タキシードは夜に着るのが正しい?
みなさん、こんにちは。
クルーの林です。
ご結婚式に向けてタキシードを検討されていらっしゃるお客様とのお打ち合わせの中で、
タキシードは夜に着る服なのですか?
という質問をいただくことがございます。
結論から申し上げますと、タキシードは夜に着る服です。
そこで今回は、なぜタキシードは夜の服となっているのか、
タキシードの国際的なフォーマルのルールについて、お伝えいたします。
タキシードをすでに用意した、これから新郎衣装をご検討される方も、ひとつの知識として読んでいただけますと幸いでございます。
本来のタキシードは夜の服
日本でタキシードを着る機会といいますとなかなかない、という方の方が多いのではないでしょうか。
もちろんタキシード着用のドレスコードがあるパーティーもありますが、特別な日という位置付けになるように思います。
このタキシード、実は別の呼び方もあり、英国ではディナージャケットと呼ばれます。
ディナー、そう、夜なのです。
タキシードは国際的なフォーマルのルールでは18時以降に着用するものとされていて、この18時はどうやら日没が関係しているようです。
夏は18時、冬は17時からタキシードを着る
日没が関係しているといいますのは、夏場は日が沈むのが遅いことから18時以降タキシード着用とあるのですが、逆に冬は日が沈むのが早いので17時なのです。
つまり、暗くなってから着用する服ということになります。
もともと西洋では、着替える、という発想があります。
19世紀、正装といいますと日中はフロックコートという丈の長い服を着ます。
そうして夜はレディーと踊るわけで、燕尾服に着替えます。
余談ですが、踊る際に、先ほどまで歩いていた革靴ではレディーのドレスを靴墨で汚してしまいます。
そこで靴墨をつける必要のないパテントレザーのシューズ、エナメルのパンプスに履き替えるのです。
服にはそのデザインになった理由がある
男の服には、こういう理由でこのようなデザインになっている、というようなディテールがたくさん存在します。
例えばスーツの腰ポケットにもついている雨蓋と呼ばれるフラップポケットがついています。
文字通り雨や埃の侵入を防ぐ役割がありますが、
室内着であるタキシードにはこのフラップポケットはありません。
また、タキシードのパンツの脇の縫い目に側章というシルクのラインが入っています。
これは、シャツはもともと下着だ、レディーの前で上着を脱ぎ、下着であるシャツを見せるのは恥ずかしいという考え方がありました。
これと同じように、タキシードのパンツの脇の縫い目も見せない方がエレガントで美しいと考えられています。
縫い目を隠すために、あえて側章というシルクのラインを入れているのです。
必ずしも結婚式にタキシードを着る必要はあるのか?
では、ご結婚式という特別な機会において、必ずしもタキシードを着る必要があるのか?
というと、必ず着るというわけではないのです。
前述の通り、厳密なタキシードは18時以降(夕暮れ以降)の礼装です。
午前中の結婚式ではそもそも着るものではない、という考えが西洋にはあります。
タキシードの形
ここからは実際にお仕立てさせていただいたタキシードの写真と共に、タキシードの形についてご紹介いたします。
まず最初にご紹介するのはショールカラーのタキシードです。
この丸みを帯びた衿の形からは、リラックスした柔らかい感じ、エレガントな雰囲気が漂います。
シンプルに考えるとこの丸い衿は、カーディガンのような、ちょっと柔らかい衿を連想しませんか?
実は、このショールカラーのタキシードのジャケットが生まれた背景としては、くつろいだシーンの用途でした。
ビクトリア時代、男性は女性と過ごす際に、本音を言ってはいけないという文化がありました。
ジョークを言うのもNGですし、下品な言葉も、本音もNGでした。
女性たちももちろんそうだったわけです。
なんとなくわかりますよね。
それで、食事を終えて唯一解放されたのは、シガータイムです。
食事の時は燕尾服が必須なんですが、シガータイムは少しくだけて、ショールカラーのスモーキングジャケットというシガー専用の上着でくつろぎました。
それが今のタキシードの、ショールカラーの上着なんですね。
そしてこちらがピークドラペルのタキシード。
ピークとは山頂を意味するわけですが、衿の先が尖っており、スーツに多く見受けられるノッチドラペルとは違う、フォーマルで華やかな印象が出ます。
ダブルのスーツやコートはこの衿型をしています。
この尖った衿の形はシャープな印象に見えます。
衿を細くすれば、よりスッキリと見えますし、太くすれば、男性的な威厳が増します。
この衿、実はミリタリーといいますか、もっと先鋭でコートや軍服などにも多く採用されているんですね。
先ほどのショールカラーとは違って、シュッと見えるのは気のせいではありません。
もともとは夜の正礼装、燕尾服を着用していたある紳士が、葉巻を吸うときにいつも裾が長く座りにくいことから、丈の短い葉巻用ジャケットに改良したところが起源という説があります。
日本では、日本フォーマル協会の定めるところ、燕尾服に次ぐ礼装となっており、欧州では燕尾服と同格の正装と位置しているパーティも少なくありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
服はデザインも重要ですが、機能面も大事だと思います。
機能を加えたり、削いだり、紆余曲折を経て、進化していきました。
タキシードは夜の服、というフォーマルのルールは存在しますが、全てのルールを遵守しなければならない、というものではないと思います。
自身のご結婚式で着るタキシードであれば、自分たちらしさを表現するのも素敵な事ですし、ルール云々ではなく、着たい服や着てほしい服、挙式の雰囲気、様々な事を考慮して、どんな装いが良いかは十人十色ですよね。
実際、日中に挙式を挙げられるお客様から、タキシードが良い!ということでオーダーをいただく場合もあれば、午前の挙式にモーニングコート、フロックコートがいい、といオーダーをいただきます。
いずれにしても、知らなかったよりは、ルールを知った上で外す、というのもファッションの楽しさのひとつだと思います。
と言う事で、タキシードを着用する、もしくはタキシード選びの予備知識としてお役に立てれば幸いでございます。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2019年5月16日
タキシードの着こなし術 | タキシードのルール
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