結婚式に着るタキシードには、フォーマル仕様のシャツを着るのが本来ですが、
フォーマルシャツの袖には、カフリンクスをつけます。
カフス・カフスボタンなどとも呼ばれますが、ここでは正式にカフリンクスで統一します。
フォーマルに限らず、ビジネスシーンでも身につけている方もいらっしゃるかもしれませんね。
つけるだけで手元が華やかになり、おしゃれを楽しむアイテムと思っている方も多いと思いますが、
実はフォーマルでは、このカフリンクスにはルールがあるのです。
カフ(袖)をリンク(繋ぐ)
そもそも、カフリンクスは、文字通りカフ(袖)のリンクス(繋ぐの複数形)で、
袖と繋ぎとめる役割をするものです。
よく、カフリンクスと同義でカフスと呼ぶことがありますが、
カフスは英語で”袖口”や”パンツの裾”を意味し、カフ(cuff)の複数形でカフス(cuffs)というわけです。
つまりカフスというアクセサリーの正式名称がカフリンクスとなります。
メンズのシャツではシングル・カフ仕様の袖で、ボタン留めができるようにボタンついている場合でも、
コンバーチブル仕様といってボタンを留めずにカフリンクスをつけることもあります。
こうして袖先を留めることで、汚れ防止と袖口の装飾を兼ねているわけです。
シャツは本来下着であり、その下着のボタンを晒さないため、という本質があるのです。
「下着のボタンをみせるなんて、恥ずかしい!」ということ。
ですから、究極はタキシードを着る場合は、胸元のボタンもスタッドボタンという、
カフリンクスと揃いのものを用いるのです。
これはシャツにもともと付いているボタンではなく、後付けの装飾品となります。
ごく稀に、シャツのボタンをただ黒いボタンに変更しているだけのシャツも見かけますが、
間違ってもそのようなシャツは選ばないようにしてくださいね。
スタッドボタンはカフリンクスとお揃い、これが基本ですよ。
午前や日中の正装、モーニングコートの場合は白と決まっている
ここからは、カフリンクスのルールについて解説していきます。
まず「正礼装」と呼ばれる、モーニングコートを着る場合、
白蝶貝のカフリンクスを身につける、というのが国際ルールなのです。
白蝶貝はジャケットやシャツのボタンとしても知られていますが、
真珠の親貝と呼ばれる、二枚貝です。
貝ボタンには、シャツのボタンなどに多い、高瀬貝などの種類もありますが、
巻貝である高瀬などよりも、白蝶は1つの貝から取れるボタンの量も少なく、希少なため高価になります。
光が当たった時の美しい独特の光沢も、天然素材の良さ。
自然光(太陽光)のもと、美しく映えるということが重要なのです。
なぜなら、モーニングコートは昼間:太陽が出ている時間帯の正装ですから。
午前や日中の準礼装、ディレクターズスーツの場合も、白
そして、こうした正礼装の1つ下の格である、準礼装の中に、ディレクターズスーツがあります。
簡潔にまとめますとモーニング・コートが短くなり、普通のスーツのジャケットのような丈、
グレー・ストライプのコールパンツとグレーのベストを合わせるのですが、
この場合も白蝶貝のカフリンクスを合わせます。
基本的な着こなしはモーニングコートに似ていますね。
夕暮れからの正装、燕尾服(テイルコート)の場合も白
そして夕暮れからの正装、燕尾服の場合に合わせるカフリンクスですが、
こちらも白蝶貝と決まっています。
燕尾服に合わせる小物としてはこの他、白いボウタイなのですが、
ドレスコード(パーティなどでの服装の指定)に、ホワイトタイと書かれていた場合、
この燕尾服の着用が必須です、という意味になるのです。
この燕尾服は例外で、夜の正装ですが、白蝶貝を用います。
間違えやすいので覚えておいてくださいね。
タキシードには黒オニキスのカフリンクス
ここまで白蝶貝がメインのフォーマル小物のような位置に書いているようですが、
フォーマルで合わせるカフリンクスのもう一種類、それが黒のオニキスです。
黒のオニキスのカフリンクスを合わせるスタイル、それがタキシード。
タキシードは日本では夕暮れ以降の準礼装、
世界的には正礼装といっても過言ではないスタイルとして位置しています。
現代社会では燕尾服を着る機会はそうそうございませんから、
タキシードの価値がより高まっていると言えそうです。
近い将来、正礼装・準礼装のような区分けもなくなるかもしれませんね。
このタキシードの場合には、カフリンクスは黒のオニキスと定められています。
また胸元のボタンも、第一ボタン、第二ボタン、第三ボタンまではボタンを隠すために
黒のオニキスのスタッドボタンを付けることも推奨される着こなしです。
先ほど説明したように、基本的にはシャツは下着。
その下着のボタンを紳士・淑女の前で晒すなど以ての外!
そのような考え方から、3つのボタンを黒のオニキスのスタッドボタンで隠します。
ちなみに、第四ボタン以降はそもそもカマーバンドで隠れるので、スタッドボタンは3つのみ。
市販で売られているスタッドボタンセットはほとんどが3つセットとなっています。
(稀に4つセットのものもございます)
喪のシーンではモーニングコートも・・・
そして、実は例えばモーニングコートを着る=白蝶貝と一括りに決まっているわけではなく、
喪のシーンの場合には黒のオニキスのカフリンクスを合わせる方が良いとされます。
どちらかといえば、黒オニキスは日中には使用しません。
フロックコートの場合のカフリンクスはどうなる?
そもそもフロックコートは、モーニングコートの前の正装用コートです。
「近頃フロックコートを持たぬ者は、紳士の仲間入りも出来ない様に云われる。」
と記されており、
明治21年に通常礼服は燕尾服、通常服はフロックコートという定義が、
明治21年10月の官報の宮廷録事の欄に掲載されたとあります。
つまり宮内省から、燕尾服やフロックコートが指定された場合にはそれを着用して参内しなければなりませんよ、
というドレスコートです。
通常服でお越しください、と書かれた招待状が届いたら、
フロックコート着用必須です、というわけですから、明治の日本もなかなかエレガントであります。
ちなみに通常服=フロックコートには黒高帽(シルクハット)が必須となります。
そしてこのフロックコートは午前や日中、燕尾服は夕暮れ以降に着用されており、
その後、フロックコートがモーニングコートへ変化していきます。
そう考えますと、明確な文献はないのですが、日中フロックコートを着用するセレモニーでは、
白蝶貝のカフリンクスが望ましいのではないかと考えます。
ただし夜にフロックコートを着用した文献もあります。
このあたりの背景や経緯はまた別の記事にてお届けしますが、
礼装にはカフリンクスですら使い分けが必要ということだけ押さえておくと、
一層フォーマルな装いに深さが出るのではないでしょうか?
もちろん、以上は国際上のルールではありますが、
100%ルールだけに固執せずに、思い入れのあるカフリンクスを着用しよう、自分らしいカフリンクスを、ということも素敵だと思います。
あくまでもルールを知って外すのはファッションの素敵なところですから、
オニキスの素材で、デザインに凝るのも一つです。
ぜひカフリンクスも楽しんでみてください。
- この記事が気に入ったら いいね! しよう