挙式のタキシードをスーツにリメイクする3つの方法
タキシードのリメイクとは、具体的にどのようなことなのでしょうか?
結婚式で着用したタキシード、
後日スーツにリメイクする、というサービスですが、
当店でも以前からご依頼いただくことが少なくありません。
今後もタキシードを持っておこう、という方ももちろんいらっしゃいますが、
やはり数回着用してクローゼットに寝かせても・・というお考えもあるかと思います。
ところで、タキシード・リメイクと一口に言っても、実は色々な方法があるのです。
ここでは、当サロンでも実際に行ったことがある手法を中心にご紹介いたします。
まずは、実は古くからある修理方法で、
前身頃リメイクという方法で、
その名の通りで、前の身頃だけ、そっくり作り替えてしまい、
使えるパーツ(袖と背)は残して交換修理してしまう、という方法です。
技術と手間暇がかかるので、行なっているお店は少ないのが現状です。
※当サロンでは行なっている手法です。ただし、他店でお仕立てなさったタキシードのリメイクは残念ながら行なっておりません。
前身頃交換によるタキシード・リメイクなら、例えばポケットにタキシードのシルクの玉縁を付けておき、
後日はシンプルなフラップ・ポケットや、斜めのスランテッド・ポケットに変更もできます。
また衿は、拝絹シルク付きから、通常素材のノッチドラペルへの変更もできます。
衿の幅や、フロントカット、着丈なども色々と変更した形でリメイクできます。
生地が毎期入れ替わりますので、制作時点でリメイク用の生地を確保しておく必要があります。
また、タキシードの生地の色が日光で退色したり、クリーニングによる状態の変化があった場合、どうしても残しておいた生地との色の差が出るリスクがあります。
そのため、リメイクご希望の方は、挙式後に何度も着用する前にリメイクすると良いですね。
(そう何度も着ることはないでしょうが・・)
このリメイク方法なら、タキシードを仕立てて、今後も生かせるようにしよう、と考えるのならば良いのではないかと思います。
もちろんタキシードは夜の正装。
今後も結婚式の二次会や挙式、またクリスマスディナーなどに羽織っても素敵ですが、やはり着用しないからスーツにリメイクしたい!という方に向いていると思います。
こちらは、非常に斬新な新手法です。
ピークドラペルのタキシードに限っての方法なのですが、
まず、衿にシルクを貼っておき、後日挙式後にそれを外す、という仕様です。
さらにタキシードのパンツの側章は、現在では外す前提で制作することも可能ではあります。
これならば、本来の衿にシルクの付いたタキシードを、
後日完璧なまでにスーツにできるような気がします。
タキシードといえば、やはり衿のシルクが特徴です。
蝋燭の光で暮らしていた時代に、顔を良く見せようとこのシルクが採用されたという説もありますが、
スーツとの明らかな違いともいえます。
このシルクを貼っておき、後日外してしまう、
なかなか合理的な方法です。
この細かな技は、日本ならではなのではないでしょうか。
(そもそもリメイクしようという発想自体が日本独自なのかもしれませんが)
こちらが衿を返したところ。
ピークドラペルの拝絹の裏に、ノッチドラペルが隠れています。
さらにタキシードは1つボタンですが、
後日はボタンホールとボタンを追加して2つボタンに変更でき、
タキシードのくるみボタンは、スーツなどに使用する水牛やナットのボタンに変更できます。
残念ながらこの方法では、フロントポケットにシルクを貼ってしまうと、
ここはさすがに後日外すことができません。
ですから、ここは同素材の玉縁となります。
またフラップがないのがタキシードですが、ここはフラップを付けておき、
挙式当日はフラップを仕舞い、両玉縁のポケットのようにして着用する形になります。
また前出の前身頃交換と同様、ヒップのベントは後で開けることができないため、
やはり最初にタキシードではあるけれど、サイドベンツにしておく、というような点はあります。
また、この方法で衿を貼ると、
実はピークドラペルの先端が、やや開きます。
気にならない程度かもしれませんが、
一度サンプルをご覧いただいたお客様からこの角度が気になる、というご指摘をいただきました。
先ほどの写真をもう一度見てみます。
本来のタキシードがこちら
これはノッチドラペルの上からピークドラペルの拝絹を貼っていることで、
構造上この角度が開き気味になっててしまい、
本来のタキシードにほとんど似てはいるものの、やはり若干の違いがあります。
この方法は以前から実施できないか、と私たちでも試行錯誤していた時代があります。
ご要望も少なくありませんでした。
しかし、どうしても本来のタキシードを横に並べたときに、
妥協しなければならない点があるため、
あまりご提案はしない風潮となりましたが、制作は可能です。
制作できる職人が限られているため、通常よりも大幅にご納期がかかることはご了承ください。
今後もこの手法を実現させる職人は数少ないのが現状は変わらないと思いますが、
タキシードの雰囲気を味わって、
今後スーツとして着用できるメリットを最大限に享受する、という点でオススメの手法です。
ある程度ピークドラペルのタキシードの雰囲気の服を着たい!
でも絶対に後日は(ノッチドラペルの)スーツにしたい!
という方に向いていると思います。
※こちらは現在はあまりご提案していない手法です。
こちらは厳密にいえば、新郎の着るタキシードというイメージではありますが、フロックコートです。
そもそも実際にはフロックコートを着用する文化もまだまだ根強いため、
フロックコートを、後のスーツの想定をしてパターンを組んでおき、後日スーツにする、という方法です。
この方法は前身頃交換と同じく、古くからある手法で、割とポピュラーな手法かと思います。
着丈、フロントカット、ボタン、ボタンの数などを変更でき、スーツにリメイクします。
3つの方法のなかでは、一番リメイクコストが安価な点があり、
全体をバラす、という大掛かりな修正はないので、リメイク後の仕上がりが綺麗なのは良い点といえます。
スーツやジャケットもボタンがアクセントとなり、そうした点が変化するだけでも随分と雰囲気が変わり、
手軽に色々とアレンジできるのがフロックコート・リメイクです。
まず、衿など大枠のデザインの変更ができません。
こちらは拝絹の貼ってある国際ルール上の厳密なタキシードではなく、長い、短いはあるにせよ、定義でいえばフロックコートですから、
コートの長さ、フロントカット、ボタンなどを変更してスーツにリメイクできる仕様です。
また業者、店舗によってはこの長い丈の衣装を、ロングタキシードと呼んでいる場合もあるのですが、ロングタキシードというのは日本独自解釈で、おそらくはフロックコートの変形なのではないか、と推測できます。
フロックコートなどが変形して現在のスーツになっているわけですが、
デザイン性やファッション性にとことんこだわるとなると、どうしてもスーツのような雰囲気が拭えないのではないでしょうか。
フロックコートをリメイクするのは、結婚式当日の衣装の雰囲気を、スーツとして残せるので、
他のリメイク方法と同様、スーツとして活躍するお得感があります。
丈は年々短いトレンドとなってきましたので、そうしてトレンドや、コーディネートで変化をつけて、フロックコートとしてもスーツとしても、良い仕立ての服を手に入れておくのは一つではないでしょうか。
挙式らしい服装をしたい!
後日はスーツにしたい!
そのような方に向いていると思います。
※こちらも当店でもよく行う手法です。
このようにリメイクという視点で解説いたしましたが、
洋服は調整しながらより良くしていく側面や、孫に継承する、といった文化があります。
一度きりではもったいない、という方には、やはりタキシード→スーツへのリメイクはメリットがあるのではないでしょうか?
反面、結婚式の主役、一生に一回の晴れ舞台ですから、
その日のための一着を誂える、という考えも素敵だと思います。
良い靴もそうですが、仕立ての良いタキシードはクローゼットに持っていると、着る場面がやってくる、という言葉があります。
タキシードであれば、思い出のタキシードということもありますからリメイクせず、今後も夕暮れのパーティやディナーに、着用してみるのも良いかもしれません。
タキシードのジャケットのみ使う、というのも一つですね。
もちろんリメイク前提のオーダーも可能ですので、コンシェルジュまでご要望お伝えください。
ライター:松 甫 詳しいプロフィールはこちら>>
表参道の看板のないオーダーサロン 株式会社ボットーネ CEO。
自身もヘッド・スーツコンシェルジュとしてフィッティングやコーディネートを実施。
クライアントは上場企業経営者、政治家、プロスポーツ選手の方をはじめ、述べ2,000人以上。
2019年5月11日
タキシードの着こなし術 | タキシードからスーツにリメイク
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