあるのだ!
ならば!ここはひとつパーティでもやってしまうか?!
これが、英国で300ポンドクラスのパーティーが次々と開催されていた背景だったのだそうだ。
ビクトリア時代のパーティ、そこにペイズリーが関わっているというから、何とも面白い。
さて、いよいよパーティが始まった。
昼間フロックコートを着ていた男性は、もちろん燕尾服姿。
踊る時に、ドレスの裾を靴墨で汚さないように、とエナメルのルームシューズを履いた。
専用のボールルームに行く。

さて、一体何がはじまるのか、なぜお金がかかった?
そして、いよいよ燕尾服の扱いが問われる・・・。
一瞬で階級が見抜かれたその所作とは一体?
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ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2017年5月19日
スーツの着こなし術 | ジェントルマンの知識
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