終戦記念日 終戦のエンペラーとモーニングコートと
2012年のハリウッド映画
終戦記念ということで、ある服の話を。
2012年の映画で、終戦のエンペラーという映画があります。
この作品は、第二次世界大戦が終わり、連合国の占領下にある日本が舞台です。
1945年8月14日、ポツダム宣言を受諾し、無条件降伏をした日本。
翌日の8月15日、天皇は国民に玉音放送でそれを伝えた。
8月30日になると、マッカーサー最高司令官のアメリカ軍が日本に乗り込んで来ました。
マッカーサーの任務は日本を占領すること。
そのためには戦争責任者を逮捕し、裁判で裁かなければならない
さて、その対象者として、天皇はどうするのか?
パイプがトレードマークのマッカーサー。
マッカーサーは、ボナー・フェラーズ准将に、その調査を命じました。
実際にフェラーズは渡辺ゆり(後に一色ゆり)という米国留学生の友人がいたようで、フェラーズは戦前に来日した時にも、ゆりやその先生の河井道と会っています。
映画中ではヒロイン、あやという形で描かれ、フェラーズに影響を与えます。
フェラーズは、東条英機、近衛文麿、木戸幸一たちを調べ、天皇の戦争責任を問い、裁判にかけるべきかどうかを確かていきます。
内容が内容だけに賛否両論のこの映画、もっといえばアメリカでの興行成績は振るわなかったようで。
どちらかといえば日本贔屓に感じるストーリー設計になっているような気はするけれど、それはいろいろな見方があるところだと思います。
内容の評論をする記事ではなく、素敵だなと思うのはこの時代の服装をうまく反映しているところ。
衣装を担当しているのは、ロード・オブ・ザ・リングのアカデミー賞受賞デザイナーのナイラ・ディクソン氏によるものだといいます。
アヤを演じる初音映莉子さんの、長いステンカラー・コートのトレンチに、ラウンドカラーのクレリックシャツなどこの当時の女性の服装を知る手がかりになるわけです。

終戦後、マッカーサーと昭和天皇が映る写真は有名だけれど、きちんとしたモーニング・コート、コールパンツ。シャツはウイングカラーなんですね。
マッカーサーは軍服を着用しているが、これは平服にあたるわけです。
でもいつもピシッとプレスしたトラウザーズを履いていたようです。
そこに、敗戦国の天皇が、通訳を連れて会いにいくわけです。
もちろん服装の指定があるわけではないけれど、日中の礼装、モーニングコートだったわけですね。
マッカーサーに対して、また日本の代表として装った。
つまり、服は誰のために着るのでしょうか?

その他主要な日本側の登場人物は、立場によってウイングカラーシャツを着ている人間ととレギュラーカラーシャツを着ている人間とに別れていたんですね。
映画でフェラーズの通訳のような役を果たす人物もレギュラーカラーがメインだったんです。
服装においてもこの辺りは大きなターニングポイントとなりますからね。
まず、もともとは明治、英国からフロックコート、テイルコート(燕尾服)が入ってきました。
宮内庁の公式な行事は、午前・日中はフロックコート、夜会はテイルコートとなっています。
長い間フロックコートを着る文化が続くのだけれど、フロックコートをより馬に跨りやすくした新デザイン、モーニングコートが登場します。
こうして次第に正装というとフロックコートはモーニングコート着用文化が広がりました。
昭和20年には正装はモーニングとなっているわけで、ここからアメリカGHQによる日本統治が始まったということです。
こうして英国式・仕立服が当たり前だった日本は、アメリカ式・既製服が当たり前となってゆくのでありました。
ほんの70数年前の出来事だけれど、随分と日本の服装は変わってしまったなと思うわけであります。
そして洋服は軍服や戦争、歴史とも結びついて変化する。
終戦記念日を通して、色々なことを考えさせられる日、
同時に服装のあり方についても考えてみても良いのかもしれないなと思いました。

41歳となる私には、当然だけれど戦争体験はない。
繰り返してはならない、戦争のない世の中に、、それはその通り。
8月14日は依然として空襲が続いた、と記録が残っていました。
空襲警報が鳴るたびに、胸がくるしくなる。
身の危険もそうだが、息子は、家族はどうなったのか、と。
かつて東日本大震災があったとき、毎日のように地震の警報音が鳴ったわけですが、
空襲警報もこのような感じではなかっただろうか、と。
地震は恐ろしい、アメリカ軍の空襲も、恐ろしい。
8月15日の終戦記念日というこの日、
戦争のことはわからないのに、どうしても洋服のことを調べると戦争に行き着くわけです。
戦争は人々のライフスタイルも変えてしまうし、もちろん服装も変えてしまう。
私たちは今、こうして冷房の効いた部屋で、大好きなやりたい仕事に就くことができ、ありがたいことに服を着る場があり、明日食べる物に困っていない。
終戦直後、装うことを考えたでしょうか?
今日、食べることでいっぱいだ。
焼け野原から、松下幸之助は立ち上がった。移動手段が必要だ、と。
焼け野原から、トランジスタラジオは生まれた。アメリカの技術を取り入れて。
前日まで英雄だった軍のトップは、この日を境に戦犯になってしまった。
まるっきり価値観が変わってしまった日。
たった70数年前のできごとから、何を学べば良いのでしょうか?
過去から学ばなければならないと思う。
私たちは先祖の方々のお陰で生かされている。
いま、こうして大好きな仕事をして、日本という国で平和に暮らしている。
日本のために、と命をかけて戦った人々がいる。
そのことに、生かされているということに、日々感謝しなければならないな、とモーニングコートを通じて思ったわけです。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
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